7.蛍火
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……僕はもっと、もっともっと強くならなくちゃ……
走り去った子供は町を抜けて、顔をかする葉を気にもせず木々の中を走っていた。
……言ってたんだ、強い者は弱い者を糧とする、あのお姉さんは弱くても生きていられる、それはきっと強い人が糧としてそばに置いているから、あの人を喰んでいるからだ……
……だから生きていられる……弱くても……
団子屋を出てそれほど時間は経っていない。
だが駿足の子供は既に随分と離れた場所にいた。
……僕もいつかあんな優しいお姉さんをそばに……糧に出来るように……優しい……お姉さんを……
子供は目的の場所に辿り着き、使いを言い付けた人物の前で立ち止まった。
「志々雄さん!」
「おぅ、宗次郎」
包帯に全身を巻かれた男、志々雄真実がにやりと笑って戻った男の子の名を呼び、宗次郎と呼ばれた子は表情を崩した。
「ただいま戻りました!」
「遅かったな」
「遅くなってすみません、僕、お団子をご馳走になったんです!」
荷物を受け取った志々雄は中身を確かめながら、楽しそうに話す宗次郎の顔にチラリと目をやった。
「ほぅ、そいつは……町で何かあったのか」
「はい!綺麗なお姉さんがお団子を半分くれました」
女と団子、志々雄は心の中で呟いて笑った。幼い宗次郎に似合わない女の話に、いかにも好きそうな団子の話とは。
優しくされて舞い上がっているのだろう。
母親が死んでから辛い目に遭ってきたのだ、志々雄にも宗次郎が年上の女に気が惹かれたで理由が容易く理解できる。
だが理由が分かろうがそれまでだ。
「ははっ、全部奪ってやりゃあ良かったんだ」
「でもお姉さんには強い人達がついているって言ってたから、そんな事したら僕殺されちゃいます」
「じゃあもっと強くならねぇとだな」
「はい!僕、もっともっと強くなります」
たかだか団子、奪って騒ぎになるくらいなら金を出して食ってくりゃあいい。
何もかも奪うばかりではない志々雄は冗談半分に揶揄うが、宗次郎はいつもの笑顔で真面目に返事をした。
自分の傍から離れず真っ直ぐついてくる、ただならぬ力を秘めた少年に、志々雄はフッと細めた目を向けた。
「あぁそれでいい、お前はもっと強くなれる。そして欲しい物は全て手に入れればいい」
「はっ……はい」
宗次郎は目を輝かせて大きく頷いた。
木の葉の隙間をぬって差し込む日差しが、その輝かしい顔を明るく照らしている。教えられた言葉を素直に受け取る姿がなんとも子供らしい。
自分を認めてくれる目の前の大人の頷きに満足し、宗次郎は買出し以外に言い付かっていたもう一つの仕事を思い出して報告した。
「それから調べた商家、二軒は今は名ばかりで何も蓄えはないようです。ただし残る一軒は今も明治政府からの注文を独占して、湯水のように金銭が集まっているようです」
「そうか。仕事が見つかったな。今度の仕事が成功したらお前にも小遣いをやらねぇとな」
「えっ、いいんですか!」
「あぁ、それで団子でも何でも食ってくりゃあいい」
「ありがとうございます!わぁ……僕頑張りますね!」
「あぁ。頼りにしてるぜ」
……お前は俺が立派な修羅に育ててやる……
志々雄は小さく忠実な姿に、愛弟子のような、歳の離れた弟のような、はたまた自分の子のような、どれとも例え難いおかしな錯覚を得ていた。
ただ自分を裏切らない存在、拾い子の宗次郎に対し、それだけは確かに感じていた。
走り去った子供は町を抜けて、顔をかする葉を気にもせず木々の中を走っていた。
……言ってたんだ、強い者は弱い者を糧とする、あのお姉さんは弱くても生きていられる、それはきっと強い人が糧としてそばに置いているから、あの人を喰んでいるからだ……
……だから生きていられる……弱くても……
団子屋を出てそれほど時間は経っていない。
だが駿足の子供は既に随分と離れた場所にいた。
……僕もいつかあんな優しいお姉さんをそばに……糧に出来るように……優しい……お姉さんを……
子供は目的の場所に辿り着き、使いを言い付けた人物の前で立ち止まった。
「志々雄さん!」
「おぅ、宗次郎」
包帯に全身を巻かれた男、志々雄真実がにやりと笑って戻った男の子の名を呼び、宗次郎と呼ばれた子は表情を崩した。
「ただいま戻りました!」
「遅かったな」
「遅くなってすみません、僕、お団子をご馳走になったんです!」
荷物を受け取った志々雄は中身を確かめながら、楽しそうに話す宗次郎の顔にチラリと目をやった。
「ほぅ、そいつは……町で何かあったのか」
「はい!綺麗なお姉さんがお団子を半分くれました」
女と団子、志々雄は心の中で呟いて笑った。幼い宗次郎に似合わない女の話に、いかにも好きそうな団子の話とは。
優しくされて舞い上がっているのだろう。
母親が死んでから辛い目に遭ってきたのだ、志々雄にも宗次郎が年上の女に気が惹かれたで理由が容易く理解できる。
だが理由が分かろうがそれまでだ。
「ははっ、全部奪ってやりゃあ良かったんだ」
「でもお姉さんには強い人達がついているって言ってたから、そんな事したら僕殺されちゃいます」
「じゃあもっと強くならねぇとだな」
「はい!僕、もっともっと強くなります」
たかだか団子、奪って騒ぎになるくらいなら金を出して食ってくりゃあいい。
何もかも奪うばかりではない志々雄は冗談半分に揶揄うが、宗次郎はいつもの笑顔で真面目に返事をした。
自分の傍から離れず真っ直ぐついてくる、ただならぬ力を秘めた少年に、志々雄はフッと細めた目を向けた。
「あぁそれでいい、お前はもっと強くなれる。そして欲しい物は全て手に入れればいい」
「はっ……はい」
宗次郎は目を輝かせて大きく頷いた。
木の葉の隙間をぬって差し込む日差しが、その輝かしい顔を明るく照らしている。教えられた言葉を素直に受け取る姿がなんとも子供らしい。
自分を認めてくれる目の前の大人の頷きに満足し、宗次郎は買出し以外に言い付かっていたもう一つの仕事を思い出して報告した。
「それから調べた商家、二軒は今は名ばかりで何も蓄えはないようです。ただし残る一軒は今も明治政府からの注文を独占して、湯水のように金銭が集まっているようです」
「そうか。仕事が見つかったな。今度の仕事が成功したらお前にも小遣いをやらねぇとな」
「えっ、いいんですか!」
「あぁ、それで団子でも何でも食ってくりゃあいい」
「ありがとうございます!わぁ……僕頑張りますね!」
「あぁ。頼りにしてるぜ」
……お前は俺が立派な修羅に育ててやる……
志々雄は小さく忠実な姿に、愛弟子のような、歳の離れた弟のような、はたまた自分の子のような、どれとも例え難いおかしな錯覚を得ていた。
ただ自分を裏切らない存在、拾い子の宗次郎に対し、それだけは確かに感じていた。