あたしのもの
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コンコン。
「…柳宿?」
扉の前でしばらく待ってみたけど、返事はない。
「柳宿、いないの?」
諦めて戻ろうとしたその時、扉の向こうから小さな声が聞こえた。
「…なによ」
「いるなら返事くらいしてよ」
「なんか用?」と、少し冷たい声が返ってくる。
声を聞けたことに少しホッとしたけれど、緊張感が高まってきた。
「中、入ってもいい?」
「……」
無言を許可と受け取り、そっと扉を開けると、柳宿が両肘をついて椅子に座っている姿が見えた。背中が少し寂しそうに見えて、黙って近付き、顔を覗き込む。
ムスッとした顔でこちらをチラリと見る柳宿。だが、すぐにまたプイッとそっぽを向かれた。
「柳宿…ごめんね?」
その言葉に、柳宿の視線が再びこちらに戻ってきた。
「私が悪かったよ、本当にごめん」
「…ほんとに分かってんの?」
「分かってるよ。軽率だった。柳宿の気持ち、もっと考えるべきだったね」
「…ふぅん…」
そう呟いたきり、柳宿は再び黙り込んでしまった。
気まずい沈黙が流れる。
「……」
「……」
「あの…、許して…くれる?」
「許さない」
「えっ!?」
間を置かずにズバッと言われ、思わずたじろいでしまう。
「な、なによ、謝ったのに…!」
「謝ったからって許さなきゃいけない決まりなんてないわ」
「そうかもしれないけど…じゃあ、どうしたら許してくれるの?」
「そんなの自分で考えなさいよ。あたし、まだ全然気が収まってないんだから」
柳宿は眉を寄せながら、思い出すたびイライラがこみ上げるとでも言うように、苦々しい表情を浮かべた。
「もうしないから」
「当たり前よ!」
「柳宿…ねぇ、許して?」
再びそっぽを向こうとする柳宿の頭を、思い切って胸元にぐいっと抱き寄せた。
柳宿が驚く間もなく、そのままぎゅっと抱きしめる。
「ごめんね、嫌な思いさせて」
「……まったくだわ」
柳宿は抵抗もせずにそのままだ。
「それと、柳宿のこと面倒くさいだなんて思ったことないよ。嫉妬深いとこも、好きだよ」
「…本当かしら…」
柳宿の雰囲気が少し柔らかくなったのを感じて、そっと体を離した。視線だけを背けている柳宿の顔に、自分の顔をゆっくりと近づけていく。
「ねぇ、まだ怒ってる?」
「…」
返事はないものの、そのまま柳宿の唇に軽くちゅっとキスをする。
すると柳宿が驚いたように顔を上げた。
至近距離で見つめ合い、緊張を隠すように再び尋ねる。
「まだ…怒ってる?」
「…まだ、怒ってるわ」
その言葉に、もう一度優しく唇を寄せた。
「…まだ?」
「まだまだ」
「そう…」
今度は思いを込めて、長く強く唇を押し付ける。
少し離れては角度を変えながら、何度も柳宿にキスを贈った。
「……っはぁ……ねぇ、柳宿…」
顔を離すと、また目を逸らしてツンとする柳宿の姿が目に入った。しかし、その表情は明らかにほころんでおり、隠し切れない嬉しさが浮かんでいる。
「ね、許してくれる?」
「………しょーがないわねェ!あんたがそこまで言うなら、許してあげないこともないけどォ?」
あたしって心広いわよね~と、いつもの調子で話し出す柳宿。どうやらすっかり機嫌が直っているようだ。
「良かった…」
「でも…もう一回よ」
そう言うと、ん、とキスをねだってくる柳宿。
笑みをこぼしつつ再び顔を近付けようとすると、柳宿が後頭部に手を回し、ぐっと引き寄せてきた。力強く唇を押し付けながら立ち上がった柳宿が、次の瞬間、腕を回してぎゅうと抱きついてきた。
「もっと、抱き締めてよ」
「柳宿ってば…甘えん坊だね」
「何よォ…そんなところも、好きでいてくれるでしょ?」
「もちろん」と耳元で囁くと、さらに少し力を強めて抱きついてくる柳宿の体を、ぎゅっと抱き締め返した。
「あたしの前で他の男に抱きつくなんて、もう二度としないでよね」
「うん、分かってる」
「あたしの前じゃなくてもダメよ」
「うん、しないよ」
「…名無しは、あたしのものなんだから…」
「うん…大丈夫だよ、柳宿」
まるで駄々っ子のように抱きついたまま甘え続ける柳宿の背中を、小さい子を宥めるように優しく撫で続けた。
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