【HL】水晶の燦めきに魅せられて

「ねぇ、そこのかーのじょ! 僕と遊ぼない?」
「フラン、あんたまた……」

平穏な日々の中、僕はすくすく成長して、20歳。
そこそこにイケメンになった自覚もあるし、毎日かわいい女の子をナンパして遊んでいた。
この国の女の子はみんなかわいい。
あまり太陽光がないせいもあり小柄な子が多い。
きれい系な女の子よりかわいい系の女の子ばかり。
まぁ僕はかわいい方が好きだからいいけど。
女の子たちはまたナンパしてるーと適当に流して去っていく。
これもいつものこと。
どっかにかわいい子いないかなぁと歩いていると目の前に人だかりが。
なんだなんだとそこに駆け寄るとその中心にいたのはこの国で信仰対象となっている女性のアリアさんで。
その腕にはアリアさんより綺麗で透き通った水色の瞳と髪をした赤ん坊が抱かれていた。
どうやらみんなこの子に見とれているみたいだ。
僕はその輪に入るとアリアさんに声をかける。
やっと僕に気づいた彼女はハッとして見てとその子を僕に見せてくれた。
白くて柔らかそうな肌、アクアマリンのように綺麗で大きな瞳。
頭頂部の二本のアホ毛が特徴的なその子は僕を見ると花のような笑顔を見せてくれた。

「可愛いでしょ? この子ね、ウィザリアっていうの。ちょっと体が小さく生まれてきちゃったんだけど、とっても元気な男の子なの」
「へぇ……って、男!? こんなかわいいのに!?」

てっきり女かと思ったと零すと周りの人たちも自分たちも聞いたときは驚いたと同意してくれた。
ウィザリア・カーティア。
それがこの子の名前らしい。
なんでかみんなにウィズちゃんとかウィードちゃんなんて呼ばれてる。
自分の名前らしい名前を呼ばれるたびにその子はキャッキャッと笑うのでみんなその笑顔を見たくて何度も名前を呼んでいた。

「フランベルジュ、抱っこ、してみる?」
「え……?」
「抱かせてもらえ、フランベルジュ。きっとご利益があるぞ。何せこの国に降り立った奇跡の子だからなぁ」

ほらほらと背中を押され僕はアリアさんからその子を受け取るとそっと落とさないように抱っこしてみる。
きらきら光る宝石みたいな瞳をさらに大きく開いて僕を見ると両手を伸ばしてキャッキャッと楽しそうな声を出して笑った。
男なのにかわいい。
こんな気持ちは初めてだと思いながら僕はその子をじっと見ていた。

「名前、呼んであげて。この子、名前呼ばれると喜ぶの」
「え? えーっと……じゃあ……えっと……ウィード、でいいのか?」

どうだろうと名前を呼んでみる。
するとそいつは嬉しそうに笑って。
ほんとに天使みたいにかわいい奴だなと僕は何度も名前を呼ぶ。

「かわいいでしょ? きっとみんなに愛される子になるはず。こんなに天使みたいな笑顔を見せてくれるんだもの」
「確かに……。こんなにかわいいしな……」
「ふふ……フランベルジュったら……女の子にしか興味ないっていってたのにもうウィードに夢中になって……」
「え!? いや、別にそういうわけじゃ……っ!」

小さく笑うアリアさんに僕はウィードを抱きながら反論しようとするけど腕の中のそいつは両手を伸ばしてご機嫌なようで。
どうやら僕はこいつに気に入られたらしい。
僕の服の襟を掴んでじっと見つめてくるウィード。
困惑した表情をしているとえへへ~とまた笑った。

「よかったなぁ! フランベルジュ! 奇跡の子に気に入られて!」
「よかった、のか? いや別に僕は男に興味は……」
「でもウィードはフランベルジュのこと気に入ったみたい。ふふ……。よかったね、ウィード。お兄ちゃんが出来たみたいで」
「お兄……っ!? ま、待って……! 別に僕は……!」
「よっ! フランお兄ちゃん! 弟を大事にしろよ?」

周りがそうやって囃し立ててくるからアリアさんもよろしくねなんて言ってくるし。
そんな感じで僕はなぜかこいつの兄になってしまった。
みんなありがたいことだねぇなんて言ってるし。
これじゃもう女の子ナンパできないじゃんと項垂れる僕にウィードはにこにこ笑ってるだけ。

「フランベルジュ、気軽にウィードに会いに来てあげてね。きっと喜ぶから」
「は、はい……」

とりあえずお返ししますとウィードをアリアさんの腕に返すと、ウィードは僕の方に手を伸ばしてきて、不安そうな顔をした。
本当に懐かれてたようで今にも泣きそうになる彼にアリアさんはまた来てくれるからねなんて言ってあやしていて。
困ったなぁと思いながら僕はこの場をもってウィードの兄として生きていくことになってしまった。
2/25ページ
スキ