孤独な神官は幼鬼に絆される
謁見の間へ着くと私は王と王妃へリジーの件を報告した。
けれど私が思っていた反応とは違い、それがなにか悪いのか?といったもので。
私は異形者の処刑には彼らが逆らわないようにするための見せしめような役割があり、その都度必要に応じて選別する必要があると進言する。
「なるほど。ラヴィニアの意見にも一理あるな。リジーにはこちらより無意味な処刑は行わぬように通達しよう」
「何卒、よろしくお願い致します。彼が暴れて呼び出されるのは懲り懲りですので」
「其方は数少ない王室神官だからな。それと、最近息子が随分と親しくしているようだがなにかあったか?」
「第一王子と、ですか? いいえ、特段そのようなことはなにも」
なにか探るような聞き方をされ私は咄嗟にそう答えた。
親しくしているわけではない。
ただ最近王子と話す機会が多いのは事実だ。
しかしそれを言えばどのような内容なのか聞かれるのは明白で、あの白亜の塔のことを言えばきっと自身の権限で封鎖してしまう。
それだけは確実だと本能で悟った。
「他になにもなければ私はこれにて失礼させて頂きたく思いますが、他になにかございますでしょうか?」
「いや、大丈夫だ。報告ご苦労。下がってよいぞ」
「では、失礼させて頂きます」
スッと立ち上がり私は謁見の間を後にすると私室へと戻り残りの書類に手を付け始めた。
暫くしてコンコンとノックされ、入れと答えるとひょこっと現れたのはエリシアとラグナで。
なんでと驚く私にエリシアはラヴィニア様のお仕事が見たいって言われたので!と笑って答えた。
「エリシア」
「いいじゃないですかー。というかラヴィニア様、いつの間にこんな可愛い子を手元に置いていたんですかー?」
「いや、これには訳が……。それよりなんで勝手に連れてきたんだ!? 私室とはいえラグナは……」
「子鬼、なんですよね? 王子から全部聞きました。その上でこの子はラヴィニア様のお傍にいたいと仰っていたんですよ?」
「はぁ……。ならエリシア、お前が面倒を見ろ。私はこの通り忙しいんだ」
「もちろん。さ、ラグナくん、こっちでラヴィニア様のお仕事見学しましょー!」
「は、はいっ」
こっちこっちとソファに座らせたラグナにエリシアはココアとお菓子を用意するとじっとしててねーと言いつける自分の残った仕事を片付け始める。
私は私で資料整理がたんまりと残っている。
全部リジーのせいだ。
クソッとイライラする私にたかたかと駆け寄ってくる小さな足音が聞こえそちらに視線を向けるとラグナが小さな両手にお菓子をいっぱい持ってどうぞと差し出してきた。
「にあさん、おつかれなんですよね? いらいらしてるのもそのせいなんですよね。だからあまいもの、よかったらどうぞ」
「ラグナ……」
「えへへ、なんならぼくをぎゅーってしてもいいですよー? にあさん、ねるときにいつもぼくをぎゅーってしますもんね」
「え? そうなんですか? ラヴィニア様?」
「エリシア」
「こわ……。そんな顔で睨まないでくださいよぉー」
エリシアが後ろを向いたのを確認すると私はラグナの手からチョコレートを1つ摘みありがとうとその頭を撫でる。
ラグナは嬉しそうに笑うとお菓子を元のテーブルに置いて再び駆け寄ってくると両手を私に向けて広げるとどうぞと言ってきて。
どうしようか悩んでいるとぎゅーはいらないですか?としょんぼりしてしまい私は慌ててしゃがみこむとその小さな体を抱きしめた。
ローブ越しでも分かる小さくて、高い体温。
あー、可愛いなぁ……と思っているとフード越しによしよしと頭を撫でられた。
「にあさんはよくがんばってます。がんばりやさんだから、たまにはこうしていきぬきをするのもだいじだいじです」
いいこいいこと撫でられて私は顔が緩みそうなのを必死に堪えありがとうと告げるともう大丈夫だからと体を離し椅子に座り直すと再び仕事に取り掛かった。
そうだ、私はこの子を守らなきゃいけない。
なんとしても養ってかなきゃいけない。
その為にも今は目の前の書類をどうにかしなくては。
