6.祝言の時
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
部屋の隅にはこれから呑もうと用意された酒瓶が置かれていた。
斎藤はそれらを手に部屋の入り口に近い座布団に腰を下ろした。
「実はな、夢主」
「はい」
「明治に入り酒を控えているんだ」
「えっ、じゃあ……本当に……」
記憶にある「明治に入ってから酒は控えている」との言葉が現実であると知り、夢主は驚きからまじまじと斎藤の顔を眺めた。
「フッ、だがまぁ今日くらいは呑んでもいいか」
「大丈夫なんですか、その……」
「人を斬ったりか、しないさ。さっきも容保様からの酒を喉に通している」
「あっ……だから手合わせが本気になっちゃったんじゃあ……」
「フン、それに沖田君が戻れば心配ない。さっきの道場での手合わせを見れば分かるはずだ。残念ながら彼の腕は鈍っていないようだ」
「ふふっ、本当は一さんも嬉しいのでしょう、総司さんが前と変わらない……、強くなった一さんと同じように、もっと強くなっていたのが」
「フン……そうかもしれんな。今日はどちらにしろ気分が良い。明治になり不味い酒を呑んだ時とは状況が違う。久しぶりに酔ってやるさ」
「わかりました。では私も……酔ってしまいますよ」
「阿呆ぅ、お前は酔ったら寝ちまうんだから駄目だろう。呑み方を教わったんだろう、俺達に上手く付き合ってみろ」
「はっ……はい!わかりました。そうですよね……でも一緒に楽しめるんですね、私……それだけでとても嬉しいです」
「フン。おい、櫛を貸せ」
「ぁ……はい」
心地よい庭からの風を受けながら、斎藤は渡された櫛を手に、夢主の頭に触れた。
結いが解けて浮いている髪を整えようというのだ。
白無垢姿で現れた時には気が付かなかったが、初めから斎藤が買い与えた櫛を身に付けていた。それを知った斎藤は少なからず喜びを感じた。
「おかしなものだ」
「何がですか……」
「いや、何の気なしに京で買った櫛がこんな所まで……そう思っただけさ」
櫛は苦死と言われ縁起が悪い……。夢主が京で櫛を手にした時、贈り物としては如何なものかと考えもした。
だがそんな事はどうでも良かった。ただ身動きの取れない毎日の中で見せた、心からの花笑み。櫛を手にした夢主が幸せに笑っている、それだけで充分だった。
「一さん……?」
「すまん、ちょっと考え事だ」
手が止まった夫から考え事と言われた夢主は、髪に触れられながら首を傾げた。
「お仕事のことが気にかかるのですか、もし大事な事件を抱えているなら……」
「フッ、違うんだ。悪かったな心配させて。考え事じゃ無いな、思い出していたんだよ。この櫛を……見つけた時のお前の姿をな」
「私を……」
恥ずかし嬉しと頬を染めて振り返る夢主に斎藤は正直に頷いた。
「そうだ」
「そう……ですか……」
「フフン、随分と懐かしいな」
小さく頷き返し、再び前を向いて斎藤に任せて髪を梳いてもらった。
「あの時、本当に嬉しかったんです。ありがとうございました……何も言わずに買ってくれるなんてかっこよ過ぎましたよ」
「フン、あの場では至極当然の振る舞いだろう」
「そうでしょうか……私の気持ちに気付いてくれたんだって嬉しかったんです。それに細工がとても綺麗で……今でも手に取ると眺めちゃいます。満月が……綺麗ですよね」
「あぁ、そうだな。桜の細工も見事だが」
「ふふっ……」
「なんだ」
「いぇ、なんでもありません」
ふふっ……。夢主は小さく肩を揺らしながら頭に触れる斎藤の指先を感じていた。
……金の月は斎藤さん……教えてあげたいけどやっぱり内緒……ふふっ……
ひとりクスクスと笑う夢主だが、斎藤が銀の桜を夢主のようだと例えている事に気付いていなかった。
「一さんのその紋付袴……容保様が用意してくださったんですよね。とってもお似合いです。最近は制服でお仕事行かれるし、家では着流し……袴姿の一さん、とっても久しぶりです」
