あたしのもの
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(……我慢、我慢……)
ちょろちょろと動き回っているそれを目で追いながら、心の中で自分に言い聞かせる。
(ダメ、触っちゃダメ……)
ブレーキをかける頭の中の声に反して、ついつい、そろりと近付いていってしまう。
(……ああもう、やっぱ無理っ!!)
だだだっと走って近寄り、そのままガバッ!と後ろから抱き着いた。
「だっ!??」
「井宿、可愛いぃ~~!!♡♡♡」
「だっ…や、やめるのだっ!」
じたばたとする小さな手足。その愛らしさに思わずグリグリと頭を寄せ、唇を近付けようとした瞬間、グイッと首根っこを掴まれた。
「!?」
「名無し、あんた…何してンのよ…」
頭上から聞こえた低い声に恐る恐る振り向くと、目の据わった柳宿に見下ろされており、その迫力にビクッとしてしまった。
「いや、その、別に…何も」
「何も。じゃないでしょ!!この前も注意したところだってのに、アンタまた何やってンのよ!」
「うぅ…だって…、柳宿は分かんないの!?この可愛さが!!」
ずいっと井宿を盾にしようとしたが、いつの間にやら美朱のくまのぬいぐるみにすり替わっていた。
「あ、あれ?」
「井宿ならもう逃げたわよ」
「…」
「ねぇ、名無し?この前あたし、言ったわよね?次やったら許さないって」
「だ…だって、だって…」
「だってじゃないっ!しかもあんた、今抱きつくだけじゃなくって、キスしようとしてなかった!?」
「そ、それは…見間違いじゃないかな?」
あはは、と誤魔化すように笑ってみたが、目の前の柳宿の変わらぬ怖い顔に再び黙って俯く。
「はぁ…」と深くため息をつく柳宿。
「もう頭にきたわ…今日という今日は許さないから。これは浮気とみなすわよ」
「そんな浮気だなんて大袈裟だなぁ、柳宿ってば」
「もう知らない、名無しなんて」
柳宿は不機嫌そうに襟元を掴んでいた手をパッと放し、くるりと背を向けると、スタスタと早足で歩き出す。
「……」
思わず、タタタッと柳宿に駆け寄った。
歩きながら顔を覗き込むと、フンっと顔を背けられてしまった。ささっと反対側に回り込んでも、またしても顔を背けられてしまった。
「ねぇ、そんな本気で怒らないで?」
「……」
「だって、あの小さい井宿は私にとって小動物みたいなもので…別に変な意味は何もないよ?」
「あんたはそうかもしれないけど、相手は井宿よ?三等身になってたって大人の男なのよ?」
「そうなんだけど…」
「はぁ…」と思わず溜息をついてしまった。
それに柳宿がピクリと反応して、足を止める。
「……今アンタ、面倒くさいって思ったでしょ」
「えっ!?そ、そんなことは!」
「どうせあたしは面倒くさいし、嫉妬深いわよ…分かってるわよ、そんなことくらい!……悪かったわねっ!!」
「えっ、ちょ、柳宿!」
柳宿はだだだっと走って、自室に飛び込むと、勢いよくバァンッと扉を閉めてしまった。
「え…ええ~…」
初めて見る柳宿のそんな姿に、その場でただ立ち尽くすしかなかった。
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