続・護りたいもの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
柳宿の手が顔に近付く。
触れられない事などお構い無しに、私の頬に伝う涙を拭おうとしてくれている。
「ごめんね」
そう呟いて、実体のない私を抱き締めるように腕を回してくれる柳宿。
掠れた声が耳に響く。
「ごめん……ごめん名無し……ごめん……ごめん…」
「柳宿…」
「守ってあげられなくて、ごめんね…」
悲痛な声で謝り続ける柳宿の震えている体に、そっと手を回す。
すごくすごく、優しい人だから。私の死後、きっと酷く責任を感じて一人で苦しんでいたんだろう。
「柳宿…言ったでしょ?柳宿のせいじゃないって。だからもう謝らないで」
「ううん、あたしのせいよ。もっと…もっとあの時…あたしが……」
「違うよ」
「…違わない」
「違うって」
「違わない。あたしがもっとしっかりしてれば、こんなことにはならなかったわ」
「違うよ。私が勝手にしたことだもん。柳宿が責任感じることなんて何にも…」
「…っ……違わないって、言ってるでしょ!!」
「!?」
バッと顔を上げた柳宿に、真っ赤な目でキッと睨まれる。
「あんたねぇ!もっとちゃんと怒りなさいよあたしに!!
いいって言ってるんだから、こんな時まで遠慮してンじゃないわよっ!さっきも言ったでしょ?あんたはもっとさぁ!」
「…」
ブツブツとまたお説教が始まってしまった。
結局自分の方が怒られている状態に、くすくすと笑ってしまう。
「ふふっ、柳宿ってば…。分かった。じゃあもう遠慮しない」
「やっぱりしてたんじゃないの」
呆れたように言う柳宿に無言で笑顔を向ける。
その後すっと立ち上がり、宙に向かって呼びかけた。
「娘々。どうせどこかで見てるんでしょ?お願い、少しだけ体を貸して欲しいの」
そう言うと、(了解ね!)とどこからともなく声が聞こえてきた。次の瞬間、体が熱くなる。
「ありがとう…娘々」
何が起こったのか分からず、ポカンとした顔で座ったままの柳宿の頬にそっと手を伸ばす。
そのまま近付いて、瞳を揺らしている柳宿の唇にゆっくりと自分の唇を近付けた。
ほんの少しだけ。
軽く、掠めるように表面を当てる。
「……………えへへ」
「…」
「柳宿、チューしちゃったね。……娘々と」
「……。ばかねぇ…」
フッと小さく笑い、立ち上がる柳宿。
「まだ遠慮、してンじゃないのよ」
柳宿の手が頬にそっと添えられた。
再度近付く唇。
先程は感じなかった柔らかで温かいその唇の感触に、どんどんと目頭が熱くなっていく
しばらくしてゆっくりと唇が離れると同時に目と目が合った。すると優しく笑みを零した柳宿に、頬に添えたままの親指で目元をそっと拭われた。
「いーい?あたしは今、“名無し”にしたのよ。娘々じゃなくてね」
「うん……うん」
(娘々、柳宿とチューしちゃったね!)
「アンタは黙ってなさいっ!」
私の中の娘々に叱りつけて、今度こそしっかりと抱き締めてくれる柳宿。確かに感じる体温。その背中に手を回し、ふわりと香る大好きな人の匂いに包まれて、そっと目を閉じた。
「ねぇ、柳宿?」
「なぁに?」
「私、生まれ変わったら柳宿より男らしくてカッコいい人、見つけるからね」
「へぇ~?そんなオトコ、なっかなかいないと思うけどね!見つけるの難しいわよ?」
「ふふっ、そうかもしれないね」
「…」
グッと、抱き締める力が強くなる。
「名無し。あたしと約束して欲しいの。生まれ変わったその時は、絶対に…絶対に幸せになるって。……お願いよ」
「柳宿……うん、分かった」
「破ったら今度こそ許さないんだから」
「ふふっ。うん、約束する…」
この感触を、匂いを、忘れないように。
確かに動いている柳宿の鼓動の音を聞きながら、ギュッと腕に力を込めた。
·