お礼画面
『First bite』
三月某日、降谷は、恋人である赤井秀一を野外のデートに連れ出した。
「どこに連れて行ってくれるのかな?」
赤井は、行き先に察しがついているくせに、そんな風にとぼけて付いてきた。
春うらら。お日柄もよろしく、二人は満を持して、初めての苺狩りに挑んだのだった。
実は、このデートプランは、一度、やむを得ない理由で駄目になってしまっていた。つまり、これは、やり直りのデートだ。赤井の期待は高まっている筈だ。降谷は気合が入りすぎるのを敢えて抑え、穏やかなデートを心がけた。
空回りは厳禁だ。
「今日は、俺に運転させてくれ」
「えー、それじゃプランがばればれになってしまう」
「目隠しして運転するさ」
冗談を言い合いながら、赤井の運転で都外の農園までやってきた。
平日の真っ昼間だ。混雑はしてない。苺のハウスには赤井と降谷以外には、数人だけだった。
苺の取り合いなんてことは無さそうだけど。
「あ、これ、真っ赤で美味しそう」
降谷はその優秀な目でもって、狩るべき苺を見つけだした。だが、その横で、赤井は「む」なんて微妙な反応をしている。
「…貴方、なんで、そんな」
赤井が摘んだのは、小さくてまだ白いところが残ったものだった。
「もお」
赤井の手から苺を奪い取り、パクッと口に入れた。
とても、酸っぱい。
代わりに、降谷が摘んだ大きくて真っ赤で、艶々の苺を差し出した。
「これ、美味しいですよ、絶対」
「ん」
赤井は、あーんと口を開けた。
「っ!」
なんと、なんと!あーん?
「ひぇっ」
降谷はあまりの事に小さな悲鳴を上げた。
このクールでニヒルなハンサムが、子どもみたいに口を開けているだと!
「?」
赤井は一向に口に入らない苺に、不思議顔だ。
なに、その顔!
「可愛いっ!」
思わず口に出てしまった。
手にした苺は赤井の口に突っ込んだ。
動悸と息切れが酷い。やばい。心臓が痛い。
苺は赤井の真っ白な歯に喰まれ、そのまま降谷の指まで噛まれた。
昼間っから、こんなエッチな出来事が⁉︎
降谷は、もう、てんやわんやだ。
「うん、美味い」
赤井は降谷の手を掴んだ。それから、もう一度、指先にキスした。苺は、とっくに口の中なのに。
「ひぇぇ」
「はは、真っ赤だ」
赤井はそのまま、降谷の頬にキスした。
多分、降谷のほっぺは、苺くらい真っ赤だった筈だ。
ここ、外ですよ。誰かに見られますよ。
降谷が言うべき言葉は、たくさんあるのに、出て来ない。
指先に触れたその唇が、苺を喰むその唇が、早く自分にキスしてくれないかなと、そればかりが頭を支配する。
「ほら、今度は美味そうな苺を見つけた」
今度は、赤井が赤い苺を差し出した。
ぎゅん
降谷の胸は締め付けられた。
「ほら、あーん」
「あーん?」
言われるままに口を開ける。
「これからも、ずっと美味いものを食べたいな、君と二人で」
「うわーっ!」
衝撃で、赤井の指を噛むところだった。
なんだ、その台詞!なんだ、その甘い顔!なんだ、なんだ。
降谷は苺の香りの甘い空気に包まれて、幸せに困惑するのであった。
三月某日、降谷は、恋人である赤井秀一を野外のデートに連れ出した。
「どこに連れて行ってくれるのかな?」
赤井は、行き先に察しがついているくせに、そんな風にとぼけて付いてきた。
春うらら。お日柄もよろしく、二人は満を持して、初めての苺狩りに挑んだのだった。
実は、このデートプランは、一度、やむを得ない理由で駄目になってしまっていた。つまり、これは、やり直りのデートだ。赤井の期待は高まっている筈だ。降谷は気合が入りすぎるのを敢えて抑え、穏やかなデートを心がけた。
空回りは厳禁だ。
「今日は、俺に運転させてくれ」
「えー、それじゃプランがばればれになってしまう」
「目隠しして運転するさ」
冗談を言い合いながら、赤井の運転で都外の農園までやってきた。
平日の真っ昼間だ。混雑はしてない。苺のハウスには赤井と降谷以外には、数人だけだった。
苺の取り合いなんてことは無さそうだけど。
「あ、これ、真っ赤で美味しそう」
降谷はその優秀な目でもって、狩るべき苺を見つけだした。だが、その横で、赤井は「む」なんて微妙な反応をしている。
「…貴方、なんで、そんな」
赤井が摘んだのは、小さくてまだ白いところが残ったものだった。
「もお」
赤井の手から苺を奪い取り、パクッと口に入れた。
とても、酸っぱい。
代わりに、降谷が摘んだ大きくて真っ赤で、艶々の苺を差し出した。
「これ、美味しいですよ、絶対」
「ん」
赤井は、あーんと口を開けた。
「っ!」
なんと、なんと!あーん?
「ひぇっ」
降谷はあまりの事に小さな悲鳴を上げた。
このクールでニヒルなハンサムが、子どもみたいに口を開けているだと!
「?」
赤井は一向に口に入らない苺に、不思議顔だ。
なに、その顔!
「可愛いっ!」
思わず口に出てしまった。
手にした苺は赤井の口に突っ込んだ。
動悸と息切れが酷い。やばい。心臓が痛い。
苺は赤井の真っ白な歯に喰まれ、そのまま降谷の指まで噛まれた。
昼間っから、こんなエッチな出来事が⁉︎
降谷は、もう、てんやわんやだ。
「うん、美味い」
赤井は降谷の手を掴んだ。それから、もう一度、指先にキスした。苺は、とっくに口の中なのに。
「ひぇぇ」
「はは、真っ赤だ」
赤井はそのまま、降谷の頬にキスした。
多分、降谷のほっぺは、苺くらい真っ赤だった筈だ。
ここ、外ですよ。誰かに見られますよ。
降谷が言うべき言葉は、たくさんあるのに、出て来ない。
指先に触れたその唇が、苺を喰むその唇が、早く自分にキスしてくれないかなと、そればかりが頭を支配する。
「ほら、今度は美味そうな苺を見つけた」
今度は、赤井が赤い苺を差し出した。
ぎゅん
降谷の胸は締め付けられた。
「ほら、あーん」
「あーん?」
言われるままに口を開ける。
「これからも、ずっと美味いものを食べたいな、君と二人で」
「うわーっ!」
衝撃で、赤井の指を噛むところだった。
なんだ、その台詞!なんだ、その甘い顔!なんだ、なんだ。
降谷は苺の香りの甘い空気に包まれて、幸せに困惑するのであった。