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夢主名前設定
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「どうしたんですか」
「いえ、その、ちょっと恥ずかしいから……」
確かに赤ちゃんがおっぱいを飲む姿は可愛い。見ていたい気持ちも分かる。
人前で乳をあげる母親も珍しくない時代だ。
しかし夢主の感覚はこの時代に染まり切れずにいた。
夢主が真っ赤な顔で目を逸らすさまを見て、"恥ずかしさ"を感じた宗次郎はふんふんと頷いた。
「へぇ、恥ずかしいんですか。では僕は席を外しますね。井上さんは見るんですか」
僕は赤の他人だから見られるのが恥ずかしくて、いつも傍にいる井上さんは良いのだろうか。
単純な疑問を真に受けた沖田は、宗次郎を睨んで否定した。
顔の赤さは夢主に劣らない。
「み、見ませんよ!ちゃんと退席しますから!」
「ふぅん、何で赤くなっているんですか、何だか厭らしいですね」
「なっ」
「お腹が空いた赤ちゃんを変な目で見てはいけませんよ。夢主さんが嫌なら仕方ありませんし、また来ますね」
傍で志々雄と由美を見ていたから、男女の体の関わりは知っている。肌を晒す羞恥、人によっては痴態であることも。
だけど赤ちゃんは別でしょうと沖田を咎めた宗次郎は、笑顔で「では」と告げると姿を消してしまった。
「行っちゃいました……」
「あ……えぇ、あの、僕も席を外しますから、ゆっくり過ごしてくださいね」
「ありがとうございます、総司さんのお家なのにすみません」
怒りと恥じらいで真っ赤だった沖田も落ち着きを取り戻す。
気にしないでと笑顔を残し、沖田も部屋を立ち去った。
「ふぅ……びっくりしたぁ。宗次郎って純粋……本当は優しい……宗次郎」
短い時間だったが、自分なりに夢主や沖田を気遣って振る舞っていた。修羅と呼ばれた宗次郎の優しい一面。
それを感じた夢主は勉に優しく微笑みかけた。
勉が腹を満たして眠りに就き、夢主もうとうとと船を漕ぎ出した。
陽が動いてもまだ縁側を照らしている。もう半刻もすればその陽も行ってしまうだろう。
今はまだ温かな庭先に、再び軽い着地音が鳴った。
「ん……」
「寝ていましたか、ごめんなさい」
「いえ、ちょっとうたたねしちゃっただけなので……て、宗次郎!戻ってきたの」
次の旅へ赴いたと思っていた宗次郎が、目の前で愛らしく笑んで、会釈のように首を傾げた。
綺麗な髪が楽しげに揺れる。
「はい、もうおっぱいも終わった頃だと思いまして。これ、一緒に食べてくれますか」
「お団子……」
宗次郎が差し出した包みには団子が入っていた。
懐かしい、二人で食べたあの茶屋の団子だ。
「約束、覚えていますか」
「もちろんです……宗次郎が買ってきてくれたの」
「僕じゃなければ誰なんですか」
「いぇ……本当にありがとうございます。一緒に、頂きます」
宗次郎が誰かの為に。
驚いた夢主が喜びを感じて顔を綻ばせると、にこりと柔らかな表情を返した宗次郎が、屋敷の廊下を振り返った。
「井上さんもどうぞ、沢山ありますよ」
来客を察してやって来た沖田に、宗次郎はどうぞと声を掛けた。
団子は沖田の分もある。ただ沢山買ってきただけなのだが。
宗次郎の思考が理解出来ぬ沖田は訝しみながらも、どうやら好意から出た言葉だと、素直に団子を受け取った。
「約束果たせて嬉しいです。でもこれで終わりじゃありませんよね、約束」
「ふふっ、もちろんです。いつでもお待ちしていますから、旅に疲れたら立ち寄ってくださいね。次帰って来た時は私がお団子用意しますから」
「走っても疲れませんけどね、でも嬉しいや、あははっ」
帰る場所、かぁ。
ぱくりと団子を咥えた宗次郎は、心に浮かんだ言葉を噛みしめた。
家のように馴染んでいた志々雄のアジトが消えて、もう戻る場所はないと思っていた。
