68.たずさえる手
夢主名前設定
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昼間、抜刀斎が倒した男だ。
当の抜刀斎はどこかへ消えてしまったと言うが、新しい刀を手に山へ向かったと聞く。
今に至ってただの山籠りはあり得ない。志々雄との闘いに備えた何かがあるのだろう。
帰りを待つ間にこちらは情報を増やし、態勢を整える。
斎藤は張の前に顔を見せた。
この男、今後志々雄の手の者に殺されるか。刺客が差し向けられ、捕縛できれば情報が増える。その為に斎藤はこの署に控える事になる。
「なんや随分騒がしかったなァあんたら」
余裕を見せる囚人に斎藤の口角が歪んだ。
強がり、反抗、だが身の程を弁えて抑えた発言。
寝ていたと言う割にはしっかり覚醒して見える。
「えぇ夢見てたんやで、アジトで見たえぇ女、もうちっとで抱けるトコやったんや、現実でも夢の中でも邪魔されたら敵わんわ」
「フッ、そいつは悪かったな」
張が言う女が己の家内だなどとは疑いもしない。
卑しい顔で大袈裟な舌舐めずりをする張、それが芝居であるのは見え見えだ。
芝居だとバレて張は目を眇めて笑った。
尋問を開始して間もなく左之助と張が小競り合いを始めた。止めても無駄な気配。
小競り合いを利用して首尾よく事を進めるか、喧嘩を認めると左之助が張の手枷を破壊し、張は戦意を喪失した。
……ほぅ、思った以上に身の程を知る男だな。志々雄に忠実と言う訳でもない。使えるやもしれんな……
今後、裏取引の機会があれば部下として走らせるには良いかもしれない。
度胸と行動力、それに引き際を弁えている。
斎藤は密かに張を値踏みしていた。
仮にこの男を使うとしても夢主には近付けられんな。
左之助と睨みあう姿は滑稽な似た者同士に見える。
通り名のまま好きなのは刀だけかと思えば女も好き。男を無意識に引き寄せるアイツの前には立たせたくないものだ。
左之助も夢主に近寄らせたくなかったが接近してしまった。
挙句"ほの字"ときたもんだ、面倒臭い。今回の件が終われば暫く遠ざけたい。
夢主が納得する形で距離を取るよう仕向ける。アイツが気を病んでは意味がない。
騒がしい二人に割って入り尋問を終え、無事に情報を引き出した。
煩い左之助も戦力に入れるからには京都での身元を預からねばならない。
「飯でも食ってこい。すぐに戻れよ」
小銭を渡して追い出した。
静寂を取り戻した部屋で斎藤は窓を開け、一人煙草を呑んだ。
晴れた夜空に美しく星が瞬いている。
「やれやれ、ようやく少し落ち着けそうだ、夢主」
際どい任務、出来ればお前を思い出さずに集中したかった。
だが幸か不幸かあの阿呆は嫌でも思い出させやがる。
「感謝すべき、か」
夜空を見ればお前を思い出せる。
月があれば尚良いのだが、ここからは見えんな。
星々の中に月を探していた。
月を見つけたら何故かお前と通じる気がする、全く馬鹿々々しい考えだが。
斎藤はフッと笑みを漏らした。
「俺も奴等と変わらん、単純な男に過ぎんな」
窓の外に吐き出す煙は夜の空気に溶けていく。
斎藤は顔を綻ばせ、暫し夜風を浴びて夢主に想いを馳せた。
当の抜刀斎はどこかへ消えてしまったと言うが、新しい刀を手に山へ向かったと聞く。
今に至ってただの山籠りはあり得ない。志々雄との闘いに備えた何かがあるのだろう。
帰りを待つ間にこちらは情報を増やし、態勢を整える。
斎藤は張の前に顔を見せた。
この男、今後志々雄の手の者に殺されるか。刺客が差し向けられ、捕縛できれば情報が増える。その為に斎藤はこの署に控える事になる。
「なんや随分騒がしかったなァあんたら」
余裕を見せる囚人に斎藤の口角が歪んだ。
強がり、反抗、だが身の程を弁えて抑えた発言。
寝ていたと言う割にはしっかり覚醒して見える。
「えぇ夢見てたんやで、アジトで見たえぇ女、もうちっとで抱けるトコやったんや、現実でも夢の中でも邪魔されたら敵わんわ」
「フッ、そいつは悪かったな」
張が言う女が己の家内だなどとは疑いもしない。
卑しい顔で大袈裟な舌舐めずりをする張、それが芝居であるのは見え見えだ。
芝居だとバレて張は目を眇めて笑った。
尋問を開始して間もなく左之助と張が小競り合いを始めた。止めても無駄な気配。
小競り合いを利用して首尾よく事を進めるか、喧嘩を認めると左之助が張の手枷を破壊し、張は戦意を喪失した。
……ほぅ、思った以上に身の程を知る男だな。志々雄に忠実と言う訳でもない。使えるやもしれんな……
今後、裏取引の機会があれば部下として走らせるには良いかもしれない。
度胸と行動力、それに引き際を弁えている。
斎藤は密かに張を値踏みしていた。
仮にこの男を使うとしても夢主には近付けられんな。
左之助と睨みあう姿は滑稽な似た者同士に見える。
通り名のまま好きなのは刀だけかと思えば女も好き。男を無意識に引き寄せるアイツの前には立たせたくないものだ。
左之助も夢主に近寄らせたくなかったが接近してしまった。
挙句"ほの字"ときたもんだ、面倒臭い。今回の件が終われば暫く遠ざけたい。
夢主が納得する形で距離を取るよう仕向ける。アイツが気を病んでは意味がない。
騒がしい二人に割って入り尋問を終え、無事に情報を引き出した。
煩い左之助も戦力に入れるからには京都での身元を預からねばならない。
「飯でも食ってこい。すぐに戻れよ」
小銭を渡して追い出した。
静寂を取り戻した部屋で斎藤は窓を開け、一人煙草を呑んだ。
晴れた夜空に美しく星が瞬いている。
「やれやれ、ようやく少し落ち着けそうだ、夢主」
際どい任務、出来ればお前を思い出さずに集中したかった。
だが幸か不幸かあの阿呆は嫌でも思い出させやがる。
「感謝すべき、か」
夜空を見ればお前を思い出せる。
月があれば尚良いのだが、ここからは見えんな。
星々の中に月を探していた。
月を見つけたら何故かお前と通じる気がする、全く馬鹿々々しい考えだが。
斎藤はフッと笑みを漏らした。
「俺も奴等と変わらん、単純な男に過ぎんな」
窓の外に吐き出す煙は夜の空気に溶けていく。
斎藤は顔を綻ばせ、暫し夜風を浴びて夢主に想いを馳せた。