【幕】幕新ゆらり
夢主名前設定
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「わかりました。……まずは井上さん」
名前を呼ばれ、井上は穏やかに会釈をした。
夢主が思い描いたよりも年若く、けれども落ち着いた風貌。温かみのある低い声で、少しだけ掠れを感じる。
「井上さんは試衛館の頃から一緒にいる方で、歳も一番上と聞いています。だからです。大事なご意見番です!」
「ははっ、ありがたいお言葉ですね」
「成る程、妥当だな」
井上は微笑み、土方は大きく頷いた。
「山南さんは……」
山南もにこやかに会釈した。
物静かで穏やかな性質は顔にも表れている。人に安心感を与える柔らかな顔立ちだ。
声も涼やかで深みのある響きが心地良い。
「総長なのでしょう。新選組の総長の立場として、当前だと思います。近藤さんがいないようですから、尚更」
土方が山南を退けさせようと画策していた。そんな言い伝えを知っていた。
だから敢えて呼び出した。意見が異なる人物もいた方が良い。伝え聞く山南の人柄がその通りなら、平穏に話しを進めるうえで必要性は高まる。
「ま、一理あるな」
土方は今度はフンと皮肉な笑みで返事をした。
当の本人は、土方の皮肉な態度を謝るように眉根を下げて、夢主に微笑みかけた。
そんな山南の態度に土方は舌打ちをして、最後だと斎藤を横目に入れた。
「じゃぁ斎藤は何だ」
「それは、幹部代表です」
斎藤は表情を変えずにいた。
斎藤は声も姿も想像通り、覚えがある斎藤一そのものだ。
痩せた頬に鋭い瞳、黒く艶やかな髪で前髪が何本か毛束となって垂れている。
声は体の中に染み入るように低く響き、どこか艶やかさがある。ずっと聞いていたら呆けてしまいそうな声色だ。
「代表、だったら総司じゃねぇのか」
土方は単純に上からだろうと訪ねた。
一番隊組長、沖田総司を代表として呼ぶべきではないか。
斎藤は異論無しと黙って話を聞いている。
「そうですね。でも沖田さんは、こういった謀や頭を使う話し合いがお嫌いかと思いまして……」
少し苦笑いをして夢主は誤魔化した。
沖田が頭脳戦を嫌がるのではと考えたのは事実だ。
けれども本当は、戦いの最中に若くして病で死んでしまうのからこの場から外した、それは言えなかった。
「永倉さんは信頼できるお方だと思いますが、真っ直ぐ過ぎて、同じく謀が苦手だと思ったからです」
「確かにな。生真面目でたまに融通がきかん時があるな」
本当は途中で土方さんと意見を違えて、離れて行ってしまうから。それもまた、言えなかった。
謀が苦手な真っ直ぐな性格と考えているのも事実、嘘は吐いていない。
夢主は斎藤を見つめた。
その姿を捉えると、それだけで恥ずかしさを感じてしまう。
斎藤一は憧れの人物。伝えるような話ではないが、伝えずとも男達は異変を察したかもしれない。
平常心を装って、夢主は斎藤を呼んだ理由を説明した。
「斎藤さんは口が堅く信頼できるお方、頭の回転が速くて剣の腕もとても凄いと聞いています。いざという時に頼れると思いました」
褒め言葉に斎藤もフンと鼻をならした。
己を褒める夢主が恥ずかしそうに目を伏せている。
斎藤も目を逸らしてしまった。
「成る程な。確かにこの三人、呼んだ理由は分かった」
土方が納得した所で、三人にここへ呼び戻された事情が説明された。
百五十年先の世界から来たと言った夢主が、その証だと語った言葉。
詳細は伏せ、内部の者しか知らぬ事情を言い当てたと伝える。
「それはまた、飛んだお話で」
山南は驚きを含んだ声でゆっくりと呟いた。
「事実ならば凄い事だね」
「危険だな」
井上が頷き、斎藤が指摘した。
夢主は山南と井上の言葉に安堵して、続いた斎藤の言葉に気を落とした。
冷静に現実を受け止めて、危険に確実に対処する。悪だと断じれば即座に斬り捨てる。
斎藤の正義は夢主が考える通りだと感じられた。
揺るがぬ瞳で捉えられ、夢主は目を泳がせた。
「早速、間近に起こる何かを話してみろ」
「……わかりました」
