7.蛍火
夢主名前設定
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「でもあんな時間に総司さんはどこに出かけたんでしょうね」
「川沿いか」
「はい。お心当たりでも」
「確かに夜、家にいない時もあるな。フン、そのうち分かるだろう。俺が話すまでも無い。ククッ、そうか……意外だな」
警察署からの帰り道、沖田の道場を通り抜けるが屋敷の主が留守である時もあった。
通う女がいる訳でもなく行き先は分からぬが、大の大人を相手に詮索する必要も無かろうと放っておいたのだ。
その理由がようやく分かり、斎藤は一人にんまりと口元を緩めていた。
「えっ、一さんだけ納得してずるいです」
「俺が話すには野暮な話だ」
「余計気になるじゃありませんか……」
「そう拗ねるなよ、今夜は早く戻れるはずだ。晩飯を頼むぞ」
「はい……」
わざとなのか無意識か、いつもより甘い声で帰りを告げる斎藤。
これでは頷かざるを得ないではないかと、夢主は拗ねるが素直に答えた。
斎藤には心当たりがあるようだが、夢主には沖田の行き先が全く見当もつかない。
しかしこれ以上訊ねても教えてもらえないと悟った夢主は、上目で強い視線を送り、ムスっと口を尖らせた。
すると斎藤は良く分かっているじゃないかと夢主の頭に手を置いた。
「フッ、いい返事だ」
「子供みたいに扱わないでください」
頭を大きな手で鷲掴みにされて、どこかで喜ぶ自分を隠して拗ねたまま睨むが、斎藤は気にせず二ッと口元を緩めて手を離した。
立ち上がって玄関に向かう夫を夢主は追いかけた。
白いシャツが背中をより大きく見せているのだろうか、狭い廊下が際立たせているのだろうか。目の前の背中がとても大きく見える。
制服の上着を羽織る姿を見守り、革靴を履いて伸ばす手に制帽を渡す。警官に変わる瞬間だ。
「お気をつけて……晩ご飯、ちゃんと作りますから」
「あぁ」
もう機嫌は直しましたと顔に書かれた妻を、斎藤はククッと喉で笑って家を出た。
「一さんっ!」
夢主は何かを思い出して、弾けたように家を飛び出した。
斎藤は元々歩くのが速いうえに一歩が大きい。夢主は歩幅の違いを埋める為、僅かな距離でも走って追いかけなければならない。
だがすぐに気付いた斎藤は立ち止まり、振り返った。
「一さん!」
「何だ。忘れ物はしていないはずだが」
「すみませんっ……あの、今日はお帰りが早いと言うので……」
「あぁ」
「蛍を……見に行きませんか」
「蛍?」
「はぃ。夕べ総司さんを見た場所で蛍を見た気がしたんです」
「蛍か。そうだな、そんな季節か。蛍の季節は短い。いいだろう、帰ったら一緒に行くか」
「はいっ!楽しみにしてますねっ!」
家に目を向けて返事をした斎藤、夢主が声を弾ませるとようやく目を合わせた。
静かな朝だが、周囲に異変が無いことを瞬時に確認したのだ。
「フンッ、じゃあな。早く家に戻れよ、開けっ放しなんだろう」
「あっ、すぐに戻ります!すみません……失礼します」
ふふっ……。目が合い自然と微笑む二人、合図のように揃って小さく顎を引き、背を向けた。
「蛍、京でも見てないから嬉しいな……やった……」
夢主は浮かれて独り言を漏らし、開いたままの門をくぐった。
「川沿いか」
「はい。お心当たりでも」
「確かに夜、家にいない時もあるな。フン、そのうち分かるだろう。俺が話すまでも無い。ククッ、そうか……意外だな」
警察署からの帰り道、沖田の道場を通り抜けるが屋敷の主が留守である時もあった。
通う女がいる訳でもなく行き先は分からぬが、大の大人を相手に詮索する必要も無かろうと放っておいたのだ。
その理由がようやく分かり、斎藤は一人にんまりと口元を緩めていた。
「えっ、一さんだけ納得してずるいです」
「俺が話すには野暮な話だ」
「余計気になるじゃありませんか……」
「そう拗ねるなよ、今夜は早く戻れるはずだ。晩飯を頼むぞ」
「はい……」
わざとなのか無意識か、いつもより甘い声で帰りを告げる斎藤。
これでは頷かざるを得ないではないかと、夢主は拗ねるが素直に答えた。
斎藤には心当たりがあるようだが、夢主には沖田の行き先が全く見当もつかない。
しかしこれ以上訊ねても教えてもらえないと悟った夢主は、上目で強い視線を送り、ムスっと口を尖らせた。
すると斎藤は良く分かっているじゃないかと夢主の頭に手を置いた。
「フッ、いい返事だ」
「子供みたいに扱わないでください」
頭を大きな手で鷲掴みにされて、どこかで喜ぶ自分を隠して拗ねたまま睨むが、斎藤は気にせず二ッと口元を緩めて手を離した。
立ち上がって玄関に向かう夫を夢主は追いかけた。
白いシャツが背中をより大きく見せているのだろうか、狭い廊下が際立たせているのだろうか。目の前の背中がとても大きく見える。
制服の上着を羽織る姿を見守り、革靴を履いて伸ばす手に制帽を渡す。警官に変わる瞬間だ。
「お気をつけて……晩ご飯、ちゃんと作りますから」
「あぁ」
もう機嫌は直しましたと顔に書かれた妻を、斎藤はククッと喉で笑って家を出た。
「一さんっ!」
夢主は何かを思い出して、弾けたように家を飛び出した。
斎藤は元々歩くのが速いうえに一歩が大きい。夢主は歩幅の違いを埋める為、僅かな距離でも走って追いかけなければならない。
だがすぐに気付いた斎藤は立ち止まり、振り返った。
「一さん!」
「何だ。忘れ物はしていないはずだが」
「すみませんっ……あの、今日はお帰りが早いと言うので……」
「あぁ」
「蛍を……見に行きませんか」
「蛍?」
「はぃ。夕べ総司さんを見た場所で蛍を見た気がしたんです」
「蛍か。そうだな、そんな季節か。蛍の季節は短い。いいだろう、帰ったら一緒に行くか」
「はいっ!楽しみにしてますねっ!」
家に目を向けて返事をした斎藤、夢主が声を弾ませるとようやく目を合わせた。
静かな朝だが、周囲に異変が無いことを瞬時に確認したのだ。
「フンッ、じゃあな。早く家に戻れよ、開けっ放しなんだろう」
「あっ、すぐに戻ります!すみません……失礼します」
ふふっ……。目が合い自然と微笑む二人、合図のように揃って小さく顎を引き、背を向けた。
「蛍、京でも見てないから嬉しいな……やった……」
夢主は浮かれて独り言を漏らし、開いたままの門をくぐった。