【HL】水晶の燦めきに魅せられて
数日後。
あれから何も変わらないウィードは僕とアリアさんと手を繋いで街を歩いていた。
「にぃに! まま!」
「はいはい、なんですかー? ウィードくん」
「どうしたの? ウィード」
頭に僕が買ったティアラを乗せたウィードは僕たちを呼ぶたびにおれかわいいー?と何度も聞いてくる。
だからかわいいよと伝えるとえへへ~と笑っておれはおひめさまだから!と自慢げに答えてくる。
あの夜の事は僕とセンチェルス以外は覚えてないはずと見守っていたけれど覚えている様子は見られなかった。
「おれね! おーじさまのおひめさまになるのー!」
「そうなの? ウィードのお姫様姿、とても楽しみね。ね? フランベルジュ?」
「あ、はい……」
「おれのおーじさまがねー、まってますからねって! おれ、そのひとのおひめさまになるのー!」
覚えて、ないよな?
不安そうに見る僕にウィードはどしたの?と首を傾げて見上げてくる。
僕は何でもないと誤魔化すように笑い今日はどこに行くんですか?とアリアさんに尋ねた。
今日は特別な日らしくアリアさんからついてきてほしいと願い出てのお出かけ。
僕もウィードもどこに行くかわからないけど周りの住民たちがついに今日なんだねぇと有難そうに手を合わせて頭を下げていた。
そうして街の奥にある綺麗な青い水晶で出来た建物に入っていくとその中にいた人たちに案内され、奥へと進んでいく。
「アリアさん……あの……」
「大丈夫。私もやったことだから……。けれど貴方にちょっと迷惑かけちゃうかもしれない……。ごめんなさい……」
「え? 僕に、ですか……?」
「ままー? ここなぁにー?」
きらきらできれいだねーと笑うウィードにアリアさんはそうねと笑いかけていて。
そうして奥に辿り着くとアリアさんがウィードにいってらっしゃいとその手を離し背中を押す。
僕はどうしたらいいかわからずぼんやりしているとウィードをお願いねと言われた。
「あの……」
「アリア様、本当によろしいのですね? 彼をウィザリア様の付き人として認定しても」
「はい。彼にならこの子を任せられます」
「承知しました。それでは、御子ウィザリア・カーティア様、付き人フランベルジュ・オルフェ。前へ」
「まま……」
「大丈夫。大丈夫よ、ウィード。にぃにと一緒に行きなさい」
不安そうな顔をするウィードにそう告げるアリアさんはその場に膝をつき両手を祈る様にすると水晶の加護を貴方に……と小さく呟いた。
訳の分からないまま僕とウィードは奥にある台座に進むと案内してきた人に言われるままそこにある椅子のような形をしたところに座る。
いつもと違う雰囲気にウィードは怖い怖いと僕に抱きつき泣き出す一歩手前で、僕もどうしたらいいかわからずただ彼に大丈夫大丈夫とその頭を撫でて現状を理解するために辺りを見渡した。
すると案内してきた人たちが何か透明な液体が注がれた白い小さな器を持ってきて僕とウィードに渡すとお飲みくださいと一言。
いや、こんな何かもわからない物、飲めるわけがない。
僕は何かあってもどうにかなるけど、ウィードはまだ小さな子供だ。
得体の知れない物を飲ませられないと不思議そうにその器を見ているウィードにまだ飲まないでと指示。
彼は小さく頷き器を傍に置くと僕にぎゅっとしがみ着くと動かないアリアさんたちをじっと見ていた。
「にぃに……」
「あの、これはなんなんですか。こんな所に突然連れてきて、よくわからないものを飲めだなんて、そんなのさせられるわけないでしょう?」
「お二人のお渡ししたのはこのイスダリアを支える水晶を作り出す泉の聖水になります。それを体内に迎える事でウィザリア様は正式的にこのイスダリアを支える聖なる御子 となるのです」
「聖水……? 聖なる御子……?」
「フランベルジュ、貴方も聖なる御子の付き人となるため同じ物を頂く必要があるのです。アリア様も子供の時に同じ事をなさったのですよ」
「アリアさんも……ってことはアリアさんにも付き人が?」
「アリア様の付き人は現在の旦那様、コキア様です」
「ぱぱが……?」
「うそだろ……。じゃあ、僕がこれを飲むということは……」
「ごめんなさい……フランベルジュ……。でも、私は……大事な息子を、見ず知らずの人に渡すくらいなら、貴方にって……思って……」
ごめんなさい……と泣き崩れるアリアさんに僕は察した。
これは儀式。
聖なる御子とかいうよくわからないものに祀り上げられるウィードを守るための付き人、つまり現時点での結婚相手として僕が選ばれたんだと。
男同士だっていうのに特に気にすることもないその場の大人たち。
