男子校であった怖い話
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守山成樹の春
守山くんに春がきた!
あの"目的"を達成させられるか……!?
なんとなんと、女性恐怖症の俺にもついに春がきた。青春の象徴、彼女が出来たのだ。全く世の中に奇跡ってのはあるもんだ。
彼女の名前は夢野夢子ちゃん。美人で性格もいい。特に笑った顔がかわいい。困った顔もかわいい、拗ねた顔もかわいい。つまり全部かわいい。
最初の頃は大変だった。何しろ俺がまともに話せないからだ。
でもそんな俺に呆れることなく根気強く付き合ってくれた。面白がってからかってくる今まで会った女達とは大違いだ。
今までの辛い日々は彼女と出会うための試練だったのかもしれない。ありがとう神様、俺一生夢野夢子ちゃんを大事にします。
今日は適当に繁華街をブラブラしながら二人で店を見てまわっていた。ああでもない、こうでもないと言いながら二人で過ごすのは楽しい。
「守山くん、私ちょっと休憩したいな」
「そうだね、ずっと歩きっぱなしだったもんね。どこ行こうか」
きょろきょろと周りを見渡す。大分端の方まで来てしまったみたいで、ちょっと座って休めるような喫茶店などが見当たらない。しまった、下調べをしてくるべきだった。そんな時、彼女が声を上げた。
あそこ、と彼女が一点を指差す。そこには
ホテル「狭間の部屋」と看板が掲げられていた。
確かに休憩と書いてある、あるが宿泊とも書いてある。つまり、それはその、そういう意味で言ったのか!?
「ア、アレ、アレハララララブラブブブホホホ」
「いこ」
「ひぃ゜っ!!」
返事も待たずに夢子ちゃんは俺の手を取り目的の建物に向かって歩き出した。そんな、積極的すぎる。
でもそんなところも好きだ…………!
部屋に入るもどうしたらいいのかわからず、とりあえずベッドに腰を下ろす。本当に来てしまった。これからどうなってしまうのだろう。彼女はどういう意図でここに連れてきたのだろう。文字通り休憩、ひと休みするためだろうか。いやいやそんなわけあるか。
「ちょっと暑くなってきちゃった……」
そう言うと彼女はおもむろに上着を脱いでブラウスのボタンを二、三個外した。胸元が顕になる。彼女の白い肌に俺の目は自然吸い寄せられる。見えている範囲と、見えない範囲。その隠された部分を想像してはゴクリ、と唾を飲み込んだ。
「ア、ソウダネ、アツイヨネ」
女の子に多少は慣れたとはいっても童貞であることに変わりはない。そんな目のやり場に困る格好をされたら動揺を隠せず、ぎこちない口調で返事をしてしまう。
「ねえ、守山くん」
「ナ、ナンデスカ」
緊張からなぜか敬語で返してしまった。
「私ね、もっと熱くなりたいの…………」
彼女が俺の手をぎゅっと握る。うるんだ瞳で上目づかいで見つめてくる。
「エット、ソレハ……?」
どういうことなんだと聞く前に、彼女が俺の頬にキスをした。柔らかい感触は一瞬触れるだけで離れた。
「夢子ちゃん…………!」
理性を保てたのはそこまでだった。いや理性なんて初めからなかったに等しい。ただ度胸がなかっただけだ。
漢、守山成樹、今日童貞を卒業します。
夢子をベッドに押し倒し、キスをする。勢いあまって歯がぶつかってしまうも、彼女は微笑んで俺を受け止めてくれる。そっと首に手を回され身体を密着させられる。彼女の熱が、身体の柔らかさが、全身を通して伝わってくる。唇の感触に、水音に、彼女の誘うような表情に、五感を全身に集中させ今この時を全力で味わう。すごい、A Vなんて目じゃない。
唇を離し、彼女のブラウスに手をかけボタンをひとつひとつ外していく。この動作ひとつとってももどかしい。早く彼女の何もまとわない姿を見たい。奔りだした衝動はとまらない。坂道を下る自転車のように俺の性欲は一秒ごとに勢いを増していく。
その時────唐突に扉が開け放たれた。
「てめぇ!! 俺の女に何してんだゴルァ!?」
ガラの悪い男がいきなり扉を蹴り飛ばしながら俺にむかって罵声を浴びせてきた。
あっけに取られ呆然と男を見返していると、彼女がするりとベッドから抜け出し男の元へ身を寄せる。
「斉藤くん、私この人に乱暴されるところだったの」
くすん、くすんとわざとらしい泣き真似をしながら男にしなだれかかる。
「え、そんな、夢子ちゃんも乗り気だったよね?」
俺は冷や汗をかきながら夢子ちゃんに救いを求めた。
「テメェみてえなとぼけた男はみんなそう言うんだよ。くたばれカスが」
斉藤と呼ばれた男に俺は胸ぐらを掴まれる。180センチはありそうな男と、167センチ(自称)の俺、勝負は明らかだった。逃げることすら出来そうにない。
「こらこら、斉藤君。暴力はいけませんよ」
そこに、いやに丁寧な声と共にまた違う男が姿を現した。中性的な顔だちで、よく見ると化粧をしている。どことなく不気味な男だ。
「おいお前、どう落とし前つけてくれんだ。慰謝料百万払えよ」
斉藤が俺を投げ飛ばし、指をボキボキと鳴らしながら凄む。慰謝料百万って、小学生が決めたみたいな適当な値段だな。
ようやく俺でも状況が飲み込めてきた。これは美人局だ。俺は、ハメる前に嵌められたんだ。
「そんなお金ないですよ……」
そもそも犯罪だろと思うがそんなことを口にする勇気は俺にはない。絞り出すような弱々しい声でいうことしか出来ない自分が情けない。ちらと彼女を見ると、斉藤の後ろでつまらなさそうにケータイをいじって俺のことを見ようともしなかった。何て女だ。
「いいアルバイトがありますよ。短時間で高収入、日時も時間も選べます。斉藤君への慰謝料もあっという間に貯まりますし、もちろんそれ以降も働いてもらっても構いません」
化粧男が俺に向かって言った。
本当にそんなアルバイトがあるんだろうか。上手い話には裏があるっていうし、こいつ自体も何だかうさんくさい。でも俺には選択肢がない。了承しなければ今にも殴りかかられそうだ。
「お話だけでも聞いてみませんか? さ、隣の部屋へ行きましょう」
「ケツの穴かっぽじってようく聞いてこいよ、ぎゃはははは!!」
「おしりでモノは聞けないでしょうが」
斉藤の意味不明なコメントとそれに対する彼女のツッコミを聞きながら俺は半分死んだような意識で案内されるがままふらふらと歩き出す。
半ば強引に連れられていった部屋で、俺は童貞よりも先に大事なものを失ってしまったのだった。
〜完〜
春(彼女が出来た)からの春(売春)
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