【HL】水晶の燦めきに魅せられて

そうして宛もなく出てきた僕たちはイスダリアから少し離れた洞窟にいた。
食べ物はないけれど長居するつもりもないからとりあえずここで一時凌ぎしようと話し合った。

「にぃにすごかった! びゅーん!って!」
「ほんと、あっという間だったわね……」
「いやぁ、それほどでも……」
「にぃにはままのおーじさまだったんだね!」

よかったね!と笑うウィードにさっきのことを思い返し僕はなんだか凄く恥ずかしい気持ちになる。
アリアさんもそれは同じなようで赤く染まった両頬を押さえながら顔を反らして声にならない叫びを上げていた。

「にぃに! ままのこと、しあわせにしてあげてね!」
「それはもちろん」
「よかったね! まま!」

よかったよかった!とはしゃぐウィードに僕たちは顔を見合わせて笑うとこれからよろしくねとどちらからともなく告げた。
それから暫くはこの洞窟を拠点に木の実を集めて食べたりして食い繋いだ。
幸いなことにこの周りは何故か木の実を始め、果物も豊富で、食べるものには困らなくて。
唯一困ったのはお風呂に入れないことくらい。
僕とウィードは近くの川で洗えばいいけどアリアさんは女性だし、そういうわけにもいかない。
なにか水が溜められるものがあれば……と考えているとウィードとアリアさんがドラム缶をどこからか持ってきた。
泥だらけになりながら戻ってきた二人に駆け寄るとそこに落ちてた!と元気よく返事が返ってきて。

「これでおふろはいれる!」
「そうだな。天気もいいし、川まで持っていって入るか」
「うん!」

あと少し!とはしゃぐウィードと久々のお風呂に少しテンションが高いアリアさんと一緒にドラム缶を川の方まで持っていく。
川につくとウィードと一緒に大きめの石と燃えそうな木の枝を集めて土台を作り、ドラム缶を乗せる。
そうしてドラム缶の中に川の水をそこら辺に落ちていた器で汲んで入れていく。

「にぃにー! おみずたまったよー!」
「ありがとう、ウィード。今お湯沸かすからママとお着替え見えないようにしてくれるか?」
「はーい!」

お湯を沸かすなんて炎を扱える僕からすれば簡単なこと。
ちょっと加減して木の枝に火をつけて消えないように燃やす。
ただそれだけ。
火が消えないように見守りながら辺りを観察。
これだけ天気が晴れてたら服もすぐ乾きそうだし、洗濯もやろう。
そう思い服を抜いで川でテキトーに水洗いするとそこら辺の大きめの岩に広げる。

「にぃにー! できたー!」
「できたか? そしたらそろそろいい感じだろうし先に入っちゃいな」
「はーい! ままとはいってくる!」

どんなかんじに仕上がったかなと振り返るとそこには大きな木の枝と枝をタオルで結んだ簡素なものがあって。
バスタオル並みに大きいわけじゃないし、ところどころ穴も空いてるからちらちらアリアさんの肌が見え隠れして。
ウィードに至っては隠れきってないので丸見え。
これはまずいと僕はドラム缶に背中を向けてじっとそっちを向かないように川を眺めることにした。

「ままー! はやくー!」
「まって……っ、ウィード……っ」

はやくはやくー!と砂利の上で飛び跳ねるウィードの声がする。
細かい砂利だからあんまり痛くないだろうけど、それでも砂浜じゃないんだから痛いだろうに。
そんな痛みより久々のお風呂に興奮してるのか?
悶々と考えていると二人が入った音が聞こえてこれで一安心だなとほっと胸を撫で下ろす。

「あったかいねー!」
「そうね、ウィード」

はしゃぐ二人の声を聞きながら僕は今日のご飯になりそうな魚を川に入って探す。
川魚を素手でつかみ、バケツの中に放り込んでいるとそれを見たウィードががんばれー!と応援してくれて、それにつられてアリアさんもがんばれーと言ってくれた。
今日の夕飯の分があれば問題ない。
取りすぎれば自然形態に異常が出るから一食ずつ、少しずつ魚や木の実を取って食べる生活はつらいこともあるけれど三人で過ごせるのがとても楽しかった。

「にぃにー!」
「がんばって、フラン」

背中から聞こえる声に励まされ僕は魚を取り終えるとバケツを持って二人の元へと戻っていく。
二人は変わらずドラム缶の中。
暖かいと幸せそうに笑って僕にありがとうと言ってくれる。
僕はそれだけで頑張ってよかったなぁと幸せな気持ちになった。

「あなたも入るでしょう? フランベルジュ」
「あ、まぁ、でも僕は最悪川の水でも問題ないんでゆっくりしててもいいですよ。アリアさんは女性なんですから、体冷やすとよくないですし」
「ままー! おれでるー!」
「じゃあ、僕が預かりますね」

ごめんねとすまなさそうに顔をするアリアさんに大丈夫ですよと告げウィードを受け取るとタオルで体を拭いて大きめの白いTシャツを着せる。
下着は今洗って乾かしてる最中だからあとで履かせるとして、アリアさんの服はどうするかと考える。
さすがに男の僕が洗うわけにはいかないし、ときょろきょろする僕にウィードはどしたの?と服をくいくい引っ張ってきて。
子供に言ってもなぁとどう答えるか悩む僕にままのも!とアリアさんの服と下着を纏めて持ってきてしまった。
19/25ページ
スキ