62.誘い (イザナイ)
夢主名前設定
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「総司さん!」
急ぎ足でやって来て泣きそうな顔を見せる夢主を沖田は冷静に迎え入れた。
とても困っているんですね、大丈夫、と言わんばかりに飛び込む体を受け止めた。
「どうしたの、浮かない顔ですね。無茶しちゃ駄目ですよ、まずは座りましょう」
「ご相談があるんです・・・私どうしたらいいのか・・・」
「んっ、斎藤さんの事ですか」
「違います・・・」
沖田はおどけた声で夢主を笑わせようとするが、くすりともせず沈んだ声は変わらなかった。
「菊一文字を持って行った子供・・・あの子、宗次郎に会ったんです」
「あの子!大丈夫ですか、怪我は!」
腹を刺した子供の名に沖田の顔も蒼くなった。
刺された場所は小さな痕が残るだけで傷みは残っていない。それなのに刀創が疼きだす。
恐ろしく動きの疾い子供だった。今はもう青年の年頃か。より疾く、剣腕も上がっているに違いない。
もう一度名前を聞くとは。
自分の与り知らぬ所で今更夢主に接触するなど、考えもしなかった。
「大丈夫です。少し話をしただけで・・・でも、京都へ来ないかと誘われました」
「京都へ?!何でまた、いけません!」
「驚きますよね、断りましたしすぐに引き下がってくれました。でも・・・今度また来るって・・・きっと五月十四日に・・・その時どうしたらいいか」
「五月十四日・・・」
「その日、大きな事件が起こるんです。犯人がその子・・・」
「何が起こるんです、止めてはならない事件ですか」
夢主は小さく頷いた。
事件を止めれば今後への影響は計り知れない。
仮に大久保卿が生き延びればどうなる。
京都での志々雄一派討伐の陣頭指揮は川路大警視のままに、斎藤は東京へ残るのだろうか。新月村へ向かうのか。作戦の結果は変わらないのか。
「止めては・・・いけないと思います」
今回手を下さなくとも志々雄達は政界に残った実力者の排除を諦めないだろう。
悪戯に歴史を捻じ曲げてはならない。
「一さんに相談したいけど、どうなっちゃうんだろう・・・」
斎藤が身を挺して守ると言ったら。宗次郎に打ち勝てるだろうか。
予め縮地を知らせ、宗次郎の精神的弱さを明かせば勝てるかもしれない。
しかし、斎藤は宗次郎を殺してしまうのでは。
未来ある若者には理解を見せる夫を知っている。それでも危険過ぎると判断すれば討てる時に討つ、断つべき時に断ってしまうだろう。
殺さなくとも、救いを与えられる程あの人は器用ではない。
・・・宗次郎を救えるのは、剣心しかいない・・・一さんは勝つことは出来ても、きっと・・・
その緋村剣心も今は盤石の備えとはいかない。
時を待たねば宗次郎は止められない。
「瀬田宗次郎が現れた事だけでも斎藤さんに伝えませんか」
「駄目です・・・駄目・・・」
「手立てはないのか。何を考えているのか、僕があの子に会ってみます。一度話を聞いてみます」
「駄目です!それこそ駄目です!」
刺される前に行われた二人の手合わせは見ていない。
沖田が勝ったと聞くが宗次郎は僅かな力しか見せていないだろう。本気の彼を止められるのか。
腹を刺された恐怖を体が覚えているかもしれない。
宗次郎を止められたとしても、刺し違えれば沖田の命が無い。
「少し一人で・・・考えてみます」
「いいえ、とりあえず僕の家へ」
「相談しておきながら我が儘なのはわかってます。でも少し・・・一人になりたいです。来週まで宗次郎は来ません・・・」
「でも力になりますよ、一緒に考えましょう」
「ありがとう総司さん・・・ごめんなさい・・・」
警察には頼れない。
斎藤に頼れば宗次郎の未来が消える。
剣心に頼るには時が早過ぎる。
これ以上沖田を巻き込めば殺されてしまうかもしれない。
かといって大人しく京へ迎えば自分とお腹の子に危険が及ぶ。
「どうすればいいの・・・」