思いを噛みしめて団子を頬張る宗次郎の、にこにこと和やかな表情。
夢主と沖田は目を合わせて微笑んだ。
「いえ、その、ちょっと恥ずかしいから……」
確かに赤ちゃんがおっぱいを飲む姿は可愛い。見ていたい気持ちも分かる。
人前で乳をあげる母親も珍しくない時代だ。
しかし夢主の感覚はこの時代に染まり切れずにいた。
夢主が真っ赤な顔で目を逸らすさまを見て、"恥ずかしさ"を感じた宗次郎はふんふんと頷いた。
「へぇ、恥ずかしいんですか。では僕は席を外しますね。井上さんは見るんですか」
僕は赤の他人だから見られるのが恥ずかしくて、いつも傍にいる井上さんは良いのだろうか。
単純な疑問を真に受けた沖田は、宗次郎を睨んで否定した。
顔の赤さは夢主に劣らない。
「み、見ませんよ!ちゃんと退席しますから!」
「ふぅん、何で赤くなっているんですか、何だか厭らしいですね」
「なっ」
「お腹が空いた赤ちゃんを変な目で見てはいけませんよ。夢主さんが嫌なら仕方ありませんし、また来ますね」
傍で志々雄と由美を見ていたから、男女の体の関わりは知っている。肌を晒す羞恥、人によっては痴態であることも。
だけど赤ちゃんは別でしょうと沖田を咎めた宗次郎は、笑顔で「では」と告げると姿を消してしまった。
「行っちゃいました……」
「あ……えぇ、あの、僕も席を外しますから、ゆっくり過ごしてくださいね」
「ありがとうございます、総司さんのお家なのにすみません」
怒りと恥じらいで真っ赤だった沖田も落ち着きを取り戻す。
気にしないでと笑顔を残し、沖田も部屋を立ち去った。
「ふぅ……びっくりしたぁ。宗次郎って純粋……本当は優しい……宗次郎」
短い時間だったが、自分なりに夢主や沖田を気遣って振る舞っていた。修羅と呼ばれた宗次郎の優しい一面。
それを感じた夢主は勉に優しく微笑みかけた。
勉が腹を満たして眠りに就き、夢主もうとうとと船を漕ぎ出した。
陽が動いてもまだ縁側を照らしている。もう半刻もすればその陽も行ってしまうだろう。
今はまだ温かな庭先に、再び軽い着地音が鳴った。
「ん……」
「寝ていましたか、ごめんなさい」
「いえ、ちょっとうたたねしちゃっただけなので……て、宗次郎!戻ってきたの」
次の旅へ赴いたと思っていた宗次郎が、目の前で愛らしく笑んで、会釈のように首を傾げた。
綺麗な髪が楽しげに揺れる。
「はい、もうおっぱいも終わった頃だと思いまして。これ、一緒に食べてくれますか」
「お団子……」
宗次郎が差し出した包みには団子が入っていた。
懐かしい、二人で食べたあの茶屋の団子だ。
「約束、覚えていますか」
「もちろんです……宗次郎が買ってきてくれたの」
「僕じゃなければ誰なんですか」
「いぇ……本当にありがとうございます。一緒に、頂きます」
宗次郎が誰かの為に。
驚いた夢主が喜びを感じて顔を綻ばせると、にこりと柔らかな表情を返した宗次郎が、屋敷の廊下を振り返った。
「井上さんもどうぞ、沢山ありますよ」
来客を察してやって来た沖田に、宗次郎はどうぞと声を掛けた。
団子は沖田の分もある。ただ沢山買ってきただけなのだが。
宗次郎の思考が理解出来ぬ沖田は訝しみながらも、どうやら好意から出た言葉だと、素直に団子を受け取った。
「約束果たせて嬉しいです。でもこれで終わりじゃありませんよね、約束」
「ふふっ、もちろんです。いつでもお待ちしていますから、旅に疲れたら立ち寄ってくださいね。次帰って来た時は私がお団子用意しますから」
「走っても疲れませんけどね、でも嬉しいや、あははっ」
帰る場所、かぁ。
ぱくりと団子を咥えた宗次郎は、心に浮かんだ言葉を噛みしめた。
家のように馴染んでいた志々雄のアジトが消えて、もう戻る場所はないと思っていた。
思いを噛みしめて団子を頬張る宗次郎の、にこにこと和やかな表情。
夢主と沖田は目を合わせて微笑んだ。