孤独な神官は幼鬼に絆される
どのくらい時間が経っただろう。
目を覚ますとエリシアとラグナが仲良くキッチンで料理を作っていた。
ゆっくり体を起こしぐーっと伸びをするとおはようございますっ!と駆け寄ってきた。
私はいつも通りおはようと返し、彼の姿を見て驚いた。
白いフリル付きのブラウスに背中部分に羽のような装飾がついたサスペンダー、そして白いショートパンツに白いソックスと黒いソックスガーター。
ラグナはそんな格好をしていてまるで私が理想とする男の子そっくりで。
驚く私にラグナはおはようのぎゅーはいりませんか?と小さな両手を向けてきた。
私は少し困惑しながら、すると答えぎゅーっと小さなその体を抱きしめる。
「にあさん、おつかれさまですっ。ゆっくりねむれましたか?」
「ん。眠れた。ありがとう、ラグナ」
「それはよかったです!」
えへへっと嬉しそうに笑うラグナに礼をし、エリシアにも助かったと声をかける。
彼女はいえいえ!といつもと同じ様子で返してくると作っていた料理を机に持ってきてくれた。
目の前に並んだのは美味しそうな餡がかかった揚出し豆腐に塩茹でされた枝豆、それと冷えたビール。
ラグナにはやくはやく!と手を引かれ料理の前に座ると二人にどうぞ!と言われた。
「今日くらいパーッとやりましょう! ラヴィニア様! 明日からまた面倒なお仕事ですよ!」
「あ、ああ……」
「それと! 今日はお仕事じゃないんでその堅苦しい喋り方はなしです! オフなんですから! 上下関係も今は忘れて飲みましょー!」
「そうか……わかった。そうする」
ありがとうと二人に伝えるとビールの蓋を開け、一口飲んだ。
キンキンに冷えたビールが寝ていた体に沁みる。
美味いなぁと思いながら私は用意された揚出し豆腐や枝豆に手を付け、今日の報告を聞いた。
「それでラグナはその格好なのね……」
「はいっ! にあってますか?」
「似合ってる。可愛い」
「えへへ〜」
「だから言ったじゃないですかー。ラヴィニア様はショタコンじゃなくて美少年好きなんだって!」
「エリシア」
「はい? なんですか? ラヴィニア様?」
「オフ、なんでしょう?」
私に仕事モードの喋り方をするなと言ってきたんだ。
エリシアにだってそういうのを今は忘れてほしいと思った。
それが通じたのか、ではとわざとらしい咳払いをするとニア!とラグナと同じ呼び方をしてきた。
「そういえばエリシアさんとにあさんはいつからいっしょなんですか?」
「え? あー、そうね……。エリシアは自ら私の従者を名乗り出たのよ。ほんと、変わり者でしょ」
「なぁにいってんの! ニアだって変わり者じゃない! みんな辞めてっちゃうって有名だったんだから!」
「私は別にいてもいなくてもいいって言ったんだけど、エリシアが強引に来たんじゃない」
「いなくてもって言うけどね、ニアの身の回りの世話とか今まで誰がやってあげてたと思ってるのー? オフの日にエリーがやってあげてたんでしょ! エリーに感謝してほしいわ!」
「はいはい、感謝してますよー」
「うえーん! 気持ちがこもってないよおー! エリー悲しい!」
「ふふっ、ほんとにふたりともなかよしさんですね」
私たちのやり取りを聞いてラグナはくすくす笑いながらそう言って。
仲良しかしら?とエリシアに視線をやるとここまで来ると腐れ縁でしょと笑ってみせた。
確かにと笑みをこぼすと二人がやっと笑ったー!とニコニコして私を見て。
私はそれを隠すようにビールを飲み二人から視線を逸した。
「ニアはいっつも怖い顔ばっかしてるから笑ったほうがいいよ! エリーみたいにさ!」
「にあさん、もっとわらってほしいです!」
「いいから見ないで」
「あー、照れてるー! ニアが照れてるー!」
「照れてない!」
「にあさん、てれてますね!」
「ら、ラグナまで……! あんたたちいつの間にそんなに仲良くなったのよ!」
「えへへ〜」
「そりゃお買い物のときにねー?」
ねー?と声を合わせる二人は何か思い出したかのように買い物袋の中を漁りはじめた。
どうしたの?と声をかけると二人は何かを見つけ顔を合わせて笑うとプレゼント!と私に横長の黒いケースを差し出してきた。
なにこれ、と受け取り中を確認すると入っていたのは金縁のサングラスだった。
これは……と驚く私にエリシアはそれがあれば視線も気にならないでしょ?と言ってきて。
「エリーもラグナくんもニアとおでかけしたいんだ。だから、ね?」
「ふたりでにあいそうなのをえらんだんですよ?」
「エリシア、ラグナ……。……ありがとう」
これがあれば確かに瞳を隠せる。
二人と出かけることだって、一人で買い物に行くことだってできる。
私にとって、二人が買ってきてくれたこれはとても有益なもので。
こんなものでみんなから嫌な目を向けられなくなると思うとまるで魔法みたいだと小さく呟いた。
「これで三人で買い物行ったりできるね!」
「はいっ! たのしみです!」
にこにこ笑う二人に私はただただ感謝して今度のオフに出かけようと約束を取り付けた。
