6.祝言の時
夢主名前設定
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嬉しそうにちらりと沖田を見て容保は続けた。
「それに、お主も自分の身を何とかするのだぞ」
「えっ、僕ですかっ。僕は構いませんよ……」
「ははっ、まぁ深入りはせぬが、良い相手はおらぬのか。お主も望むよう、幸せに生きるが良い。困り事があればいつでも訪ねて参れ。門徒の件、頼んだぞ」
「容保様には敵いませんね。承知致しました。ただし僕は新選組の沖田総司としてではなく、会津縁の者として教えます。立派な武人と誇れるよう、しかと剣術を指南致してみせます」
「うむ」
「では僕はこれで。失礼致します」
役目を終えた沖田は、容保のことだから言い訳には困らないだろうと踵を返し、急いで自らの屋敷を目指した。
俄かにざわつき始めていた屋敷に戻った容保は、何食わぬ顔で家人達の前に姿を見せた。
心配のあまり声を荒げ何処で何をしていたのかと問いただす家人に、穏やかな笑顔で「ただの散歩だ」と本当の事情は伏せた。
頼もしい男達がすぐ傍で今も力強く生きている。それを確認出来たこの日は、容保にとってなんとも嬉しい一日だった。
「明治の世も捨てたものではないかも知れぬ……」
未だ蒼い顔を見せる家人達の中で容保はひとりにこやかに笑っていた。
一方、道場では沖田と容保が出て行ってすぐに夢主が斎藤に駆け寄っていた。
「一さん、お怪我は……」
「やれやれ、つい熱くなっちまったな。ただの打撲だ、もう痛みは引いたさ」
打ち抜こまれた腹に手を添えていたと気付いた斎藤はニッと笑い、心配そうに覗く夢主の首筋に手を移した。
「もぅ……気が気じゃありませんでした」
「そうか、すまんな。だが久しぶりにいい気分だ」
そう言うと手を離し、己のでこに手を添えた。
まるで自らに反省を促すような仕種だ。
「そうですか……実は私も凄く熱くなっちゃいました。一さんに勝って欲しいけど総司さんにも負けて欲しくないし、お二人とも凄かったです。こんな立会いを見るのは久しぶりです。でもやっぱり心配ですから……程々にしてくださいね」
「あぁ、気を付けるさ。沖田君とここまでやり合ったのは藤堂君に邪魔されて以来か」
「はぃ……」
藤堂さん……。
夢主の笑顔が切なく霞むと、結っていた髪がはらりと肩に落ちた。
「お前、髪が」
「あっ……」
斎藤の手が伸び、解けた夢主の髪をなぞり毛先まで落ちていった。
「鬢油は付けなかったのか」
「はい、すぐに下ろせるようにと。重たい頭は嫌ですから」
「ははっ、お前らしい。白無垢も色打ちかけも良く似合っているぞ……まだ明るいのが口惜しいくらいだ」
「一さんたら……」
「ほらほら、兄さんが戻るんじゃから、それこそ程々にしておくんじゃぞ!」
「あっ、大家さん!すみません、お恥ずかしい……」
存在を忘れられた大家の婆だが豪快に笑って腰を上げた。
「あたしは充分に楽しませてもらったよ!興奮したらちょいとくだびれてしまってね、家に戻って休ませて貰うよ。また手が必要になったら呼んでおくれ」
「でしたら奥の部屋で休まれても……」
「いいんじゃいいんじゃ、野暮なことはせんよ、気の置けない者同士で飲み明かすがいいじゃろう」
そう言うと大家の婆は腰を擦りながら道場から出て行ってしまった。
最後まで満足そうに笑っていた。
「どうしよう……」
「すぐに沖田君が戻るだろう。それから三人で宴の続きだ。もともとそのつもりでいたんだろう、俺はそうだ」
「はい」
