【HL】水晶の燦めきに魅せられて

“久しぶり……フランベルジュ……。やっと、来てくれた……”
「アリアさん……ごめんなさい、守れなくて……」
“ううん、大丈夫……。こうして、私を見つけて、呼んでくれた……。それだけでうれしい……”

嬉しいと笑うアリアさんに僕もつられて笑うと上手く呼べましたねとセンチェルスが声をかけてくる。
彼は一仕事終えたように少し疲れていて、大丈夫?と声をかけるもこのくらい平気ですと微笑んで。
そんな彼を見てアリアさんはもしかして……と僕の顔を見上げてくる。

「あの人がウィードが探してた王子様ですよ、アリアさん」
“彼が……あの子が探していた王子様……。とても優しそうな方でよかった……。……あの子……ウィードは……?”

どこに……ときょろきょろするアリアさんにセンチェルスはあの子は今天使に囚われてますと伝えるとこれまでのことを掻い摘んで話してくれた。
その話にアリアさんはそうなの……と少し悲しそうな顔をして。
けれどすぐに貴方が助けてくれるのよね?とセンチェルスに詰め寄るとじっとまっすぐ彼を見つめて問いかけていた。

「貴女もあの子と同じの目をするんですね。さすが親子、ということですか……」
「ウィードと一緒?」
「ええ。強くて、まっすぐで、とても純粋な瞳。あの子とそっくりです」
“あの子は私の息子だから”
「そうですね。だから私はそんな目の前では嘘をつけないんですよ。大丈夫、私があの子を救います。信じてください、アリア」

まっすぐそう見つめ返しはっきりとそう告げるとアリアさんはその目をじっと見つめてから僕のところに来て、振り返りざまにお願いねと笑った。
センチェルスはその光景に少し驚いたように目を丸くしたけどすぐに吹き出し、ほんとに親子ですねと声を出して笑う。
僕とアリアさんは顔を見合わせてどうしたんだろうと小首を傾げていると同じ事があったんですよと答えてくれた。

「センチェルスさん、ほんとにウィードのこと大事にしてくれてるんだね。ありがとう」
“こんな素敵な王子様に出逢えたのね……。よかった……”
「……私がどうしてあの子にこんなにも惹かれてしまうのか、なんとなく理解が出来た気がします。輪廻とは恐ろしいものですね」
「センチェルスさん?」
「なんでもないですよ。ところでフラン。もう眠くないですかね?」
「あ、たしかに」

さっきまであんなに眠かったのに……と驚く僕に彼はこれからのことを話してくれた。
アリアさんはこれから僕の時を得てこの場所に存在することができるということ。
一定の距離離れると彼女はここにいられなくなるということ。
そして、何の意識もなくしてしまったらしい契約のこと。
それを説明されて僕とアリアさんは顔を見合わせてこれからもよろしくねと笑いあった。

「あ、そうだ。アリアさん、僕のこと、フランって呼んでくださいね」
“それなら私のことアリアって呼んで? あと敬語もやめて?”
「あ、えっと……」
“呼んで?”

ぐいっと迫ってくるアリアさんに困ってセンチェルスにどうしたらと助けを求めるも私を見てと顔を彼女の方に向けなおさせられた。
そんな様子を見て彼はほんとそっくりですねと変わらず笑っていて。

「あの子もおんなじことするんですよ。俺を見てって。ふふ……ほんと、親子ですね」
「センチェルスさーん……」
「そうなったら名前を呼んでくれるまで頑として離れませんよ。あの子もそうでしたから」
「そんなぁ……」
“呼んで……? フラン……。それとも、私の名前、呼びたくない……?”
「ほら、呼んであげなさいな」

親子ですねと笑いが止まらないセンチェルスに茶化されながら僕はじっとアリアさんの目を見つめ、小さな声でアリア、と呼ぶともっととねだられてしまった。
そんな様子を見て彼は耐えきれなくなったのがお腹を抱えて笑い始めほんとにそっくりですねと茶化してくる。

「あの子も何度もねだるんですよ。もっと、もっと呼んで、もっと見て、俺を愛してって。ほんと、ふふっ……そっくりすぎてっ……」
「せ、センチェルスさん面白がってるでしょ……!?」
“フラン”
「あ、アリアさん……っ、顔ちかっ……」
“アリア”

呼んでと至近距離で見つめてくるアリアさんはまるで僕を逃がさないといわんばかりにぎゅっと腰に手を回し体を寄せてくる。
僕は観念してアリアと呼んでみるとフランと嬉しそうに笑ってくれた。
そんな彼女を見てホッとしたのも束の間、そのままの距離で私のこと好き?と尋ねてくる。
センチェルスはそんな僕たちを見て笑いながらお幸せにと告げるとその場から姿を消した。

「センチェルスさんひどい……」
“フラン……私のことだけ見て……?”
「僕はアリアさんのことしか見えてないって……」
“アリア”
「……はい」
“私のこと、好き……?”
「好きですよ、アリア。じゃなきゃこんな無茶なことしないから」
“ふふ……。私も、好き。フラン”

両想いねと笑って口づけてくるアリアさん。
幽体のはずなのに暖かくて柔らかい感触が僕の唇に感じて。
さっきからなぜか透けてるのに僕に抱き着いたりしてる感覚があるなと思ってはいたけれど、これが彼が与えてくれた僕の時を得て実在するってことなのかなと改めて認識した。

「これからはずっと一緒にいられるね、アリア」
“そうね。これからもずっと、貴方の傍にいられる。だから、今度こそ守ってね。私の王子様”
「もちろん」

今度こそこの手を離しはしない。
そう誓い僕は決戦のその日まで彼女と幸せな日々を過ごすことにした……。
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