1.コトハジメ
夢主名前設定
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振り向くと夢主が玄関の壁に付けられた小さな物掛けを見つけ、そこに掛けられた警官の帽子を見上げていた。
「これ、一さんの……」
「あぁ、沖田君の道場を突き止めて出る時、置いて行ったのさ。仕事の時には持って行くがな、正直帽子は邪魔なんだよ」
「凄く立派です……それにこれ……」
「あぁ、それは洋式の衣紋掛けだ。洋服を掛ける物さ」
「ハンガー……わかります!そっか、洋服と一緒にハンガーも……」
「フッ、どうやらお前には懐かしい品のようだな。その上着を掛けておいてくれ」
「はいっ!」
玄関を上がって右に曲がった廊下は縁側になっている。木の雨戸を開ければ庭が見渡せる開放的な空間だ。
荷物を置いた斎藤は早速雨戸を開け放ち、室内に明かりを取り入れた。
明るくなって良く見えるようになった家の中、夢主は辺りをぐるりと見回してある事柄に気が付き、玄関に戻って立ってみた。
「何にも見えない……」
玄関扉は木製の横開き戸、外からの視線を遮ってくれる。
扉を開き中に入っても、四角い居住空間から凸形に飛び出た玄関構造のおかげで、すぐに室内は見渡せない。
二階への階段は奥に進めば見つかるが、この時点で夢主にはその場所は分からなかった。
先程の庭といい、突然の訪問者に全ては晒さないという、斎藤らしい家の造りになっていた。
「凄いお家……」
「気に入ったようだな」
「もちろんです……こんなお家、本当にいいんですか……凄く立派な……」
「あぁ、用意してくれると聞いた時は俺も驚いたがな、ありがたくご厚意に甘えるとするさ、今回はな」
「はいっ!とても嬉しいです……白い壁と深い色の木が可愛いくて、それになんだか……懐かしい……」
「妻が新しい物に目が無いと伝えておいたのさ。少しだが洋式の建築を取り入れてくれている」
「そうなんですか!凄く嬉しいです、新しいのに懐かしくて……暮らしやすそう」
「たいして広くは無いが、風呂もある。硝子も使われているし、他にも面白い物が見つかると思うぞ」
「お風呂もあるんですね!硝子も……お家、充分広いですよ。本当に私には良すぎるお家です……一さんのおかげですね」
心から喜び感謝している夢主の様子に、斎藤の男心がくすぐられた。
得意になった斎藤が思い出したように告げる。
「フッ……そうだ、一つ凄い物があるぞ」
「何でしょうか……」
「西洋時計だ」
「時計……っ!」
驚く顔を満足げに見て頷き、斎藤は夢主を時計のある客間へ案内した。
部屋に入ると、柱に取り付けられた小さな時計が懸命に振り子を動かし、コチコチと夢主には懐かしい音を響かせていた。
「凄い……本当に時計だ……」
感激して両手で口を覆う夢主を斎藤も嬉しそうに眺めた。
「西暦、西洋時間、次々に異国の文化が入ってくるな」
異国に振り回される形で始まった先の戦いで、負け戦を味わった斎藤の言葉がどこか切なげに響いた。
「そうですね、淋しい気もしますけど……でも、私には懐かしいです」
「そうだな、確かに便利だ。西洋の時計は季節によって時間が変わらないそうだな。仕事をするには役立ちそうだ」
「はい、お仕事は時間が大切ですものね」
斎藤は警察に入り、その能力を買われて特殊な任務を請け負うだろう。
仕事で戻らない日が多くなるかもしれない。
急に思い出した現実で気持ちが塞ぎそうになるのを、夢主は時計の振り子に目を戻し心のもやを振り払った。
……斎藤さんは、大切なお仕事をするんだから……
「ねぇ、一さん!全部のお部屋を見てきます!」
「あぁ、俺も行く」
二人で家の中を見て回ろうと、狭い家でも構わず夢主は冒険気分に胸を躍らせた。
