GOOD NIGHT BABY

 司お気に入りのホテルの一室。今日はここでこはくんと一晩過ごす予定だ。しかし、仕事で少し嫌なことがあり、いつもは上手く切り替えられるのだが─今日は何だか、虫の居所が悪い。

「…こはくん」
「ん?何や?嬢」

 すぐそばにいるこはくんに話しかける。実は最近、こはくんとめでたく恋仲になった。家のこともあるし、周りに認めてもらうのにちょっぴり苦労はしたものの、意外と上手く行っている。

「…ぎゅ〜って、してください」
「…どしたん?随分と甘えたさんやね、何かあったん?」

 付き合い始めてからのこはくんは優しい。付き合う前は結構冷たい所もあったのに…。まるでアイスクリームのようだ。一度味わうと、その甘さにやみつきになってしまう。

「…何も聞かないで、ぎゅーってして欲しいんです」
「しゃあないな。…ほら、こっちおいで?」

 こはくんが大きく両手を広げる。恥ずかしい気持ちを抑えて、私はこはくんの胸の中に飛び込んでいく。あぁ、こはくんの匂いだ。……安心する。

「…ぬくいな」
「…子ども体温と言いたいのですか?」
「コッコッコ♪ご機嫌ナナメな朱桜の姉はん……かわいい」
「からかわないでくださいっ!」

 こういう生意気な性格は本当に変わっていない。……そんなとこも可愛くて、大好きなんですけれど。


「…なぁ、本当にハグだけでええの?」
「?」
「チュー、は?」
「……貴方がしたいだけなんじゃないですか」

 どうやら、こはくんはキスがしたいみたいだ。私も同じ気持ちであることを、彼の透き通った瞳にはお見通し。

「きすも、したい、です…」
「はいはい…お望み通り」

 ちゅっ…

 唇がほんの触れ合うだけの、軽い口づけを交わす。だけれどすぐに、それだけじゃ物足りなくなって。

「んっ…こはくん、もっと」
「…ぬしはんに乱暴な真似はしたくないねんけど……そう言われたら、」
「!?ふっ…んぅ…はぁっ、」

 こはくんが私の両耳を塞ぎながら、深く舌を絡ませてきた。二人が混ざり合ういやらしい音が、よく響いて、何だかとても、変な気分。

「…どこでこんなこと覚えて来たんですか…」
「さぁ?……なぁ、そろそろキスの続きしよか。嬢の嫌なこと、全部わしが、忘れさせたるから」

 こはくんのエスコートで、ベッドまで誘われる。あぁ、今日は特別、長い夜になりそうだ。
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