今の説明を受けてもきょとんとよくわからない様子のウィード。
大人たちの身勝手で僕はウィードの婚約者となる。
アリアさんもきっと子供の頃、同じ思いをしたんだろう。
しかもその時はきっと見ず知らずのあいつらが用意した付き人とこの儀式を交わした。
だから、きっとあの時、僕が兄になったあの日、駆け寄ってきた僕を見てアリアさんは大事な子供であるウィードを僕に託せるか見極めるために声を掛けてきたんだと。
全てはこの日のために。
自分が味わった得体の知れない恐怖から少しでも我が子を守れたらと念入りに練られた計画だったんだと、僕はそう悟り泣き崩れているアリアさんに視線を向け、そしてにぃにと僕の服を掴むウィードを見た。
この時ばかりはウィードが小さくてよかったと心の底から思い、小さく息をつくと彼を背中に庇いながら大人たちに向き直った。
「にぃに……」
「飲まないって言ったらどうする?」
「その場合はこちらで用意させていただいた付き人とウィザリア様で儀式をさせていただきます」
「……チッ。なら、断れないじゃないか……」
「にぃに……? にぃに、こわいかおしてる……。ままもえんえんってないてるよ……?」
どうしたの?と眉尻を下げるウィードに僕はその隣に座るとその器を持って一緒にこれを飲もうなと声を掛けた。
彼は小さく頷くと傍に置いたその器を取りこれを飲めばいいの……?と小首を傾げる。
そうして僕とウィードはその小さな器の中の聖水を一緒に飲み干した。
瞬間、おめでとうございますと大人たちが祝福するようにぱちぱちと拍手が起こった。
その中でアリアさんは顔を伏せてごめんなさい……ごめんなさい……と繰り返していて。
「にぃに……」
「大丈夫。にぃにがウィードの事守るから。大丈夫」
「にぃに……」
不安そうなウィードを抱きしめ僕は大丈夫だからとその頭を撫でて言い聞かせる。
そうして暫くして僕たちは建物を出るとアリアさんと共に帰路につく。
途中途中よかったねぇ、おめでたいねぇ、なんて言われたけど僕は僕で気が気じゃないし、アリアさんはずっと気まずそうに俯いてるし、抱っこしているウィードなんかずっと不安そうな顔しかしてない。
とりあえず家についたらどういうことなのか聞こうと思い、ウィードを抱っこしていない方の手でアリアさんの手を掴むと早く帰りましょうと足早にその場をあとにした。
あれから何も変わらないウィードは僕とアリアさんと手を繋いで街を歩いていた。
「にぃに! まま!」
「はいはい、なんですかー? ウィードくん」
「どうしたの? ウィード」
頭に僕が買ったティアラを乗せたウィードは僕たちを呼ぶたびにおれかわいいー?と何度も聞いてくる。
だからかわいいよと伝えるとえへへ~と笑っておれはおひめさまだから!と自慢げに答えてくる。
あの夜の事は僕とセンチェルス以外は覚えてないはずと見守っていたけれど覚えている様子は見られなかった。
「おれね! おーじさまのおひめさまになるのー!」
「そうなの? ウィードのお姫様姿、とても楽しみね。ね? フランベルジュ?」
「あ、はい……」
「おれのおーじさまがねー、まってますからねって! おれ、そのひとのおひめさまになるのー!」
覚えて、ないよな?
不安そうに見る僕にウィードはどしたの?と首を傾げて見上げてくる。
僕は何でもないと誤魔化すように笑い今日はどこに行くんですか?とアリアさんに尋ねた。
今日は特別な日らしくアリアさんからついてきてほしいと願い出てのお出かけ。
僕もウィードもどこに行くかわからないけど周りの住民たちがついに今日なんだねぇと有難そうに手を合わせて頭を下げていた。
そうして街の奥にある綺麗な青い水晶で出来た建物に入っていくとその中にいた人たちに案内され、奥へと進んでいく。
「アリアさん……あの……」
「大丈夫。私もやったことだから……。けれど貴方にちょっと迷惑かけちゃうかもしれない……。ごめんなさい……」
「え? 僕に、ですか……?」
「ままー? ここなぁにー?」
きらきらできれいだねーと笑うウィードにアリアさんはそうねと笑いかけていて。
そうして奥に辿り着くとアリアさんがウィードにいってらっしゃいとその手を離し背中を押す。
僕はどうしたらいいかわからずぼんやりしているとウィードをお願いねと言われた。
「あの……」
「アリア様、本当によろしいのですね? 彼をウィザリア様の付き人として認定しても」
「はい。彼にならこの子を任せられます」
「承知しました。それでは、御子ウィザリア・カーティア様、付き人フランベルジュ・オルフェ。前へ」
「まま……」
「大丈夫。大丈夫よ、ウィード。にぃにと一緒に行きなさい」
