68.たずさえる手
夢主名前設定
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夢主が東京から連れ去られた日、沖田は寺を訪ねて伝言受け取っていた。
『一さんから安全を確認できたので先に自宅へ戻り安静にしています』
先の帰宅を知った。
「僕がいない間に斎藤さんが来ていたとは」
自分の行方が掴めなかったのだから仕方ない。
まさか警視庁にいたとは夢にも思わなかっただろう。
東京の守りを固める手助けをする。不安にさせてしまうが伝えておくべきだ。
屋敷へ戻った沖田は裏の木戸をくぐり、夢主を訊ねた。
所が何度呼び掛けても応答がない。
裏の木戸は内側から閂がかかっている。
身籠って以来昼寝が増えた夢主、今も寝ているのか。
正面から訪ねようと門へ周り、嫌なものを見つけてしまった。
門が閉じ切っていない。
最悪の事態を予想し、柄にも無く手が震える。
そっと門を押すと、玄関の戸が開いたままだった。
「夢主ちゃん!!」
気分が優れず戸締りをする力も残っていなかったのか、それとも、考えたくない事態が起きたのか。
草履を履いたまま飛び込んだ沖田は、夢主の名を連呼しながら家中を探し回った。
「夢主ちゃん、夢主ちゃん!!」
いない。
「ちきしょう!」
沖田は焦る気持ちを落ち着かせようと大きく首を振った。
赤べこや診療所へ行っただけかもしれないじゃないか。慌てて扉を閉め忘れ、門を開けたまま……。
「そんなはずがない、落ち着け!考えろ、よく見るんだ……」
脱げかけた草履を履き直し心を落ち着けると、とても静かな空間が広がった。
誰の気配も感じない。
座敷にある時計はぜんまいが切れて止まっている。夢主が帰ったならば一番にお気に入りの時計のぜんまいを巻いただろう。
庭にも異変は見つからない。
門を出た沖田は慎重に地面の足跡を探った。
自らのものより小さい跡が残っている。夢主の足跡に違いない。確かにここまでは帰っている。
「いや、待て。夢主ちゃんだけじゃない……もう一人!」
草鞋でも下駄でもない、靴の跡がある。大きさは夢主と同じくらいか。
「子供か……女の人」
門を閉じて足跡を辿った沖田は通りで二つの足跡を見失った。
人が行き交い判別が付かなくなっている。
この先は分からない。それなのに嫌な予感がする。
不自然な土の盛り上がり。
「馬車の跡!」
藤田家から通りへ出てすぐの場所に馬車の轍。
ここへ止まっていて、ここから走り出した。
「馬車で連れ去られた、まさか」
宗次郎がやって来たのか。しかし斎藤から情報を得て戻ったはず。
何故だ、分からない。
「そうだ!川路さんだ!」
護衛をつけると言ったではないか!
護衛は何をしていた!
そもそも連れ去ったのは警視庁の者かもしれない。以前、密偵仲間が夢主を連れ去ったではないか。
沖田は先刻出たばかりの警視庁へ駆け戻って行った。
『一さんから安全を確認できたので先に自宅へ戻り安静にしています』
先の帰宅を知った。
「僕がいない間に斎藤さんが来ていたとは」
自分の行方が掴めなかったのだから仕方ない。
まさか警視庁にいたとは夢にも思わなかっただろう。
東京の守りを固める手助けをする。不安にさせてしまうが伝えておくべきだ。
屋敷へ戻った沖田は裏の木戸をくぐり、夢主を訊ねた。
所が何度呼び掛けても応答がない。
裏の木戸は内側から閂がかかっている。
身籠って以来昼寝が増えた夢主、今も寝ているのか。
正面から訪ねようと門へ周り、嫌なものを見つけてしまった。
門が閉じ切っていない。
最悪の事態を予想し、柄にも無く手が震える。
そっと門を押すと、玄関の戸が開いたままだった。
「夢主ちゃん!!」
気分が優れず戸締りをする力も残っていなかったのか、それとも、考えたくない事態が起きたのか。
草履を履いたまま飛び込んだ沖田は、夢主の名を連呼しながら家中を探し回った。
「夢主ちゃん、夢主ちゃん!!」
いない。
「ちきしょう!」
沖田は焦る気持ちを落ち着かせようと大きく首を振った。
赤べこや診療所へ行っただけかもしれないじゃないか。慌てて扉を閉め忘れ、門を開けたまま……。
「そんなはずがない、落ち着け!考えろ、よく見るんだ……」
脱げかけた草履を履き直し心を落ち着けると、とても静かな空間が広がった。
誰の気配も感じない。
座敷にある時計はぜんまいが切れて止まっている。夢主が帰ったならば一番にお気に入りの時計のぜんまいを巻いただろう。
庭にも異変は見つからない。
門を出た沖田は慎重に地面の足跡を探った。
自らのものより小さい跡が残っている。夢主の足跡に違いない。確かにここまでは帰っている。
「いや、待て。夢主ちゃんだけじゃない……もう一人!」
草鞋でも下駄でもない、靴の跡がある。大きさは夢主と同じくらいか。
「子供か……女の人」
門を閉じて足跡を辿った沖田は通りで二つの足跡を見失った。
人が行き交い判別が付かなくなっている。
この先は分からない。それなのに嫌な予感がする。
不自然な土の盛り上がり。
「馬車の跡!」
藤田家から通りへ出てすぐの場所に馬車の轍。
ここへ止まっていて、ここから走り出した。
「馬車で連れ去られた、まさか」
宗次郎がやって来たのか。しかし斎藤から情報を得て戻ったはず。
何故だ、分からない。
「そうだ!川路さんだ!」
護衛をつけると言ったではないか!
護衛は何をしていた!
そもそも連れ去ったのは警視庁の者かもしれない。以前、密偵仲間が夢主を連れ去ったではないか。
沖田は先刻出たばかりの警視庁へ駆け戻って行った。