エピローグ完
夢主名前設定
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悪一文字が情けなく揺れて消えていく。
肩を落として去って行く青年を見送り、沖田は屋敷の中へ戻った。
申し訳ない気もするが仕方がない。
部屋で息をひそめる夢主と斎藤のもとへ向かい、無事終わりましたと報告をした。
「これで良かったですか」
「悪いな、面倒な役回りをさせた」
「いえいえ、あの青年は揶揄うと面白いですから」
「フッ、相楽左之助も嫌な男に目をつけられたな」
「あははっ、貴方のことですか」
「君だろ」
「ぁあ……あの、左之助さんは……」
肩を落として去って行った若者を思えば軽口など叩けない。
いつもの調子で言葉の応酬を繰り返す二人に、夢主は淋しげな顔を見せた。
「んー、しょげていましたけどね、大丈夫でしょう。男って単純ですからすぐに元気になりますよ」
「そうですか……大丈夫かな」
「そうそう伝言です、何かあれば力になると左之助さんから」
「左之助さんが……」
あの男に人に貸す力があるのか、口先だけの甘言だぞと、真に受ける夢主に斎藤は冷静な視線を送った。
「ま、気持ちだけはってことでしょう」
「心配してくださるのに追い返しちゃって何だか申し訳ないです……」
しゅんとする夢主。
元はと言えば俺のせいかと、沈んだ夢主の顔を見た斎藤はおどけるように肩を軽くすくめた。
「若造にはこんな経験も成長の糧になるさ」
「そうでしょうか……」
「時には我慢も必要だろ、お前はあいつに世話されたいのか」
「ち、違います!私は一さんと一緒に、それに総司さんや、これからは栄次君も」
「それに腹の子も、か」
「はっ……はぃ」
二ッと笑う斎藤の瞳はいつもより柔らかく輝いていた。
全て包み込んでくれるような優しい光、父になる斎藤だから湛えることが出来る光なのかもしれない。
息を呑んだ夢主を見て、斎藤はフッと息を漏らして目を逸らした。
「さて、帰るか」
「栄次君の顔を見て行ってくださいね」
「分かっている」
左之助と違い、なかなか大人の輪には入って来ない。
今も本当は沖田と共にこの場へ来たかったはず。
遠慮がちな少年に笑顔を。夢主と斎藤は自ら足を運ぶことにした。
「もうすぐ、みんなが心から笑顔になれますね。少し淋しい気もしますが……」
夢主の呟きに斎藤が首を傾げる。
「ふふっ、なんでもありません」
もう一波乱起こるが、大きな波を皆で乗り越える。
そしてやって来るのは、追い返してしまった左之助や剣心も心から笑える日。
抱えてきたものを乗り越えて、成長した皆はそれぞれが選んだ道を歩き始める。
とても素晴らしくて、ちょっとだけ淋しい未来。
でも新しい家族も増えるのだ。
別れても再会し、新しい絆が増えていく。
「行きましょう」
「あぁ」
淋しいのは少しだけで、きっと笑顔溢れる日々が待っている。
夢主は斎藤の腕を取るように寄り添い、二人は互いに微笑んでから歩き始めた。
茜色に染まった空、東の空には大きな月が既に姿を見せていた。
夜は月が、昼間はお日様が、二人や周りの人々を温かく見守ってくれるだろう。
明々と笑顔が絶えぬ優しい日々を。
肩を落として去って行く青年を見送り、沖田は屋敷の中へ戻った。
申し訳ない気もするが仕方がない。
部屋で息をひそめる夢主と斎藤のもとへ向かい、無事終わりましたと報告をした。
「これで良かったですか」
「悪いな、面倒な役回りをさせた」
「いえいえ、あの青年は揶揄うと面白いですから」
「フッ、相楽左之助も嫌な男に目をつけられたな」
「あははっ、貴方のことですか」
「君だろ」
「ぁあ……あの、左之助さんは……」
肩を落として去って行った若者を思えば軽口など叩けない。
いつもの調子で言葉の応酬を繰り返す二人に、夢主は淋しげな顔を見せた。
「んー、しょげていましたけどね、大丈夫でしょう。男って単純ですからすぐに元気になりますよ」
「そうですか……大丈夫かな」
「そうそう伝言です、何かあれば力になると左之助さんから」
「左之助さんが……」
あの男に人に貸す力があるのか、口先だけの甘言だぞと、真に受ける夢主に斎藤は冷静な視線を送った。
「ま、気持ちだけはってことでしょう」
「心配してくださるのに追い返しちゃって何だか申し訳ないです……」
しゅんとする夢主。
元はと言えば俺のせいかと、沈んだ夢主の顔を見た斎藤はおどけるように肩を軽くすくめた。
「若造にはこんな経験も成長の糧になるさ」
「そうでしょうか……」
「時には我慢も必要だろ、お前はあいつに世話されたいのか」
「ち、違います!私は一さんと一緒に、それに総司さんや、これからは栄次君も」
「それに腹の子も、か」
「はっ……はぃ」
二ッと笑う斎藤の瞳はいつもより柔らかく輝いていた。
全て包み込んでくれるような優しい光、父になる斎藤だから湛えることが出来る光なのかもしれない。
息を呑んだ夢主を見て、斎藤はフッと息を漏らして目を逸らした。
「さて、帰るか」
「栄次君の顔を見て行ってくださいね」
「分かっている」
左之助と違い、なかなか大人の輪には入って来ない。
今も本当は沖田と共にこの場へ来たかったはず。
遠慮がちな少年に笑顔を。夢主と斎藤は自ら足を運ぶことにした。
「もうすぐ、みんなが心から笑顔になれますね。少し淋しい気もしますが……」
夢主の呟きに斎藤が首を傾げる。
「ふふっ、なんでもありません」
もう一波乱起こるが、大きな波を皆で乗り越える。
そしてやって来るのは、追い返してしまった左之助や剣心も心から笑える日。
抱えてきたものを乗り越えて、成長した皆はそれぞれが選んだ道を歩き始める。
とても素晴らしくて、ちょっとだけ淋しい未来。
でも新しい家族も増えるのだ。
別れても再会し、新しい絆が増えていく。
「行きましょう」
「あぁ」
淋しいのは少しだけで、きっと笑顔溢れる日々が待っている。
夢主は斎藤の腕を取るように寄り添い、二人は互いに微笑んでから歩き始めた。
茜色に染まった空、東の空には大きな月が既に姿を見せていた。
夜は月が、昼間はお日様が、二人や周りの人々を温かく見守ってくれるだろう。
明々と笑顔が絶えぬ優しい日々を。