欲望の影
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その後、柳宿の部屋を飛び出し、自室に戻ってきた。
寝台に倒れ込み、枕に顔を埋めながら大きなため息をつく。ぶつけた場所をそっと触れてみると、小さな瘤ができているのがわかった。
椅子ごとひっくり返ったあげく下着を思いきり柳宿に見られてしまった恥ずかしさで痛みを忘れていたけれど、今になってズキズキと鈍い痛みが蘇ってきた。
それにしても、自分の色気のなさに呆れてしまう。
失態を思い出しては布団に顔を埋めてジタバタと悔しさを爆発させた。
本物の女である自分よりよっぽど色気があって綺麗で、まさに"いい女"な柳宿。
一方で自分は…
「はぁ…」
(自分の彼に女として負けるって、一体どういうことなのよ…)
そもそも、後宮で美人たちに囲まれていた柳宿が、どうして自分なんかを好きになってくれたのか不思議でならない。
柳宿は男として本当に私に女としての魅力を感じてくれているのだろうか?妹みたいで可愛いとか思ってるだけで、恋愛感情というよりはそういう感覚なのかもしれない…。
実際、いまだに何も手を出されていないのだから。
一度ネガティブな思考に陥ると、どんどん深みにハマってしまう。悶々と考え込んでいると突然入口の方から声がした。
「あんたねぇ、扉くらいちゃんと閉めなさいよ」
いつの間にか柳宿が部屋の前に立っていた。
開け放しになっていた扉をコンコンと軽く叩きながら、呆れたような表情でこちらを見ている。
「ほら、氷持ってきてあげたわよ」
「…」
お礼を口にすることもなく、近付いてくる柳宿を無言で見つめる。すっかり気分が落ち込んでしまった。
「あーあ、瘤ができちゃってるじゃない」
近くまで来た柳宿が私の頭に触れると、持ってきた氷袋をそっと当ててくれる。冷たさが心地よくて、少し気持ちが落ち着く。
「…悪かったわよ、笑ったりして」
何も言わない私が怒っていると判断したのか、柳宿が小さな声で謝ってくる。笑われたのは確かにショックだったけれど、今はもう、怒っていると言うよりは自分に対して落ち込んでいるだけだ。
「…柳宿は、一体私のどこを気に入ってくれたの?」
そう問いかけると、柳宿がキョトンとした表情を浮かべた。
「私なんて色気もないし、美人でもないし、お淑やかでもないし…」
自分で言いながら、胸が締め付けられる。こんなこと、本当は言いたくなかったのに。
「ちゃんと、女として見てくれてるの…?」
声がかすれていく。居たたまれない気持ちになって、自然と視線を下に落とす。
すると次の瞬間、おでこにビシッと強めの衝撃が走った。
「!?」
「バッカじゃないの!?」
「うぅっ…柳宿のデコピン強すぎるよぅ」
「女として見てるかですって?当たり前じゃないの!そのせいでこっちは戸惑ってるってのに、アンタって子は…」
柳宿が呆れたように言い放った。
「と、戸惑ってるって…?」
「…色々あんのよ、男には」
「色々?」
質問には答えず、「とにかく!」と柳宿が切り捨てた。