【HL】水晶の燦めきに魅せられて

夜になり、僕たちは王様たちの前に連れていかれた。
どうやらこの国の象徴とされているウィードを一目見たいと王妃様に言われたようだ。
ウィードはアリアさんの腕に抱かれて王様たちの前に連れていかれた。
僕はただその背中を見守っているだけ。

「この子がこの国の象徴の子なのですね。なんてかわいらしい子」
「お褒めに預かり光栄です」
「お名前は何というのかしら?」
「まま、にぃにのとこいきたい……」

王妃様に名前を聞かれたらしいウィードはなぜか怯えているようで僕のとこに行きたいとアリアさんに訴え始めて。
震える声で訴えるウィードにアリアさんは少し戸惑っているようで、ご挨拶して?と促すけれどにぃにのとこいくと言って聞かない。
僕はとりあえずアリアさんに駆け寄ってウィードを受け取るとどうしたんだ?と声をかけた。

「にぃに……! にぃに……!」
「おーおー、泣くな、泣くなー。にぃにからお話ししても大丈夫か?」

僕に抱きかかえられたウィードは突然泣きだして胸に顔を埋めてくる。
なんでこんなに泣くのかわからないがそう話しかけると頷いたので僕からウィードの紹介をした。
彼の名前と歳、性格など。
まだ子どもなので今回の粗相も許してほしいと付け足して。
王様も王妃様も大丈夫と優しく微笑んで許してくれた。
けれどウィードの泣き声は止まらなくて。
僕とアリアさんは王様たちに一礼してその場を後にすると集団の輪から抜けて帰宅した。

「ウィード、どうしちゃったのかしら……。人見知りなんてあまりしない子なのに……」
「ずっと怖がってるんすよね……。おーい、ウィード? 何が怖いんだー?」
「ウィード? もう怖い人いないから。ママとにぃにだけだから、ね?」
「っく……ぅ、……も、いない……?」
「いないぞ。それでなにが怖かったんだ?」

嗚咽こそしているけどやっと泣き止んだウィードは僕の服を掴んだまま少し黙り込んでなんとなく怖かったと答えた。
きっと子供だから、本能的に大人が怖かったのか?と思ったが住人には特にそんな様子もない。
じゃあなんでと考えるけど僕には到底思いつくはずもなく。
そのうち泣き疲れて眠くなったのか腕の中でうとうとしながら親指をしゃぶりだしたウィードを昼寝のときのままの布団に寝かせておやすみと声をかけ寝させた。

「ウィード、何が怖かったんだろう……。この国の人には特に怖がる様子もなかったから人見知りではないのかなと思ってたんだけど……」
「あれですかね……。他国の人だからとか……。しかもあっちの方が地位的には高いし……」
「そう、なのかしら……。でもあんなに泣いちゃうなんて……」
「なんかウィード的には何かが怖いんですよ……」
「そう……」

眠るウィードを横目にそう話すと僕はそろそろ失礼しますとアリアさんの家の後にした。
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