話しながら二人は座敷へ戻り、腰を下ろした。
開け放たれた障子からは爽やかな風が吹き込んでくる。
「それに、お主も自分の身を何とかするのだぞ」
「えっ、僕ですかっ。僕は構いませんよ……」
「ははっ、まぁ深入りはせぬが、良い相手はおらぬのか。お主も望むよう、幸せに生きるが良い。困り事があればいつでも訪ねて参れ。門徒の件、頼んだぞ」
「容保様には敵いませんね。承知致しました。ただし僕は新選組の沖田総司としてではなく、会津縁の者として教えます。立派な武人と誇れるよう、しかと剣術を指南致してみせます」
「うむ」
「では僕はこれで。失礼致します」
役目を終えた沖田は、容保のことだから言い訳には困らないだろうと踵を返し、急いで自らの屋敷を目指した。
俄かにざわつき始めていた屋敷に戻った容保は、何食わぬ顔で家人達の前に姿を見せた。
心配のあまり声を荒げ何処で何をしていたのかと問いただす家人に、穏やかな笑顔で「ただの散歩だ」と本当の事情は伏せた。
頼もしい男達がすぐ傍で今も力強く生きている。それを確認出来たこの日は、容保にとってなんとも嬉しい一日だった。
「明治の世も捨てたものではないかも知れぬ……」
未だ蒼い顔を見せる家人達の中で容保はひとりにこやかに笑っていた。
一方、道場では沖田と容保が出て行ってすぐに夢主が斎藤に駆け寄っていた。
「一さん、お怪我は……」
「やれやれ、つい熱くなっちまったな。ただの打撲だ、もう痛みは引いたさ」
打ち抜こまれた腹に手を添えていたと気付いた斎藤はニッと笑い、心配そうに覗く夢主の首筋に手を移した。
「もぅ……気が気じゃありませんでした」
「そうか、すまんな。だが久しぶりにいい気分だ」
そう言うと手を離し、己のでこに手を添えた。
まるで自らに反省を促すような仕種だ。
「そうですか……実は私も凄く熱くなっちゃいました。一さんに勝って欲しいけど総司さんにも負けて欲しくないし、お二人とも凄かったです。こんな立会いを見るのは久しぶりです。でもやっぱり心配ですから……程々にしてくださいね」
「あぁ、気を付けるさ。沖田君とここまでやり合ったのは藤堂君に邪魔されて以来か」
「はぃ……」
藤堂さん……。
夢主の笑顔が切なく霞むと、結っていた髪がはらりと肩に落ちた。
「お前、髪が」
「あっ……」
斎藤の手が伸び、解けた夢主の髪をなぞり毛先まで落ちていった。
「鬢油は付けなかったのか」
「はい、すぐに下ろせるようにと。重たい頭は嫌ですから」
「ははっ、お前らしい。白無垢も色打ちかけも良く似合っているぞ……まだ明るいのが口惜しいくらいだ」
「一さんたら……」
「ほらほら、兄さんが戻るんじゃから、それこそ程々にしておくんじゃぞ!」
「あっ、大家さん!すみません、お恥ずかしい……」
存在を忘れられた大家の婆だが豪快に笑って腰を上げた。
「あたしは充分に楽しませてもらったよ!興奮したらちょいとくだびれてしまってね、家に戻って休ませて貰うよ。また手が必要になったら呼んでおくれ」
「でしたら奥の部屋で休まれても……」
「いいんじゃいいんじゃ、野暮なことはせんよ、気の置けない者同士で飲み明かすがいいじゃろう」
そう言うと大家の婆は腰を擦りながら道場から出て行ってしまった。
最後まで満足そうに笑っていた。
「どうしよう……」
「すぐに沖田君が戻るだろう。それから三人で宴の続きだ。もともとそのつもりでいたんだろう、俺はそうだ」
「はい」
話しながら二人は座敷へ戻り、腰を下ろした。
開け放たれた障子からは爽やかな風が吹き込んでくる。