【HL】水晶の燦めきに魅せられて
──次の日。
「えー! にぃに、ずるーい!」
僕はいつも通りアリアさんの家に来て、ウィードに昨日あった人のことを少しだけ話した。
話す、と言ってもどんな容姿の人だったとか、そんな話。
きっとこのくらいなら彼の言う時の流れに逆らうという事には当てはまらないと信じて。
案の定ウィードはそれを聞いて僕に描いて描いて!とスケッチブックとクレヨンを渡してきた。
僕はんーと……とセンチェルスのことを思い出しながら簡単に描いていく。
紫の襟足だけ長い髪に、優しそうな紫の瞳。
小さな丸い眼鏡。
紫の高そうなロングコート。
思い出せる範囲で描いて見せるとウィードは目を輝かせておれのおーじさまだー!と嬉しそうに笑った。
「むらさき! ふわふわ! おーじさま!」
「なんだそれっ」
「王子様の印象、かしら?」
「うん! だってむらさきでしょー? で、かみがふわふわで、やさしそうなおーじさまだから!」
「そかそか」
「いいなー! いいなー! はやくあいたいー! おーじさま! こんど、いつくるー?」
「さあ?」
「もー! なんでつれてきてくれなかったの!」
ぷくーっとお餅のように頬を膨らませたウィードにちょっとなと答えを濁すと頭を撫でてまた会えるよとだけ告げた。
「てか、アリアさん。ウィードって歳の割に結構饒舌に喋るんすね?」
「え? あーたしかに……。でも、まぁ、ウィードって人とはちょっと違うみたいだし……」
「違う?」
「そうなの。この子が生まれたとき、この子と一緒に黒い水晶の欠片みたいなのと虹色のビー玉みたいなのが出てきたの。不思議でしょ?」
「へぇ……」
「だから人とはちょっと違う……そうね……例えば天使様の御使い、みたいな」
おかしいわよねと自嘲気味に笑うアリアさんにそんなことないですよとその手をとり握りしめて伝える。
突然のことにアリアさんは凄く驚いたようで、僕をサファイアのような青い瞳がじっと捉えて。
僕は少し固まって自分がアリアさんの手を握っていることに気づきごめんなさい!とその手を離して顔をそらした。
「あ、いや、あの、僕、す、すんません……」
「大丈夫、少し驚いただけだから……」
「ままー? にぃにー?」
あまりにもぎこちなかったんだろう、ウィードが不思議そうに僕とアリアさんを交互に見てきて。
えっとえっととお互い顔を合わせられないままお昼、食べてく?と声をかけてくれたのはアリアさんで。
僕は反射的にもちろん!と答えると手伝いますと立ち上がった。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……。お買い物、頼んでもいいかしら?」
「もちろん! 何を買ってくればいいっすか?」
「待ってて。メモ書くから……」
「にぃに! おれもー!」
「ウィードはお留守番してようね? にぃにには重たいもの買ってきて貰わなきゃならないから」
「やー! おれもいく! にぃにといくのー!」
「ウィード、アリアさんの言うこと聞かないと王子様に会えないぞ?」
「え、やだ。おれ、おるすばんする」
「いい子だ」
よしよしと頭を撫でているとアリアさんが買い物メモを渡してくれて、僕はそれを持って街へ買い出しに出た。
お米と牛肉とじゃがいも、糸こんにゃく。
たしかにこれはウィードを連れていくにはちょっときついなと思いながら僕はふと思い出す。
……買い物代金、もらってないと。
戻るのも面倒だし、いつもお世話になってるからここくらいは出すかと僕は近所のスーパーへ。
アリアさんから言われたものをかごにいれてお菓子コーナーへ。
いい子でお留守番をしているウィードになにかをと見て回る。
ふと目に入ったのはおまけ付きのお菓子で。
その中の一つ、おもちゃのティアラがついているやつを見つけてそれをかごの中にいれてレジへと向かう。
「喜んでくれるかな、あいつ」
「あんれまー、フランベルジュじゃないのさー」
すっかりあの子のお兄ちゃん顔になってーと声をかけてきたのは住民の一人で。
その声を皮切りに周りにいた人たちがフランベルジュがいるのか?とざわざわしだして。
僕は早くこの場から去りたくてさっさと買い物を済ませると店を後にする。
大体お兄ちゃんの顔ってなんだ。
勝手に僕にあいつの兄を押し付けてきたくせに。
僕はあのまま悠々自適に過ごして、可愛い女の子といつまでも遊んでられると思ってたのに。
勝手なことをいいやがってと思いながら僕は足早にアリアさんのもとへ帰っていった。
