【HL】水晶の燦めきに魅せられて

それからどのくらい経ったか。
目まぐるしい日々を過ごしているうちにあっという間に2年が経っていた。
僕はあれからウィードの兄として日々を過ごしていて、かわいい女の子をナンパする暇すらなかった。

「なんで僕なんだ……まったく……」
「にぃに、にぃに!」
「はいはい、なんですかー、ウィードくーん」
「にぃに! だっこ!」

だっこして!と小さな両手を僕に向けてにこにこ笑うウィード。
よいしょと抱っこすると嬉しそうに声を出して笑い、にぃに!にぃに!と繰り返し僕を呼ぶ。
どうやら僕を呼んで、僕が返事をするのが楽しいようだ。
周りの住人は微笑ましく僕たちを見ているが僕は僕でかわいい女の子と遊べなくて正直つらい。

「ねーウィードさーん? 僕ね、かわいい子と遊びたいなー」
「にぃに、かわいこ、すき?」
「うん、好き」
「じゃあ、おれ、かわい! にぃにすきー!」
「いやそうじゃない……」

おれかわいい!とにこにこするウィード。
いや確かにかわいいんだけど。
かわいいんだけど、僕はかわいい女の子と遊びたい。
けれど周りの目もあるし、そう言うわけにもいかず、そうですねーと諦めて返すしかない。
ウィードは相変わらず僕を呼ぶし、それに反応すると、おれかわいい?を繰り返す。
かわいいと返すと、おれかわいい!とはしゃぐ。
その繰り返し。
飽きたなと思ってもウィードはその繰り返しが楽しいようで何度も何度も繰り返してくる。

「にぃに! にぃに!」
「はいはい」
「えへへ~」
「楽しそうで何よりですよ、ウィードくん……」
「にぃに、たのしい、ない?」
「はは……僕はかわいい子と遊べて楽しいですよー」
「えへへ~」
「フランベルジュ、お疲れ様」
「あ! アリアさん!」
「ままー!」

噴水広場のベンチで遊んでいるとアリアさんが買い物を終えて帰ってきた。
ままー! ままー!と手を伸ばし始めたから僕はアリアさんにウィードを預けて、買い物の荷物を持つ。

「アリアさん、ベビーカー使わないんですか?」
「んー、使いたいんだけど、この子、拘束されるの嫌いみたいで……」
「あー……確かに大人しくできなさそうだし……」
「そうなの。誰に似たんだか……。いつもありがとうね、フランベルジュ」
「いえいえ! アリアさんの頼みなら断れないですから!」
「まま! にぃに! かわいい、すき!」

腕の中で笑うウィードにアリアさんはよかったねなんて言っていて。
いや、確かに可愛い子は好きだけど、僕は別にウィードのことが好きってわけじゃない。
どっちかって言うと僕はアリアさんのほうが……。
そんなことを思いながら彼女を見ていると僕の視線に気づいたのかどうしたの?と声をかけられた。
僕は咄嗟に顔を反らしなんでもないと答え、少し歩みを早めた。

「フランベルジュ、まって」
「あ、ご、ごめんなさい! 早かったですよね?」
「ごめんなさいね、私が歩くの遅くて……」
「いえいえ!」
「ままー! おれ、にぃにとこ、いく!」
「だぁめ。 にぃにはお荷物持ってもらってるからね」
「やー! にぃにとこいく!」

にぃに!にぃに!とアリアさんの腕の中で暴れて僕に手を伸ばすウィード。
暴れないでと困るアリアさんを見て僕はお母さんを困らせたら嫌いになるぞと脅してみた。
するとウィードはやぁああ!と大泣きしてしまいアリアさんはさらに困ってしまって。
やっちまったと僕は荷物を足元に置くとウィードを受け取り泣くな泣くなと必死にあやし始めた。

「にぃにー! にぃにー!」
「わかった、わかったから嫌いにならないから。な?」
「っく……にぃに……っ、おれ、すき……?」
「ああ、好きだから泣き止め、な?」
「ん……にぃに……、にぃに……っ」

ぎゅーっと僕の服を掴んでくるウィードはやっと泣き止んでいつもみたいな笑顔を向けてきて。
ウィードは僕から離れるつもりはないようで足元に置いた荷物をどうしようかと思っていると私がとアリアさんが持ってくれた。
申し訳ないな……と思っていると大丈夫だからと微笑みかけてくれて歩き出してしまい僕もあわててそのあとを追いかけた。
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