今夜だけでも
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「柳宿って、女の子には興味ないの?」
鏡を覗き込みながら肌のお手入れをしている柳宿に、ふと思い立ってそんなことを聞いてみた。
「はぁ?いきなり何よ。ないわよそんなの」
こちらに一瞥もくれず、今度はその艶やかな長い髪に櫛を通し始めている。
「全然?」
「全然」
「まったく?少しもないの?」
「…あのねぇ、あたしは心は乙女だって言ってるでしょ?」
「ふうん…」
「なんでそんなこと聞くのよ?」
櫛をそっと置き、ようやくこちらに視線を向けた。
「美朱がね、前に柳宿に裸見られたけど無反応だったってブツブツ言ってたから」
「…」
「ほら、やっぱり女としては、そこは多少動揺して欲しいじゃない?」
そう言うと、柳宿は呆れたように眉をひそめ、ため息をひとつこぼした。
「美朱の色気のない裸見たって、動揺なんかしないわよ。胸だって小さいし」
「へぇ、柳宿って巨乳が好きなんだ」
「そーいう意味じゃなくてっ!」
冗談だよ、とクスクス笑うと、柳宿は頬を膨らませてムゥッとした顔に変わった。
「あたしの方がよっぽど色気があるもの。裸くらいで別に何も思わないわ」
「ふぅん…じゃあ私の裸を見ても動揺してくれないんだ?」
「しないわよ、そんなの」
ぷいと視線をそらされた。
「興味ないわ」
「…」
本当に興味がないのだろう。
再び鏡を覗き込んでいる柳宿を見つめ、フ、と静かに笑った。
「そんなの、興味ない……か……」
落ちていく視線を誤魔化すように、目の前のグラスの残りを一気に飲み干した。
「酷いなぁ柳宿ってば!」
明るい声を絞り出す。
「まぁでも、そうだよね~。私も色気なんてないし」
「自分で言ってちゃ世話ないわね」
「柳宿の方がよっぽど綺麗だし」
「分かってンじゃない」
「巨乳には程遠いし」
「あのね。だから別にそれは…」
再び振り返った柳宿が、その場で動きを止めた。
「大して可愛くも、ないし」
「…」
「女として…負けてるし…」
明らかに動揺の色を浮かべている柳宿の目。
ああ、初めて見る表情だなぁと、滲んだ視界でぼんやりとそれを見つめた。
「……あんた……ちょっと、飲み過ぎよ」
「ん、そうみたい」
目元をグイと乱暴に拭い、へへ、と笑みを浮かべながら立ち上がった。
「部屋に戻るね。お邪魔しました!」
「……っ、」
扉に向かう途中、ガタンと背後で柳宿が立ち上がる音がした。振り向くと、何か言いたげな顔をしている彼に再びニコッと笑顔を浮かべた。
あんな言葉ひとつで馬鹿みたいだと思う。
でも、恋する女の子ってそういうものだから。
乙女心…あなたなら分かるはずでしょう?
「おやすみ…柳宿」
何も言葉はいらないから、今夜一晩だけでいいから、私のことだけ考えていて。
口を開きかけたあなたを遮るように呟き、そっと扉に手をかけた。
1/1ページ