1.コトハジメ
夢主名前設定
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朝餉の後、沖田の屋敷から出る為、夢主の少ない荷物を纏めた。
運ぶ物の数は少ないが、比古が京から運んでくれた半纏などが嵩張り荷物は大きい。
「荷物は俺が持ってやる。変わりに俺の上着をお前が持て、目立って仕方が無い」
「わかりました、ありがとうございます」
自分で運ぶには荷物が大きすぎると夢主は素直に応じた。
斎藤に荷物を抱えてもらい、夢主は斎藤の上着が皺にならないよう、綺麗に畳んで自分の腕に掛けた。
「総司さん、本当に遊びに来て下さいね」
「えぇ、色々と生活が落ち着くまで大変でしょうから、暫くしたら誘いに来て下さい、ぜひお伺いしますよ!」
「はいっ」
「そうかしこまらなくとも、目と鼻の先だぞ」
「えっ、そうなんですか」
斎藤の言葉に二人は声を揃えて顔を上げた。
「あぁ。来る時に辺りを見せてもらったんだが、ここの裏口があるだろう。正面の門から歩けば確かに遠いが、裏からはすぐだ。なんなら今から見てみろ。君にはこれからも……夢主を頼むかもしれない」
「斎藤さん……」
「俺は忙しくなりそうなんでな」
婚姻を機に、愛情を抱き、かつて求婚した自分を遠ざける事だって出来るのに、傍にいる事を認めてくれるのか。
沖田は知らずのうちに「参ったなぁ」と頭を掻いて笑っていた。
敷地の裏に回ると確かに小さな木戸がある。普段は全く人の出入りが無い場所だ。夢主と沖田も住み始めて裏口の存在は確認したが、使ったことは無かった。
外に出てみると、斎藤の話し通りすぐに木塀が見えた。少し行くと見える小さな扉は、隣の家の勝手口だろうか。
夢主が家を見上げると、斎藤が立ち止まった。
「ここだ」
「ここなんですか、凄い!本当に近いですね!」
「味噌汁の冷めない距離どころか……斎藤さん、夢主ちゃんに呼び子を渡してあげてくださいよ。もし斎藤さんがいない時に身の危険が迫ったら……僕が駆けつけられます」
そこまで迷惑を掛けるわけには……夢主は断ろうとするが、斎藤が先に頷く。
「君には厄介になりっぱなしだな」
「いいんですよ、僕の出来ないことを貴方がしてくれるんです。だから僕には僕の出来ることを」
細い裏路地で男同士の約束が一つ交わされた。
沖田は自分の中の義を、誠の心を斎藤に託した。
斎藤は思う存分に正義を貫けるよう、自らの不在時の守りとなってくれるよう己の一番大切な存在を託した。
沖田と別れた夢主と斎藤は、細い路地をそのまま抜けて正面の門へ回り、門の鍵を開けた。
「鍵をつけてもらった。門の鍵と、家の鍵、勝手口は寝る時に中からかんぬきをかけろ」
……まぁ本気の侵入者がいれば呆気ないだろうが……
「はい、戸締りですね」
小さな門をくぐると、玄関脇の押し戸に遮られて一見客には庭さえも覗けない造りになっている。
斎藤が玄関扉を開きながら夢主の顔を見ると、きらきらと目を輝かせていた。
二人の新居と、そこで始まる生活が嬉しくて堪らないと顔に表れており、斎藤も思わず笑ってしまった。
「フッ……鍵は後で渡す。それから」
戸を開いて先に夢主を中に通すと、待てないとばかりに玄関から身を乗り出して廊下の先を覗いた。
「凄ぉ……ぃ」
「中に入る時はくれぐれも気をつけろよ。辺りを確認してから家に入れ」
「わかりました……」
気もそぞろな返事に斎藤がやれやれと短く息を吐き、夢主の背後を通り越して荷物を運び入れると、驚きの声が短く響いた。
運ぶ物の数は少ないが、比古が京から運んでくれた半纏などが嵩張り荷物は大きい。
「荷物は俺が持ってやる。変わりに俺の上着をお前が持て、目立って仕方が無い」
「わかりました、ありがとうございます」
自分で運ぶには荷物が大きすぎると夢主は素直に応じた。
斎藤に荷物を抱えてもらい、夢主は斎藤の上着が皺にならないよう、綺麗に畳んで自分の腕に掛けた。
「総司さん、本当に遊びに来て下さいね」
「えぇ、色々と生活が落ち着くまで大変でしょうから、暫くしたら誘いに来て下さい、ぜひお伺いしますよ!」
「はいっ」
「そうかしこまらなくとも、目と鼻の先だぞ」
「えっ、そうなんですか」
斎藤の言葉に二人は声を揃えて顔を上げた。
「あぁ。来る時に辺りを見せてもらったんだが、ここの裏口があるだろう。正面の門から歩けば確かに遠いが、裏からはすぐだ。なんなら今から見てみろ。君にはこれからも……夢主を頼むかもしれない」
「斎藤さん……」
「俺は忙しくなりそうなんでな」
婚姻を機に、愛情を抱き、かつて求婚した自分を遠ざける事だって出来るのに、傍にいる事を認めてくれるのか。
沖田は知らずのうちに「参ったなぁ」と頭を掻いて笑っていた。
敷地の裏に回ると確かに小さな木戸がある。普段は全く人の出入りが無い場所だ。夢主と沖田も住み始めて裏口の存在は確認したが、使ったことは無かった。
外に出てみると、斎藤の話し通りすぐに木塀が見えた。少し行くと見える小さな扉は、隣の家の勝手口だろうか。
夢主が家を見上げると、斎藤が立ち止まった。
「ここだ」
「ここなんですか、凄い!本当に近いですね!」
「味噌汁の冷めない距離どころか……斎藤さん、夢主ちゃんに呼び子を渡してあげてくださいよ。もし斎藤さんがいない時に身の危険が迫ったら……僕が駆けつけられます」
そこまで迷惑を掛けるわけには……夢主は断ろうとするが、斎藤が先に頷く。
「君には厄介になりっぱなしだな」
「いいんですよ、僕の出来ないことを貴方がしてくれるんです。だから僕には僕の出来ることを」
細い裏路地で男同士の約束が一つ交わされた。
沖田は自分の中の義を、誠の心を斎藤に託した。
斎藤は思う存分に正義を貫けるよう、自らの不在時の守りとなってくれるよう己の一番大切な存在を託した。
沖田と別れた夢主と斎藤は、細い路地をそのまま抜けて正面の門へ回り、門の鍵を開けた。
「鍵をつけてもらった。門の鍵と、家の鍵、勝手口は寝る時に中からかんぬきをかけろ」
……まぁ本気の侵入者がいれば呆気ないだろうが……
「はい、戸締りですね」
小さな門をくぐると、玄関脇の押し戸に遮られて一見客には庭さえも覗けない造りになっている。
斎藤が玄関扉を開きながら夢主の顔を見ると、きらきらと目を輝かせていた。
二人の新居と、そこで始まる生活が嬉しくて堪らないと顔に表れており、斎藤も思わず笑ってしまった。
「フッ……鍵は後で渡す。それから」
戸を開いて先に夢主を中に通すと、待てないとばかりに玄関から身を乗り出して廊下の先を覗いた。
「凄ぉ……ぃ」
「中に入る時はくれぐれも気をつけろよ。辺りを確認してから家に入れ」
「わかりました……」
気もそぞろな返事に斎藤がやれやれと短く息を吐き、夢主の背後を通り越して荷物を運び入れると、驚きの声が短く響いた。