不安そうな顔をするウィードにそう告げるアリアさんはその場に膝をつき両手を祈る様にすると水晶の加護を貴方に……と小さく呟いた。
訳の分からないまま僕とウィードは奥にある台座に進むと案内してきた人に言われるままそこにある椅子のような形をしたところに座る。
いつもと違う雰囲気にウィードは怖い怖いと僕に抱きつき泣き出す一歩手前で、僕もどうしたらいいかわからずただ彼に大丈夫大丈夫とその頭を撫でて現状を理解するために辺りを見渡した。
すると案内してきた人たちが何か透明な液体が注がれた白い小さな器を持ってきて僕とウィードに渡すとお飲みくださいと一言。
いや、こんな何かもわからない物、飲めるわけがない。
僕は何かあってもどうにかなるけど、ウィードはまだ小さな子供だ。
得体の知れない物を飲ませられないと不思議そうにその器を見ているウィードにまだ飲まないでと指示。
彼は小さく頷き器を傍に置くと僕にぎゅっとしがみ着くと動かないアリアさんたちをじっと見ていた。
「にぃに……」
「あの、これはなんなんですか。こんな所に突然連れてきて、よくわからないものを飲めだなんて、そんなのさせられるわけないでしょう?」
「お二人のお渡ししたのはこのイスダリアを支える水晶を作り出す泉の聖水になります。それを体内に迎える事でウィザリア様は正式的にこのイスダリアを支える
「聖水……? 聖なる御子……?」
「フランベルジュ、貴方も聖なる御子の付き人となるため同じ物を頂く必要があるのです。アリア様も子供の時に同じ事をなさったのですよ」
「アリアさんも……ってことはアリアさんにも付き人が?」
「アリア様の付き人は現在の旦那様、コキア様です」
「ぱぱが……?」
「うそだろ……。じゃあ、僕がこれを飲むということは……」
「ごめんなさい……フランベルジュ……。でも、私は……大事な息子を、見ず知らずの人に渡すくらいなら、貴方にって……思って……」
ごめんなさい……と泣き崩れるアリアさんに僕は察した。
これは儀式。
聖なる御子とかいうよくわからないものに祀り上げられるウィードを守るための付き人、つまり現時点での結婚相手として僕が選ばれたんだと。
男同士だっていうのに特に気にすることもないその場の大人たち。
今の説明を受けてもきょとんとよくわからない様子のウィード。
大人たちの身勝手で僕はウィードの婚約者となる。
アリアさんもきっと子供の頃、同じ思いをしたんだろう。
しかもその時はきっと見ず知らずのあいつらが用意した付き人とこの儀式を交わした。
だから、きっとあの時、僕が兄になったあの日、駆け寄ってきた僕を見てアリアさんは大事な子供であるウィードを僕に託せるか見極めるために声を掛けてきたんだと。
全てはこの日のために。
自分が味わった得体の知れない恐怖から少しでも我が子を守れたらと念入りに練られた計画だったんだと、僕はそう悟り泣き崩れているアリアさんに視線を向け、そしてにぃにと僕の服を掴むウィードを見た。
この時ばかりはウィードが小さくてよかったと心の底から思い、小さく息をつくと彼を背中に庇いながら大人たちに向き直った。
「にぃに……」
「飲まないって言ったらどうする?」
「その場合はこちらで用意させていただいた付き人とウィザリア様で儀式をさせていただきます」
「……チッ。なら、断れないじゃないか……」
「にぃに……? にぃに、こわいかおしてる……。ままもえんえんってないてるよ……?」
どうしたの?と眉尻を下げるウィードに僕はその隣に座るとその器を持って一緒にこれを飲もうなと声を掛けた。
彼は小さく頷くと傍に置いたその器を取りこれを飲めばいいの……?と小首を傾げる。
そうして僕とウィードはその小さな器の中の聖水を一緒に飲み干した。
瞬間、おめでとうございますと大人たちが祝福するようにぱちぱちと拍手が起こった。
その中でアリアさんは顔を伏せてごめんなさい……ごめんなさい……と繰り返していて。
「にぃに……」
「大丈夫。にぃにがウィードの事守るから。大丈夫」
「にぃに……」
不安そうなウィードを抱きしめ僕は大丈夫だからとその頭を撫でて言い聞かせる。
そうして暫くして僕たちは建物を出るとアリアさんと共に帰路につく。
途中途中よかったねぇ、おめでたいねぇ、なんて言われたけど僕は僕で気が気じゃないし、アリアさんはずっと気まずそうに俯いてるし、抱っこしているウィードなんかずっと不安そうな顔しかしてない。
とりあえず家についたらどういうことなのか聞こうと思い、ウィードを抱っこしていない方の手でアリアさんの手を掴むと早く帰りましょうと足早にその場をあとにした。