祭りの夜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「井宿ー!聞いてよ翼宿がひどいの!」
「ねぇ井宿、美朱ってばまた私のお菓子食べちゃったのよ!」
「井宿!柳宿が私のことドンくさいって言うの!そんな事ないよね!?」
彼女は何かあるたびに、よくオイラのところに報告に来る。と言っても、その内容は毎回とてもくだらないものばかりだけれど。
「ちちりー!」
遠くからパタパタと足音が近づいてくる。また来た。
今度は何の用だろうか。
息を切らせながら釣りをしているオイラの隣に座る名無しを、ちらりと横目で見る。
「今日はどうしたのだ?」
そう尋ねると、名無しは聞いてもらえることが嬉しいのか、ニカッと笑顔を見せた。
今回の相手は翼宿か、美朱か、それとも柳宿か。
大体この3人のローテーションだ。
今日は美朱あたりだろうかと予想していると、意外な言葉が飛んできた。
「あのね、今夜市街でお祭りがあるんだって。井宿、私と一緒に行ってくれない?」
「お祭り?」
予想外の言葉に思わず横を振り向くと、名無しが目をキラキラさせながらじっとこちらを見つめていた。
「オイラと?」
「うん、井宿と。ダメ?」
「ダメというわけではないのだが…美朱達とは行かないのだ?」
こういう時は大体美朱や柳宿と行っているものだから。
「美朱はたまには鬼宿と二人で行きたいだろうし、それに井宿ってあんまりこういうのには行かないじゃない?たまには行こうよ、きっと楽しいよ!」
お願い、と彼女が首を傾げて、期待を込めてこちらを覗き込む。
柳宿について尋ねかけたが、結局口を閉じた。こんな風にお願いされて断る男がいるだろうか。仮面をつけていて良かったと心から思う瞬間だった。
「…分かったのだ」
そう返事をすると、名無しは「やったぁ♪」と嬉しそうに笑った。約束だからねー!と手を振りながらパタパタと走っていく彼女を見送った後、さりげなく周囲を見渡してみる。
多分、あそこだな。
名無しが走っていった方向とは反対側にある大きな柱の方に目を向けた。
「まったく、素直じゃないのだ」
後ろに隠れているであろう彼の姿を思い浮かべ、フゥと小さくため息をついた。
1/5ページ