夢主が誰もいない家で思い詰める頃、斎藤は藤田五郎の顔で神谷道場を訪れていた。
急ぎ足でやって来て泣きそうな顔を見せる夢主を沖田は冷静に迎え入れた。
とても困っているんですね、大丈夫、と言わんばかりに飛び込む体を受け止めた。
「どうしたの、浮かない顔ですね。無茶しちゃ駄目ですよ、まずは座りましょう」
「ご相談があるんです・・・私どうしたらいいのか・・・」
「んっ、斎藤さんの事ですか」
「違います・・・」
沖田はおどけた声で夢主を笑わせようとするが、くすりともせず沈んだ声は変わらなかった。
「菊一文字を持って行った子供・・・あの子、宗次郎に会ったんです」
「あの子!大丈夫ですか、怪我は!」
腹を刺した子供の名に沖田の顔も蒼くなった。
刺された場所は小さな痕が残るだけで傷みは残っていない。それなのに刀創が疼きだす。
恐ろしく動きの疾い子供だった。今はもう青年の年頃か。より疾く、剣腕も上がっているに違いない。
もう一度名前を聞くとは。
自分の与り知らぬ所で今更夢主に接触するなど、考えもしなかった。
「大丈夫です。少し話をしただけで・・・でも、京都へ来ないかと誘われました」
「京都へ?!何でまた、いけません!」
「驚きますよね、断りましたしすぐに引き下がってくれました。でも・・・今度また来るって・・・きっと五月十四日に・・・その時どうしたらいいか」
「五月十四日・・・」
「その日、大きな事件が起こるんです。犯人がその子・・・」
「何が起こるんです、止めてはならない事件ですか」
夢主は小さく頷いた。
事件を止めれば今後への影響は計り知れない。
仮に大久保卿が生き延びればどうなる。
京都での志々雄一派討伐の陣頭指揮は川路大警視のままに、斎藤は東京へ残るのだろうか。新月村へ向かうのか。作戦の結果は変わらないのか。
「止めては・・・いけないと思います」
今回手を下さなくとも志々雄達は政界に残った実力者の排除を諦めないだろう。
悪戯に歴史を捻じ曲げてはならない。
「一さんに相談したいけど、どうなっちゃうんだろう・・・」
斎藤が身を挺して守ると言ったら。宗次郎に打ち勝てるだろうか。
予め縮地を知らせ、宗次郎の精神的弱さを明かせば勝てるかもしれない。
しかし、斎藤は宗次郎を殺してしまうのでは。
未来ある若者には理解を見せる夫を知っている。それでも危険過ぎると判断すれば討てる時に討つ、断つべき時に断ってしまうだろう。
殺さなくとも、救いを与えられる程あの人は器用ではない。
・・・宗次郎を救えるのは、剣心しかいない・・・一さんは勝つことは出来ても、きっと・・・
その緋村剣心も今は盤石の備えとはいかない。
時を待たねば宗次郎は止められない。
「瀬田宗次郎が現れた事だけでも斎藤さんに伝えませんか」
「駄目です・・・駄目・・・」
「手立てはないのか。何を考えているのか、僕があの子に会ってみます。一度話を聞いてみます」
「駄目です!それこそ駄目です!」
刺される前に行われた二人の手合わせは見ていない。
沖田が勝ったと聞くが宗次郎は僅かな力しか見せていないだろう。本気の彼を止められるのか。
腹を刺された恐怖を体が覚えているかもしれない。
宗次郎を止められたとしても、刺し違えれば沖田の命が無い。
「少し一人で・・・考えてみます」
「いいえ、とりあえず僕の家へ」
「相談しておきながら我が儘なのはわかってます。でも少し・・・一人になりたいです。来週まで宗次郎は来ません・・・」
「でも力になりますよ、一緒に考えましょう」
「ありがとう総司さん・・・ごめんなさい・・・」
警察には頼れない。
斎藤に頼れば宗次郎の未来が消える。
剣心に頼るには時が早過ぎる。
これ以上沖田を巻き込めば殺されてしまうかもしれない。
かといって大人しく京へ迎えば自分とお腹の子に危険が及ぶ。
「どうすればいいの・・・」
夢主が誰もいない家で思い詰める頃、斎藤は藤田五郎の顔で神谷道場を訪れていた。