孤独な神官は幼鬼に絆される

「にあさん……」
「そんな顔しないのー! 今日はこのエリシアさんとお買い物するんだから!」

ラヴィニア様のお家から少し離れた商店街。
私はラヴィニア様が大事になさっているラグナくんとお買い物に来ている。
さっきからラヴィニア様のことを気にして浮かない顔をしてるラグナくん。
そりゃそっか、ほんとはラヴィニア様と行けると思ってたんだもんね。
でも残念。
ラヴィニア様は絶対に素顔で外出なさらない。
原因はラヴィニア様の瞳にある。
普通の人間とは少し違う、まるで猫みたいな縦長の瞳孔がある赤い赤い瞳。
とっても綺麗なんだけどラヴィニア様はその瞳のせいでとても苦しんでこられたから神官としてでしか外にお出にならない。
お買い物とかは全部私がやって差し上げてるから特に不便ではないみたい。
みんなこれが嫌でラヴィニア様の従者を辞めていったらしいけど私からしたら敬愛する主から私生活のことを任されるなんて嬉しくてたまらない。
そして今、私はラヴィニア様に頼まれてラグナくんの生活用品とお洋服を買いに来た。

「ところでさ、ラグナくんってもしかしてラヴィニア様の趣味知ってる?」
「え? あ、はい……」
「やっぱりかー。なんかそんな感じしたんだよねー」
「さいしょみたとき、ちょっとびっくりしましたけど」

そう言ってラグナくんはラヴィニア様の家にある鏡台の鏡の裏に貼られた写真のことを話してくれた。
それは私も初耳で驚いていると更にラグナくんはすてちゃいましたけどねと笑って。
どうして?と聞くとぼくがいるじゃないですかと即答してきた。

「ぼくがいるから、にあさんのしたいことはぼくがかなえてあげられるから、だからにあさんにはないしょですけどすてちゃいました」
「そっかー」
「ふふ、こうみえてもぼく、てきおうのうりょくはばつぐんなんですよ」
「てかさ、ラグナくんはほんとはいくつなの?」

子供に見えるけどと聞くと彼は人差し指を自分の唇に当ててひみつですといたずらっぽく笑った。
この子侮れないと警戒する私にラグナくんは肉体的な年齢相応の表情を見せ、はやくいきましょー!と手を引っ張ってきた。
そうして私達が来たのは色んなものが売っているショッピングモール。
ここである程度の生活用品を買い揃えて、そのまま上にある洋服売り場へ。
何がいいかなーと見ているとこういうのすきですよねとラグナくんが洋服を持ってきた。
これと見せてきたのは白のフリルブラウスにサスペンダー、そして白のショートパンツで。

「にあさん、きっとぼくにこういうふくきてほしいっておもってるとおもうんです」
「よくわかってるじゃない……」
「にあさんってちいさなおとこのこがっていうより、きれいでかわいいおとこのこがすき、なんですよね? しゃしんのおとこのこ、みんなそういうこばっかでしたから」

的確に当ててくるラグナくん。
その通りすぎて私は返す言葉も見つからない。
そう、ラヴィニア様はショタコンというより美少年好きの方に近い。
けれどラヴィニア様自身は小さな男の子がいいという自覚しかないから自分をショタコンだなんて言ってる。
違うんだよなぁと思いながら日々を過ごしているのはラヴィニア様には内緒だし、指摘したところでたぶん自覚がないのでわかってもらえない気がしていた。

「ぼく、これきてきますね!」
「はいはい」

そう言ってラグナくんは試着室に消えていった。
数分後、出てきた彼はラヴィニア様好みの容姿に変わっていて。
服だけなのにこんなにも変わるのかと見ているとどうですか?と微笑みかけてくる。

「これにソックスガーターをつけたら、にあさん、とてもよろこぶとおもうんです」
「たしかに。じゃあそれ買ってく?」
「はい、もちろん」

よごしちゃまずいのでとラグナくんは再び試着室のカーテンを閉めると元のTシャツとハーフパンツの姿に戻って脱いだ服をおねがいしますと私に渡してきた。
私はそれとソックスガーターを手にするとレジに行きお会計。
紙袋に入れてもらってその店をあとにした。
14/22ページ
スキ