次々見つかる小さな発見に夢主の表情はころころと変わり、そばで見守る斎藤の顔は穏やかだ。
「これ、一さんの……」
「あぁ、沖田君の道場を突き止めて出る時、置いて行ったのさ。仕事の時には持って行くがな、正直帽子は邪魔なんだよ」
「凄く立派です……それにこれ……」
「あぁ、それは洋式の衣紋掛けだ。洋服を掛ける物さ」
「ハンガー……わかります!そっか、洋服と一緒にハンガーも……」
「フッ、どうやらお前には懐かしい品のようだな。その上着を掛けておいてくれ」
「はいっ!」
玄関を上がって右に曲がった廊下は縁側になっている。木の雨戸を開ければ庭が見渡せる開放的な空間だ。
荷物を置いた斎藤は早速雨戸を開け放ち、室内に明かりを取り入れた。
明るくなって良く見えるようになった家の中、夢主は辺りをぐるりと見回してある事柄に気が付き、玄関に戻って立ってみた。
「何にも見えない……」
玄関扉は木製の横開き戸、外からの視線を遮ってくれる。
扉を開き中に入っても、四角い居住空間から凸形に飛び出た玄関構造のおかげで、すぐに室内は見渡せない。
二階への階段は奥に進めば見つかるが、この時点で夢主にはその場所は分からなかった。
先程の庭といい、突然の訪問者に全ては晒さないという、斎藤らしい家の造りになっていた。
「凄いお家……」
「気に入ったようだな」
「もちろんです……こんなお家、本当にいいんですか……凄く立派な……」
「あぁ、用意してくれると聞いた時は俺も驚いたがな、ありがたくご厚意に甘えるとするさ、今回はな」
「はいっ!とても嬉しいです……白い壁と深い色の木が可愛いくて、それになんだか……懐かしい……」
「妻が新しい物に目が無いと伝えておいたのさ。少しだが洋式の建築を取り入れてくれている」
「そうなんですか!凄く嬉しいです、新しいのに懐かしくて……暮らしやすそう」
「たいして広くは無いが、風呂もある。硝子も使われているし、他にも面白い物が見つかると思うぞ」
「お風呂もあるんですね!硝子も……お家、充分広いですよ。本当に私には良すぎるお家です……一さんのおかげですね」
心から喜び感謝している夢主の様子に、斎藤の男心がくすぐられた。
得意になった斎藤が思い出したように告げる。
「フッ……そうだ、一つ凄い物があるぞ」
「何でしょうか……」
「西洋時計だ」
「時計……っ!」
驚く顔を満足げに見て頷き、斎藤は夢主を時計のある客間へ案内した。
部屋に入ると、柱に取り付けられた小さな時計が懸命に振り子を動かし、コチコチと夢主には懐かしい音を響かせていた。
「凄い……本当に時計だ……」
感激して両手で口を覆う夢主を斎藤も嬉しそうに眺めた。
「西暦、西洋時間、次々に異国の文化が入ってくるな」
異国に振り回される形で始まった先の戦いで、負け戦を味わった斎藤の言葉がどこか切なげに響いた。
「そうですね、淋しい気もしますけど……でも、私には懐かしいです」
「そうだな、確かに便利だ。西洋の時計は季節によって時間が変わらないそうだな。仕事をするには役立ちそうだ」
「はい、お仕事は時間が大切ですものね」
斎藤は警察に入り、その能力を買われて特殊な任務を請け負うだろう。
仕事で戻らない日が多くなるかもしれない。
急に思い出した現実で気持ちが塞ぎそうになるのを、夢主は時計の振り子に目を戻し心のもやを振り払った。
……斎藤さんは、大切なお仕事をするんだから……
「ねぇ、一さん!全部のお部屋を見てきます!」
「あぁ、俺も行く」
二人で家の中を見て回ろうと、狭い家でも構わず夢主は冒険気分に胸を躍らせた。
次々見つかる小さな発見に夢主の表情はころころと変わり、そばで見守る斎藤の顔は穏やかだ。