そう思いもらったチョコを口に放り込むと机に向かった。
けれど私が思っていた反応とは違い、それがなにか悪いのか?といったもので。
私は異形者の処刑には彼らが逆らわないようにするための見せしめような役割があり、その都度必要に応じて選別する必要があると進言する。
「なるほど。ラヴィニアの意見にも一理あるな。リジーにはこちらより無意味な処刑は行わぬように通達しよう」
「何卒、よろしくお願い致します。彼が暴れて呼び出されるのは懲り懲りですので」
「其方は数少ない王室神官だからな。それと、最近息子が随分と親しくしているようだがなにかあったか?」
「第一王子と、ですか? いいえ、特段そのようなことはなにも」
なにか探るような聞き方をされ私は咄嗟にそう答えた。
親しくしているわけではない。
ただ最近王子と話す機会が多いのは事実だ。
しかしそれを言えばどのような内容なのか聞かれるのは明白で、あの白亜の塔のことを言えばきっと自身の権限で封鎖してしまう。
それだけは確実だと本能で悟った。
「他になにもなければ私はこれにて失礼させて頂きたく思いますが、他になにかございますでしょうか?」
「いや、大丈夫だ。報告ご苦労。下がってよいぞ」
「では、失礼させて頂きます」
スッと立ち上がり私は謁見の間を後にすると私室へと戻り残りの書類に手を付け始めた。
暫くしてコンコンとノックされ、入れと答えるとひょこっと現れたのはエリシアとラグナで。
なんでと驚く私にエリシアはラヴィニア様のお仕事が見たいって言われたので!と笑って答えた。
「エリシア」
「いいじゃないですかー。というかラヴィニア様、いつの間にこんな可愛い子を手元に置いていたんですかー?」
「いや、これには訳が……。それよりなんで勝手に連れてきたんだ!? 私室とはいえラグナは……」
「子鬼、なんですよね? 王子から全部聞きました。その上でこの子はラヴィニア様のお傍にいたいと仰っていたんですよ?」
「はぁ……。ならエリシア、お前が面倒を見ろ。私はこの通り忙しいんだ」
「もちろん。さ、ラグナくん、こっちでラヴィニア様のお仕事見学しましょー!」
「は、はいっ」
こっちこっちとソファに座らせたラグナにエリシアはココアとお菓子を用意するとじっとしててねーと言いつける自分の残った仕事を片付け始める。
私は私で資料整理がたんまりと残っている。
全部リジーのせいだ。
クソッとイライラする私にたかたかと駆け寄ってくる小さな足音が聞こえそちらに視線を向けるとラグナが小さな両手にお菓子をいっぱい持ってどうぞと差し出してきた。
「にあさん、おつかれなんですよね? いらいらしてるのもそのせいなんですよね。だからあまいもの、よかったらどうぞ」
「ラグナ……」
「えへへ、なんならぼくをぎゅーってしてもいいですよー? にあさん、ねるときにいつもぼくをぎゅーってしますもんね」
「え? そうなんですか? ラヴィニア様?」
「エリシア」
「こわ……。そんな顔で睨まないでくださいよぉー」
エリシアが後ろを向いたのを確認すると私はラグナの手からチョコレートを1つ摘みありがとうとその頭を撫でる。
ラグナは嬉しそうに笑うとお菓子を元のテーブルに置いて再び駆け寄ってくると両手を私に向けて広げるとどうぞと言ってきて。
どうしようか悩んでいるとぎゅーはいらないですか?としょんぼりしてしまい私は慌ててしゃがみこむとその小さな体を抱きしめた。
ローブ越しでも分かる小さくて、高い体温。
あー、可愛いなぁ……と思っているとフード越しによしよしと頭を撫でられた。
「にあさんはよくがんばってます。がんばりやさんだから、たまにはこうしていきぬきをするのもだいじだいじです」
いいこいいこと撫でられて私は顔が緩みそうなのを必死に堪えありがとうと告げるともう大丈夫だからと体を離し椅子に座り直すと再び仕事に取り掛かった。
そうだ、私はこの子を守らなきゃいけない。
なんとしても養ってかなきゃいけない。
その為にも今は目の前の書類をどうにかしなくては。
そう思いもらったチョコを口に放り込むと机に向かった。