「かもしれんな。お前のその姿は……いつの日かを思い起こさせるな」
斎藤はそれらを手に部屋の入り口に近い座布団に腰を下ろした。
「実はな、夢主」
「はい」
「明治に入り酒を控えているんだ」
「えっ、じゃあ……本当に……」
記憶にある「明治に入ってから酒は控えている」との言葉が現実であると知り、夢主は驚きからまじまじと斎藤の顔を眺めた。
「フッ、だがまぁ今日くらいは呑んでもいいか」
「大丈夫なんですか、その……」
「人を斬ったりか、しないさ。さっきも容保様からの酒を喉に通している」
「あっ……だから手合わせが本気になっちゃったんじゃあ……」
「フン、それに沖田君が戻れば心配ない。さっきの道場での手合わせを見れば分かるはずだ。残念ながら彼の腕は鈍っていないようだ」
「ふふっ、本当は一さんも嬉しいのでしょう、総司さんが前と変わらない……、強くなった一さんと同じように、もっと強くなっていたのが」
「フン……そうかもしれんな。今日はどちらにしろ気分が良い。明治になり不味い酒を呑んだ時とは状況が違う。久しぶりに酔ってやるさ」
「わかりました。では私も……酔ってしまいますよ」
「阿呆ぅ、お前は酔ったら寝ちまうんだから駄目だろう。呑み方を教わったんだろう、俺達に上手く付き合ってみろ」
「はっ……はい!わかりました。そうですよね……でも一緒に楽しめるんですね、私……それだけでとても嬉しいです」
「フン。おい、櫛を貸せ」
「ぁ……はい」
心地よい庭からの風を受けながら、斎藤は渡された櫛を手に、夢主の頭に触れた。
結いが解けて浮いている髪を整えようというのだ。
白無垢姿で現れた時には気が付かなかったが、初めから斎藤が買い与えた櫛を身に付けていた。それを知った斎藤は少なからず喜びを感じた。
「おかしなものだ」
「何がですか……」
「いや、何の気なしに京で買った櫛がこんな所まで……そう思っただけさ」
櫛は苦死と言われ縁起が悪い……。夢主が京で櫛を手にした時、贈り物としては如何なものかと考えもした。
だがそんな事はどうでも良かった。ただ身動きの取れない毎日の中で見せた、心からの花笑み。櫛を手にした夢主が幸せに笑っている、それだけで充分だった。
「一さん……?」
「すまん、ちょっと考え事だ」
手が止まった夫から考え事と言われた夢主は、髪に触れられながら首を傾げた。
「お仕事のことが気にかかるのですか、もし大事な事件を抱えているなら……」
「フッ、違うんだ。悪かったな心配させて。考え事じゃ無いな、思い出していたんだよ。この櫛を……見つけた時のお前の姿をな」
「私を……」
恥ずかし嬉しと頬を染めて振り返る夢主に斎藤は正直に頷いた。
「そうだ」
「そう……ですか……」
「フフン、随分と懐かしいな」
小さく頷き返し、再び前を向いて斎藤に任せて髪を梳いてもらった。
「あの時、本当に嬉しかったんです。ありがとうございました……何も言わずに買ってくれるなんてかっこよ過ぎましたよ」
「フン、あの場では至極当然の振る舞いだろう」
「そうでしょうか……私の気持ちに気付いてくれたんだって嬉しかったんです。それに細工がとても綺麗で……今でも手に取ると眺めちゃいます。満月が……綺麗ですよね」
「あぁ、そうだな。桜の細工も見事だが」
「ふふっ……」
「なんだ」
「いぇ、なんでもありません」
ふふっ……。夢主は小さく肩を揺らしながら頭に触れる斎藤の指先を感じていた。
……金の月は斎藤さん……教えてあげたいけどやっぱり内緒……ふふっ……
ひとりクスクスと笑う夢主だが、斎藤が銀の桜を夢主のようだと例えている事に気付いていなかった。
「一さんのその紋付袴……容保様が用意してくださったんですよね。とってもお似合いです。最近は制服でお仕事行かれるし、家では着流し……袴姿の一さん、とっても久しぶりです」
「かもしれんな。お前のその姿は……いつの日かを思い起こさせるな」