続・護りたいもの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
怒っとるぞ、という太一君の言葉に「やっぱり?」と返すと、やれやれと呆れたようにため息をつかれてしまった。
「娘々らが抑えとるが、もう手がつけられん。さっさと観念して会いに行け」
「柳宿さん… 名無しさんが亡くなってから、かなり荒れていましたからね」
「ああ、覚悟した方がいいぞ、名無し」
3人の言葉にゴクリと唾を飲む。
私の後に来た張宿と軫宿。私が死んでから柳宿がどれだけ泣き叫んでいたか、しがみついて離れようとしない彼を私の体から引き剥がすのにどれだけ苦労したか、散々教えてくれたのが彼らだ。
柳宿とまさかこうして、霊体としてまた会える機会がくるなんて思ってもみなかった。
「そうだよね…勝手なことして死ぬなんて、そりゃ怒るよね」
「でも名無しさんは柳宿さんを助けたんですから…」
「だから余計にだよ…」
自分を庇って死ぬなんて、逆の立場だったら、そしてその本人に会えるとしたら、私もきっと怒ると思う。どうしてそんなことをしたんだと。
「どうしよう、柳宿に殺されるかも…!」
「大丈夫だ名無し。もう死んでいる」
「軫宿…真面目に返さないで…」
「それに、お前も柳宿に会いたいだろう?」
「…」
本音を言えば、会いたい。すごく。
あんなに好きで堪らなかった相手なのだから。
「でもだって、何を話せばいいのか…」
「柳宿の話を聞いてやるだけでいいんだ。柳宿だってお前に会いたくて堪らないんだろう。大人しく怒られてやれ」
軫宿の言葉に、素直に頷いた。
「ちょっと、離しなさいよ!!あの子いるんでしょ!?なんで止めるのよ!!」
「名無しは今、太一君といるね。だからもうしばらく待つね!」
「さっきからずっと待ってるけどあの子だけ来ないじゃないの!張宿も軫宿もすぐに出てきてくれたのに、なんで名無しだけ出て来ないわけ!?」
体中にまとわりつく娘々軍団を振り払おうとじたばた暴れる柳宿。
なかなか出て来てくれない名無しに痺れを切らし、自ら探しに行こうとしたところ娘々達に止められてしまったのだ。
「離しなさいって!出てこない気なら、自力で探し出してやるんだから…!」
腕まくりをして変に気合たっぷりの柳宿。解放した途端、大極山中を走り回りそうな勢いだ。
「そんな怖い顔してたら余計に出てこなくなるぞ?柳宿」
「そうですよ柳宿さん。少し落ち着いて下さい」
「軫宿、張宿……あの子は?連れて来てくれたんじゃないの!?」
張宿が無言のままちらりと軫宿の背後に視線を動かす。
その視線に後押しされ、軫宿の広い背中の後ろからそ~っと顔を出した。
「柳宿…」
いつも見つめていた菫色が目に入る。
懐かしい、大好きだった色。少し垂れた目も泣きぼくろも、あの時のままで。
少し痩せたような気もするけれど…あの時と変わらない姿に思わず目を細める。死んでも守りたかった、私の想い人。
バチッと目が合った瞬間、柳宿の顔が一瞬でふにゃりと泣きそうに歪んだ。
「…… 名無し……」
しばらくその場に固まっていた柳宿だったが、ふらふらとした足取りで、でも真っ直ぐにこちらを見つめながら近付いてきた。
1/4ページ