目を覚ますとエリシアとラグナが仲良くキッチンで料理を作っていた。
ゆっくり体を起こしぐーっと伸びをするとおはようございますっ!と駆け寄ってきた。
私はいつも通りおはようと返し、彼の姿を見て驚いた。
白いフリル付きのブラウスに背中部分に羽のような装飾がついたサスペンダー、そして白いショートパンツに白いソックスと黒いソックスガーター。
ラグナはそんな格好をしていてまるで私が理想とする男の子そっくりで。
驚く私にラグナはおはようのぎゅーはいりませんか?と小さな両手を向けてきた。
私は少し困惑しながら、すると答えぎゅーっと小さなその体を抱きしめる。
「にあさん、おつかれさまですっ。ゆっくりねむれましたか?」
「ん。眠れた。ありがとう、ラグナ」
「それはよかったです!」
えへへっと嬉しそうに笑うラグナに礼をし、エリシアにも助かったと声をかける。
彼女はいえいえ!といつもと同じ様子で返してくると作っていた料理を机に持ってきてくれた。
目の前に並んだのは美味しそうな餡がかかった揚出し豆腐に塩茹でされた枝豆、それと冷えたビール。
ラグナにはやくはやく!と手を引かれ料理の前に座ると二人にどうぞ!と言われた。
「今日くらいパーッとやりましょう! ラヴィニア様! 明日からまた面倒なお仕事ですよ!」
「あ、ああ……」
「それと! 今日はお仕事じゃないんでその堅苦しい喋り方はなしです! オフなんですから! 上下関係も今は忘れて飲みましょー!」
「そうか……わかった。そうする」
ありがとうと二人に伝えるとビールの蓋を開け、一口飲んだ。
キンキンに冷えたビールが寝ていた体に沁みる。
美味いなぁと思いながら私は用意された揚出し豆腐や枝豆に手を付け、今日の報告を聞いた。
「それでラグナはその格好なのね……」
「はいっ! にあってますか?」
「似合ってる。可愛い」
「えへへ〜」
「だから言ったじゃないですかー。ラヴィニア様はショタコンじゃなくて美少年好きなんだって!」
「エリシア」
「はい? なんですか? ラヴィニア様?」
「オフ、なんでしょう?」
私に仕事モードの喋り方をするなと言ってきたんだ。
エリシアにだってそういうのを今は忘れてほしいと思った。
それが通じたのか、ではとわざとらしい咳払いをするとニア!とラグナと同じ呼び方をしてきた。
「そういえばエリシアさんとにあさんはいつからいっしょなんですか?」
「え? あー、そうね……。エリシアは自ら私の従者を名乗り出たのよ。ほんと、変わり者でしょ」
「なぁにいってんの! ニアだって変わり者じゃない! みんな辞めてっちゃうって有名だったんだから!」
「私は別にいてもいなくてもいいって言ったんだけど、エリシアが強引に来たんじゃない」
「いなくてもって言うけどね、ニアの身の回りの世話とか今まで誰がやってあげてたと思ってるのー? オフの日にエリーがやってあげてたんでしょ! エリーに感謝してほしいわ!」
「はいはい、感謝してますよー」
「うえーん! 気持ちがこもってないよおー! エリー悲しい!」
「ふふっ、ほんとにふたりともなかよしさんですね」
私たちのやり取りを聞いてラグナはくすくす笑いながらそう言って。
仲良しかしら?とエリシアに視線をやるとここまで来ると腐れ縁でしょと笑ってみせた。
確かにと笑みをこぼすと二人がやっと笑ったー!とニコニコして私を見て。
私はそれを隠すようにビールを飲み二人から視線を逸した。
「ニアはいっつも怖い顔ばっかしてるから笑ったほうがいいよ! エリーみたいにさ!」
「にあさん、もっとわらってほしいです!」
「いいから見ないで」
「あー、照れてるー! ニアが照れてるー!」
「照れてない!」
「にあさん、てれてますね!」
「ら、ラグナまで……! あんたたちいつの間にそんなに仲良くなったのよ!」
「えへへ〜」
「そりゃお買い物のときにねー?」
ねー?と声を合わせる二人は何か思い出したかのように買い物袋の中を漁りはじめた。
どうしたの?と声をかけると二人は何かを見つけ顔を合わせて笑うとプレゼント!と私に横長の黒いケースを差し出してきた。
なにこれ、と受け取り中を確認すると入っていたのは金縁のサングラスだった。
これは……と驚く私にエリシアはそれがあれば視線も気にならないでしょ?と言ってきて。
「エリーもラグナくんもニアとおでかけしたいんだ。だから、ね?」
「ふたりでにあいそうなのをえらんだんですよ?」
「エリシア、ラグナ……。……ありがとう」
これがあれば確かに瞳を隠せる。
二人と出かけることだって、一人で買い物に行くことだってできる。
私にとって、二人が買ってきてくれたこれはとても有益なもので。
こんなものでみんなから嫌な目を向けられなくなると思うとまるで魔法みたいだと小さく呟いた。
「これで三人で買い物行ったりできるね!」
「はいっ! たのしみです!」
にこにこ笑う二人に私はただただ感謝して今度のオフに出かけようと約束を取り付けた。