夢主は自分の言葉で歴史が変わっていく恐れを抱くが、土方に指示されて、ぽつりぽつりと語り始めた。
──物語はここまで──
名前を呼ばれ、井上は穏やかに会釈をした。
夢主が思い描いたよりも年若く、けれども落ち着いた風貌。温かみのある低い声で、少しだけ掠れを感じる。
「井上さんは試衛館の頃から一緒にいる方で、歳も一番上と聞いています。だからです。大事なご意見番です!」
「ははっ、ありがたいお言葉ですね」
「成る程、妥当だな」
井上は微笑み、土方は大きく頷いた。
「山南さんは……」
山南もにこやかに会釈した。
物静かで穏やかな性質は顔にも表れている。人に安心感を与える柔らかな顔立ちだ。
声も涼やかで深みのある響きが心地良い。
「総長なのでしょう。新選組の総長の立場として、当前だと思います。近藤さんがいないようですから、尚更」
土方が山南を退けさせようと画策していた。そんな言い伝えを知っていた。
だから敢えて呼び出した。意見が異なる人物もいた方が良い。伝え聞く山南の人柄がその通りなら、平穏に話しを進めるうえで必要性は高まる。
「ま、一理あるな」
土方は今度はフンと皮肉な笑みで返事をした。
当の本人は、土方の皮肉な態度を謝るように眉根を下げて、夢主に微笑みかけた。
そんな山南の態度に土方は舌打ちをして、最後だと斎藤を横目に入れた。
「じゃぁ斎藤は何だ」
「それは、幹部代表です」
斎藤は表情を変えずにいた。
斎藤は声も姿も想像通り、覚えがある斎藤一そのものだ。
痩せた頬に鋭い瞳、黒く艶やかな髪で前髪が何本か毛束となって垂れている。
声は体の中に染み入るように低く響き、どこか艶やかさがある。ずっと聞いていたら呆けてしまいそうな声色だ。
「代表、だったら総司じゃねぇのか」
土方は単純に上からだろうと訪ねた。
一番隊組長、沖田総司を代表として呼ぶべきではないか。
斎藤は異論無しと黙って話を聞いている。
「そうですね。でも沖田さんは、こういった謀や頭を使う話し合いがお嫌いかと思いまして……」
少し苦笑いをして夢主は誤魔化した。
沖田が頭脳戦を嫌がるのではと考えたのは事実だ。
けれども本当は、戦いの最中に若くして病で死んでしまうのからこの場から外した、それは言えなかった。
「永倉さんは信頼できるお方だと思いますが、真っ直ぐ過ぎて、同じく謀が苦手だと思ったからです」
「確かにな。生真面目でたまに融通がきかん時があるな」
本当は途中で土方さんと意見を違えて、離れて行ってしまうから。それもまた、言えなかった。
謀が苦手な真っ直ぐな性格と考えているのも事実、嘘は吐いていない。
夢主は斎藤を見つめた。
その姿を捉えると、それだけで恥ずかしさを感じてしまう。
斎藤一は憧れの人物。伝えるような話ではないが、伝えずとも男達は異変を察したかもしれない。
平常心を装って、夢主は斎藤を呼んだ理由を説明した。
「斎藤さんは口が堅く信頼できるお方、頭の回転が速くて剣の腕もとても凄いと聞いています。いざという時に頼れると思いました」
褒め言葉に斎藤もフンと鼻をならした。
己を褒める夢主が恥ずかしそうに目を伏せている。
斎藤も目を逸らしてしまった。
「成る程な。確かにこの三人、呼んだ理由は分かった」
土方が納得した所で、三人にここへ呼び戻された事情が説明された。
百五十年先の世界から来たと言った夢主が、その証だと語った言葉。
詳細は伏せ、内部の者しか知らぬ事情を言い当てたと伝える。
「それはまた、飛んだお話で」
山南は驚きを含んだ声でゆっくりと呟いた。
「事実ならば凄い事だね」
「危険だな」
井上が頷き、斎藤が指摘した。
夢主は山南と井上の言葉に安堵して、続いた斎藤の言葉に気を落とした。
冷静に現実を受け止めて、危険に確実に対処する。悪だと断じれば即座に斬り捨てる。
斎藤の正義は夢主が考える通りだと感じられた。
揺るがぬ瞳で捉えられ、夢主は目を泳がせた。
「早速、間近に起こる何かを話してみろ」
「……わかりました」
夢主は自分の言葉で歴史が変わっていく恐れを抱くが、土方に指示されて、ぽつりぽつりと語り始めた。
──物語はここまで──