61.馬鹿な人
夢主名前設定
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「一さん、私……」
「間違っても神谷道場には行くな、暫く行くなよ。今回ばかりはお前とて……お前を巻き込みたくない」
暗い廊下を確かめながら追いついた夢主の言葉を遮って斎藤は釘を刺した。
廊下を歩く間に留めたのか全ての釦が掛けられている。
堅苦しい制服を着込んだ斎藤が夢主を急に引き寄せ啄みだけの口吸いをした。
傷付いた舌を絡めぬ、ひたすら甘い口づけ。
夢主はそれを知って素直に唇を預けていた。
拒まれたものを取り戻すよう口づけは繰り返され、離れない。
やがて後ろ首に回された斎藤の手が解かれ、指先が夢主の頬を擽る。
だが慈しむような指先はすぐに強引に変わった。
顎に指を掛けると力尽くで持ち上げ顔色を見た。
拍子に「んっ」と声が漏れ、夢主の柔らかい唇に大きな指が乗せられた。口答えせず従えと言葉を封じるような仕草。
斎藤の気持ちはすっかり切り替わった。
潔く任務に集中する姿が頼もしくもあり、寂しくもある。
「今回ばかりは邪魔されたくない。誰にも、お前にもだ」
目の前の顔は強い意志に満ちている。
そうだ、内務卿や警視総監を相手にしても怯まない人が一番の望みを曲げるはずがない。
「お気をつけて……」
「今日はもう血を見ないさ」
今夜はこれ以上刀を振るうつもりはない、俺の行動は予測済みだろ。
斎藤はニッと毒々しく笑んで腰の革帯に刀を差し帽子を身に付けた。
「じゃあな」と軽く言い残し、出て行ってしまった。
薬屋の姿で浴びた左之助の血の臭いはもうしなかった。
神谷道場では皆が左之助を案じ、剣心は斎藤の影に思い悩んでいる。
駆けつけて力になりたいが今は動くなと言う斎藤の戒めは正しい。
では斎藤自身はどうだ。
暗い玄関から戻った夢主は雨戸を全て閉め切った。戸がいやに重く感じる。
……一さん、熱くなってる……左之助さんに、剣心……うぅん、抜刀斎の存在にすっかり熱くなってる……
「本当に馬鹿なんだから……」
行灯の頼りない灯りが心と呼応するように揺れていた。
「間違っても神谷道場には行くな、暫く行くなよ。今回ばかりはお前とて……お前を巻き込みたくない」
暗い廊下を確かめながら追いついた夢主の言葉を遮って斎藤は釘を刺した。
廊下を歩く間に留めたのか全ての釦が掛けられている。
堅苦しい制服を着込んだ斎藤が夢主を急に引き寄せ啄みだけの口吸いをした。
傷付いた舌を絡めぬ、ひたすら甘い口づけ。
夢主はそれを知って素直に唇を預けていた。
拒まれたものを取り戻すよう口づけは繰り返され、離れない。
やがて後ろ首に回された斎藤の手が解かれ、指先が夢主の頬を擽る。
だが慈しむような指先はすぐに強引に変わった。
顎に指を掛けると力尽くで持ち上げ顔色を見た。
拍子に「んっ」と声が漏れ、夢主の柔らかい唇に大きな指が乗せられた。口答えせず従えと言葉を封じるような仕草。
斎藤の気持ちはすっかり切り替わった。
潔く任務に集中する姿が頼もしくもあり、寂しくもある。
「今回ばかりは邪魔されたくない。誰にも、お前にもだ」
目の前の顔は強い意志に満ちている。
そうだ、内務卿や警視総監を相手にしても怯まない人が一番の望みを曲げるはずがない。
「お気をつけて……」
「今日はもう血を見ないさ」
今夜はこれ以上刀を振るうつもりはない、俺の行動は予測済みだろ。
斎藤はニッと毒々しく笑んで腰の革帯に刀を差し帽子を身に付けた。
「じゃあな」と軽く言い残し、出て行ってしまった。
薬屋の姿で浴びた左之助の血の臭いはもうしなかった。
神谷道場では皆が左之助を案じ、剣心は斎藤の影に思い悩んでいる。
駆けつけて力になりたいが今は動くなと言う斎藤の戒めは正しい。
では斎藤自身はどうだ。
暗い玄関から戻った夢主は雨戸を全て閉め切った。戸がいやに重く感じる。
……一さん、熱くなってる……左之助さんに、剣心……うぅん、抜刀斎の存在にすっかり熱くなってる……
「本当に馬鹿なんだから……」
行灯の頼りない灯りが心と呼応するように揺れていた。