「えー! にぃに、ずるーい!」
僕はいつも通りアリアさんの家に来て、ウィードに昨日あった人のことを少しだけ話した。
話す、と言ってもどんな容姿の人だったとか、そんな話。
きっとこのくらいなら彼の言う時の流れに逆らうという事には当てはまらないと信じて。
案の定ウィードはそれを聞いて僕に描いて描いて!とスケッチブックとクレヨンを渡してきた。
僕はんーと……とセンチェルスのことを思い出しながら簡単に描いていく。
紫の襟足だけ長い髪に、優しそうな紫の瞳。
小さな丸い眼鏡。
紫の高そうなロングコート。
思い出せる範囲で描いて見せるとウィードは目を輝かせておれのおーじさまだー!と嬉しそうに笑った。
「むらさき! ふわふわ! おーじさま!」
「なんだそれっ」
「王子様の印象、かしら?」
「うん! だってむらさきでしょー? で、かみがふわふわで、やさしそうなおーじさまだから!」
「そかそか」
「いいなー! いいなー! はやくあいたいー! おーじさま! こんど、いつくるー?」
「さあ?」
「もー! なんでつれてきてくれなかったの!」
ぷくーっとお餅のように頬を膨らませたウィードにちょっとなと答えを濁すと頭を撫でてまた会えるよとだけ告げた。
「てか、アリアさん。ウィードって歳の割に結構饒舌に喋るんすね?」
「え? あーたしかに……。でも、まぁ、ウィードって人とはちょっと違うみたいだし……」
「違う?」
「そうなの。この子が生まれたとき、この子と一緒に黒い水晶の欠片みたいなのと虹色のビー玉みたいなのが出てきたの。不思議でしょ?」
「へぇ……」
「だから人とはちょっと違う……そうね……例えば天使様の御使い、みたいな」
おかしいわよねと自嘲気味に笑うアリアさんにそんなことないですよとその手をとり握りしめて伝える。
突然のことにアリアさんは凄く驚いたようで、僕をサファイアのような青い瞳がじっと捉えて。
僕は少し固まって自分がアリアさんの手を握っていることに気づきごめんなさい!とその手を離して顔をそらした。
「あ、いや、あの、僕、す、すんません……」
「大丈夫、少し驚いただけだから……」
「ままー? にぃにー?」
あまりにもぎこちなかったんだろう、ウィードが不思議そうに僕とアリアさんを交互に見てきて。
えっとえっととお互い顔を合わせられないままお昼、食べてく?と声をかけてくれたのはアリアさんで。
僕は反射的にもちろん!と答えると手伝いますと立ち上がった。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……。お買い物、頼んでもいいかしら?」
「もちろん! 何を買ってくればいいっすか?」
「待ってて。メモ書くから……」
「にぃに! おれもー!」
「ウィードはお留守番してようね? にぃにには重たいもの買ってきて貰わなきゃならないから」
「やー! おれもいく! にぃにといくのー!」
「ウィード、アリアさんの言うこと聞かないと王子様に会えないぞ?」
「え、やだ。おれ、おるすばんする」
「いい子だ」
よしよしと頭を撫でているとアリアさんが買い物メモを渡してくれて、僕はそれを持って街へ買い出しに出た。
お米と牛肉とじゃがいも、糸こんにゃく。
たしかにこれはウィードを連れていくにはちょっときついなと思いながら僕はふと思い出す。
……買い物代金、もらってないと。
戻るのも面倒だし、いつもお世話になってるからここくらいは出すかと僕は近所のスーパーへ。
アリアさんから言われたものをかごにいれてお菓子コーナーへ。
いい子でお留守番をしているウィードになにかをと見て回る。
ふと目に入ったのはおまけ付きのお菓子で。
その中の一つ、おもちゃのティアラがついているやつを見つけてそれをかごの中にいれてレジへと向かう。
「喜んでくれるかな、あいつ」
「あんれまー、フランベルジュじゃないのさー」
すっかりあの子のお兄ちゃん顔になってーと声をかけてきたのは住民の一人で。
その声を皮切りに周りにいた人たちがフランベルジュがいるのか?とざわざわしだして。
僕は早くこの場から去りたくてさっさと買い物を済ませると店を後にする。
大体お兄ちゃんの顔ってなんだ。
勝手に僕にあいつの兄を押し付けてきたくせに。
僕はあのまま悠々自適に過ごして、可愛い女の子といつまでも遊んでられると思ってたのに。
勝手なことをいいやがってと思いながら僕は足早にアリアさんのもとへ帰っていった。