68.たずさえる手
夢主名前設定
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「夢主、何故こんな所に」
「方治はん、ワイが連れて来たんや。でも何であんな場所におったんや」
「あの、厠の場所を聞いてなくて……それでどうしようかと……」
「旭の奴め、しっかり案内せんか」
客人を任せた旭が中途半端に放り出したなと、方治が奥歯を噛みしめた。
すかさず案内役を買って出たのは由美、他意を含んだ瞳で夢主を見ている。
「だったらあたしが案内するわ、夢主さんとやら」
「オイ、大丈夫か」
「大丈夫よ志々雄様、あたしと一緒にいて手を出そうなんて馬鹿はココにはいないでしょ」
「それもそうだな。だが由美、お前自身が手ぇ出すんじゃねぇぞ。後でしっかり説明してやるよ」
やきもちを見透かされた由美が照れ臭そうにする脇で、張が冷や汗を拭っている。
それに気付いた方治は大体の予想は付くと溜め息を吐いた。
「どうした張、顔が青いぞ」
「いやぁあっ、何でもあらへんで!それより話の続きや!」
手を出そうとしたのは客人と知らんかったからや!
焦る張が話を戻すと志々雄と方治は抜刀斎の動向の話に戻り、逆刃刀真打の存在が張に伝わった。
由美は話が長くなりそうな志々雄に汗を流して寝屋で待つと言い残し、夢主を連れて場を離れた。
二人きり。
由美は今にも懐刀で襲い掛かかりそうな目で夢主を見ている。
「ちょっとアンタ!」
「は、はいっ」
由美は気が立っていた。仲間を迎えると聞いていたが女だとは。
しかも以前から志々雄様を知っている。自分の知らない志々雄真実を知る女。
平然としてはいられなかった。
「アンタ志々雄様の何なのよ、志々雄様が」
「大丈夫です、志々雄様が愛しているのは由美さんだけ、私はただの……きっと興味があるだけです、ちょっとした知識に……興味が向いているだけで」
言いながら夢主はふらりと体を揺らし、壁にもたれ掛かってしまった。
知識?興味?何の事と眉根を寄せるが由美は様子がおかしい夢主を案じて立ち止まった。
「ちょっと顔が青いわよ」
「すみません。本当に厠……行きたいです……」
「ちょっ、もうすぐよ我慢なさい!」
慌てて案内された厠で夢主は吐いた。
妊娠して以来初めての事だ。
長旅に加え、このアジトで緊張を与えられ続け体が耐えられなくなってしまった。
由美は嫉妬を忘れて優しく背中を摩り始めた。廓で妹分達の面倒を見ていた癖が抜け切らない。
「どうしたのよ、アンタまさか病気なの」
「違います、病気では……ただ」
えずいた衝動で涙が滲む。
その潤んだ視界にある由美の優しい顔。夢主は信じて覚悟を決めた。
「どこかで、落ち着いて話をしたいです」
「……分かったわ。貴女の部屋に戻りましょう」
どんな話が待つのか、不安はあるが由美は自分自身に確かな自信を持っている。
女として、志々雄を傍で支える一番の存在として、何より力を与える糧として。
夢主の部屋に戻って語られた話に、流石の由美も言葉を失った。
志々雄との出会いは幕末、見知らぬ男達に襲われている所を助けられた時。
ただの人助けであるはずが無く、慕う者達の真の姿を見せる為に人斬りの場に連れて行かれた事。
その者達が志々雄の宿敵であること、また抜刀斎の宿敵であった事。
夢主は包み隠さず打ち明けた。
「方治はん、ワイが連れて来たんや。でも何であんな場所におったんや」
「あの、厠の場所を聞いてなくて……それでどうしようかと……」
「旭の奴め、しっかり案内せんか」
客人を任せた旭が中途半端に放り出したなと、方治が奥歯を噛みしめた。
すかさず案内役を買って出たのは由美、他意を含んだ瞳で夢主を見ている。
「だったらあたしが案内するわ、夢主さんとやら」
「オイ、大丈夫か」
「大丈夫よ志々雄様、あたしと一緒にいて手を出そうなんて馬鹿はココにはいないでしょ」
「それもそうだな。だが由美、お前自身が手ぇ出すんじゃねぇぞ。後でしっかり説明してやるよ」
やきもちを見透かされた由美が照れ臭そうにする脇で、張が冷や汗を拭っている。
それに気付いた方治は大体の予想は付くと溜め息を吐いた。
「どうした張、顔が青いぞ」
「いやぁあっ、何でもあらへんで!それより話の続きや!」
手を出そうとしたのは客人と知らんかったからや!
焦る張が話を戻すと志々雄と方治は抜刀斎の動向の話に戻り、逆刃刀真打の存在が張に伝わった。
由美は話が長くなりそうな志々雄に汗を流して寝屋で待つと言い残し、夢主を連れて場を離れた。
二人きり。
由美は今にも懐刀で襲い掛かかりそうな目で夢主を見ている。
「ちょっとアンタ!」
「は、はいっ」
由美は気が立っていた。仲間を迎えると聞いていたが女だとは。
しかも以前から志々雄様を知っている。自分の知らない志々雄真実を知る女。
平然としてはいられなかった。
「アンタ志々雄様の何なのよ、志々雄様が」
「大丈夫です、志々雄様が愛しているのは由美さんだけ、私はただの……きっと興味があるだけです、ちょっとした知識に……興味が向いているだけで」
言いながら夢主はふらりと体を揺らし、壁にもたれ掛かってしまった。
知識?興味?何の事と眉根を寄せるが由美は様子がおかしい夢主を案じて立ち止まった。
「ちょっと顔が青いわよ」
「すみません。本当に厠……行きたいです……」
「ちょっ、もうすぐよ我慢なさい!」
慌てて案内された厠で夢主は吐いた。
妊娠して以来初めての事だ。
長旅に加え、このアジトで緊張を与えられ続け体が耐えられなくなってしまった。
由美は嫉妬を忘れて優しく背中を摩り始めた。廓で妹分達の面倒を見ていた癖が抜け切らない。
「どうしたのよ、アンタまさか病気なの」
「違います、病気では……ただ」
えずいた衝動で涙が滲む。
その潤んだ視界にある由美の優しい顔。夢主は信じて覚悟を決めた。
「どこかで、落ち着いて話をしたいです」
「……分かったわ。貴女の部屋に戻りましょう」
どんな話が待つのか、不安はあるが由美は自分自身に確かな自信を持っている。
女として、志々雄を傍で支える一番の存在として、何より力を与える糧として。
夢主の部屋に戻って語られた話に、流石の由美も言葉を失った。
志々雄との出会いは幕末、見知らぬ男達に襲われている所を助けられた時。
ただの人助けであるはずが無く、慕う者達の真の姿を見せる為に人斬りの場に連れて行かれた事。
その者達が志々雄の宿敵であること、また抜刀斎の宿敵であった事。
夢主は包み隠さず打ち明けた。