【HL】水晶の燦めきに魅せられて

水晶の北国イスダリア。
全ての建物がきれいな青や水色の水晶で出来たとても美しい国。
僕が生まれた国はそんな素敵な国だった。
みんな優しくて、とても住み心地のいい国。
あまり陽が差さないこの場所に生まれる多くの人は色白な人が多く、また病気がちな人たちもいた。
そんな国の信仰対象は少し変わっていて。
水色の髪に白い肌、この国の象徴ともいう水晶と同じ透き通るような水色の瞳。
そんな人がこの国の信仰対象。
男とか女とか、老人とか子供とか関係なく、そんな人がこの国の信仰対象だった。
その者がいる家庭は特別な恩恵が受けられるとかなんとか。
けれど僕は色白で青い瞳ではあるけど、赤い髪だしなのでその対象外。
それでも特に何不自由なく過ごしていたし、何事もなく過ごしてきた。
決して裕福な国でもないし、僕の家も裕福じゃない。
けれど静かで、とてもいい国。

“あんなこと”が起こらなければずっとこの国は平穏でとてもいい国だった。
あの日、あの時、あんなことが起こらなければ。

「フラン、ベルジュ……あなたは、別の場所で生きて……」
「……ッ」

これは僕、炎王フランが魔王になるまでの長いようで短い日々のお話……。
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