61.馬鹿な人
夢主名前設定
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「これ……やだっ、私ですか!」
「相楽左之助か。奴はしげしげと眺めていたな」
「そんな……恥かしい、こんな絵……あれ、この絵って月岡津南さんの。ほら落款が」
「なるほど巷で有名な絵師か、見事な訳だ。喧嘩屋と繋がりがあったとはな」
「幕末、幼かった頃に一緒に過ごしていたんですよ。左之助さんと月岡さん」
「赤報隊」
河原で喧嘩屋と抜刀斎がやりあっている時に野郎が叫んでいた。
元赤報隊、厳密に言えば元準隊士の相楽左之助。隊長から苗字を取っている辺り思い入れは深いらしい。
面白い話だ。
以前、赤報隊に在籍した元御陵衛士と夢主も巻き込むいざこざがあった。
また赤報隊が絡んで来るとは。幕末のしがらみは複雑らしい。
「神谷道場であった宴会、そこで月岡さんがみんなの似顔絵を描いたんですよ。だからきっと私の分も。先に帰っちゃったから……」
「ほう、宴会ねぇ」
沖田から話を聞いた際には飲み込んだ苛立ち。
斎藤は藤田五郎の笑顔を向けた。嫌味がたっぷり込められている。
「呑んでませんよ、誤解しないでくださいね!何もありませんから!こっ、この絵だって月岡さんの想像ですよ、私こんな恰好していません!」
「疑っちゃいないさ」
そう、疑っちゃいない。
「一度も疑ったことはない。ただ……」
嫉妬は抱えている。訊きたいこともある。
斎藤は家に落ち着くつもりは無い。
着替えをおおよそ終え、あとは白いシャツが見えなくなるまで上着の釦を留めるだけ。
首元まできっちり締められた白い襟がこれから藤田の顔で町に出ると語っている。
「夢主」
「あっ」
顔をよく見ようと近付いたのだが、力強く華奢な手首を掴んでいた。
体勢を崩し倒れそうな夢主を支えてやるが、体が逃げ気味だ。
訝しんだ斎藤は見えている首筋に試すような口づけをした。
徐々に場所を変え、衿に手を掛け鎖骨に唇を添えようとした時、夢主の体がまたも逃げた。恥じらいとは違う躊躇いの反応。
斎藤は顔を離すと夢主の姿勢を直してやった。
「お前、抱かれるのが嫌か」
「えっ」
「どうなんだ」
「あの……」
不意を突く問いに答えが詰まる。
怖い。
医師である恵のお墨付きはあれども、身重の体で事に至るのは不安でしかない。
ただ「いいえ」と応えればいいのかもしれない。斎藤は酒席の為、間もなく家を出る。
気持ちを確かめたいだけなのかもしれない。
……でも……
迷っていると斎藤が顔を伏せるように立ち上がった。
「答えられんのか」
「ちが……」
「フッ、気にするな。そんな時もあるだろう」
「待って一さんっ」
斎藤は言いたいことを言うと速やかに玄関へ向かってしまった。
目を離す一瞬、体を無意識に庇う妻の動きが目の端に映っていた。
体の調子は戻ったと聞くが……
斎藤の頭に疑問が浮かぶ。
「相楽左之助か。奴はしげしげと眺めていたな」
「そんな……恥かしい、こんな絵……あれ、この絵って月岡津南さんの。ほら落款が」
「なるほど巷で有名な絵師か、見事な訳だ。喧嘩屋と繋がりがあったとはな」
「幕末、幼かった頃に一緒に過ごしていたんですよ。左之助さんと月岡さん」
「赤報隊」
河原で喧嘩屋と抜刀斎がやりあっている時に野郎が叫んでいた。
元赤報隊、厳密に言えば元準隊士の相楽左之助。隊長から苗字を取っている辺り思い入れは深いらしい。
面白い話だ。
以前、赤報隊に在籍した元御陵衛士と夢主も巻き込むいざこざがあった。
また赤報隊が絡んで来るとは。幕末のしがらみは複雑らしい。
「神谷道場であった宴会、そこで月岡さんがみんなの似顔絵を描いたんですよ。だからきっと私の分も。先に帰っちゃったから……」
「ほう、宴会ねぇ」
沖田から話を聞いた際には飲み込んだ苛立ち。
斎藤は藤田五郎の笑顔を向けた。嫌味がたっぷり込められている。
「呑んでませんよ、誤解しないでくださいね!何もありませんから!こっ、この絵だって月岡さんの想像ですよ、私こんな恰好していません!」
「疑っちゃいないさ」
そう、疑っちゃいない。
「一度も疑ったことはない。ただ……」
嫉妬は抱えている。訊きたいこともある。
斎藤は家に落ち着くつもりは無い。
着替えをおおよそ終え、あとは白いシャツが見えなくなるまで上着の釦を留めるだけ。
首元まできっちり締められた白い襟がこれから藤田の顔で町に出ると語っている。
「夢主」
「あっ」
顔をよく見ようと近付いたのだが、力強く華奢な手首を掴んでいた。
体勢を崩し倒れそうな夢主を支えてやるが、体が逃げ気味だ。
訝しんだ斎藤は見えている首筋に試すような口づけをした。
徐々に場所を変え、衿に手を掛け鎖骨に唇を添えようとした時、夢主の体がまたも逃げた。恥じらいとは違う躊躇いの反応。
斎藤は顔を離すと夢主の姿勢を直してやった。
「お前、抱かれるのが嫌か」
「えっ」
「どうなんだ」
「あの……」
不意を突く問いに答えが詰まる。
怖い。
医師である恵のお墨付きはあれども、身重の体で事に至るのは不安でしかない。
ただ「いいえ」と応えればいいのかもしれない。斎藤は酒席の為、間もなく家を出る。
気持ちを確かめたいだけなのかもしれない。
……でも……
迷っていると斎藤が顔を伏せるように立ち上がった。
「答えられんのか」
「ちが……」
「フッ、気にするな。そんな時もあるだろう」
「待って一さんっ」
斎藤は言いたいことを言うと速やかに玄関へ向かってしまった。
目を離す一瞬、体を無意識に庇う妻の動きが目の端に映っていた。
体の調子は戻ったと聞くが……
斎藤の頭に疑問が浮かぶ。