【HL】水晶の燦めきに魅せられて

「アリアさん。アリアさんの気持ちを聞かせてください」
「私は……」

アリアさんが口を開こうとしたその時、周りで聞いていた住民たちがお前は御子様の付き人だろう!?と怒りの声があがる。
それと同時に裏切り者、恥晒しと僕やアリアさんを罵倒する声、さらには石を投げる奴らもいて。
僕は咄嗟にアリアさんに駆け寄ると片腕で抱きしめて物理的な物から彼女を守る。

「フラン……!」
「大丈夫……。こんなの、アリアさんが受けてきた傷に比べれば大したことないですから」
「でも……っ」
「んぅ……、にぃ、に……? まま……?」

周りの騒動で目を覚ましたウィードはどしたの?と辺りをきょろきょろ見渡していて。
けれど僕の頭の傷に気づいたのかすぐにその表情はとても不安そうなものに変わり、大丈夫?大丈夫?と僕の頬に小さな手をあてがってきて。
その間も周りの人々からの怒号も物理的な攻撃もやまず。
僕はこのままだとまずいと思いアリアさんとウィードを連れて一旦家に戻ろうと一緒に立ち上がったその時だった。
誰かが投げた大きめの石がアリアさんの背中を直撃してその衝撃で倒れ込んでしまって。
突然の出来事に僕は一瞬理解が出来なくて、唖然としているとウィードがアリアさんに駆け寄ってまま!!と悲痛な声を上げた。

「まま!! まま!! しっかりして!! ねえ!! どしてみんなひどいことするの!? 」
「ウィード……ママは大丈夫だから……」

大丈夫、と力なく笑うアリアさんに僕は自分の中の何かが弾ける音がして。
気づくと皆僕を見て慄いている。
何が……と自分の手を見るとあの時と同じ、赤い炎に包まれていて、僕自身も驚いた。
ウィードの力で封印したはずの力。
それが今僕の中で溢れかえって、爆発しそう。
けれどこの前みたいな恐怖も痛みもなくて、何故か冷静な自分がいて。
ああ、そうか。
これが、彼が言っていた何にも代えがたいモノができた時に出てくる力なんだ。
彼に言われた言葉を思い出し、そっか……とフッと笑みを溢すと右手を空へと翳した。
すると僕の周りを覆っていた炎がそこに集まり、一本の剣を作り出す。
燃え盛る炎の剣。
僕の名前の由来にもなったその剣を掴み、振り下ろすと住民たちを牽制する。

「にぃに……?」
「フランベルジュ、あなた……」
「アリアさん。この力を貴女を守るために奮うことを許してほしい。僕はもう貴女が泣く姿なんて見たくないんです」
「フランベルジュ……」
「許してもらえるなら、貴女の気持ちを聞かせてほしい。アリア」

まっすぐ見つめて僕はウィードに支えられながら座り込んでいるアリアさんに手を差し伸べる。
彼女からの言葉は前にも何度も聞いてる。
けれどそれは僕たちだけしかいない場所でしか聞いてない。
だから住民たちが彼女がまさか僕に助けを求めているなんてしらない。
それに今、さっきまで住民たちは僕の姿を見て一瞬怯んでいたがすぐに勢いを取り戻したのか今にもアリアさんに襲いかかってきそうな様子で。
僕はただ待つ。
アリアさんの言葉を。
この場で言わないとアリアさんはいつまでも自由になれない気がしていたから。
その間も周りの住人からお前は先代なんだとか、御子としての役割を果たせだとか、アリアさんを責め立てるいろんな言葉が浴びせられていて。
そんな中アリアさんは、決意が固まったようで深く息を吸い込んで自分の気持ちを叫んだ。

「私を連れ出して……!! フランベルジュ!!」

瞬間、住人たちからの怒号や罵倒が激しくなり、手当り次第のものがアリアさんに投げつけられ、僕はそれを炎の剣で一掃するとアリアさんを片手に抱き、ウィードを背中におぶって空へと舞い上がる。
初めて空をとんでいるっていうのに怖さより高揚感のが凄くて、僕にはこんなことも出来るんだなと余裕すら湧いてくるほどだ。

「にぃにすごーい! おそらとんだー!」
「すごい……」
「しっかり掴まっててください、アリアさん。それにウィードも。振り落とされないようにな」
「はーい!」
「ん……」

ぎゅっと二人がしたのを感じると僕は住人たちを無視しイスダリアから飛び去った。
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