桜のピアスをあけたい

「かわいい…」

街の小さな雑貨店。
嬢が、桜のモチーフがあしらわれたピアスを手に取った。

「…ピアス、あけようかな」
「…それはあかんっ!」
「もうっ、なんでですか」
「……なんでも」
「貴方のお友達だって、あけてるではないですか」
「ラブはんはえぇの!」

そう、ラブはんがピアスをあけているのは、別にえぇんやけど。似合っとるし。
せやけど、嬢が、朱桜の姉はんがピアスをあけるのは───

「とにかく、駄目ったら駄目」
「むぅ」

あからさまに、嬢が拗ねている。悪かったな。わし、わがままで。
すると、ひとつ、別の桜モチーフのアクセサリーが目に入った。──これだ。

「嬢なら…こっちのが、似合うと思うんやけど?」
「こんなの、どこに付けていくんですか」

あっ、嬢が笑った。もうこれでえぇやん!

「着物とか着ていけば良いやろ?…わしが着付けたるからさ」

着物を着た嬢、絶対可愛いやろな。子どもの頃ぶりに見る和服姿に、勝手に心を躍らせた。

その時、隣を歩くのはもちろんわしで。──プレゼントした桜のかんざし、絶対に付けるの忘れんといてな。
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