62.誘い (イザナイ)
夢主名前設定
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「はい、新しい本拠地は部屋が沢山余ってるので夢主さんを招待しようかと、ある方からのお誘いです。無理にとは言いませんけどね、どうです、楽しいですよ」
「私を、……どなたですか」
「会えばわかりますよ。そう言ってました」
自分を京都へ誘う人物。
志々雄真実……
京都で宗次郎に通じる人物は他にいない。
「なんせ貴女は予期に長けているからと」
「っ、予期……」
不安は的中した。
昔、志々雄の手から逃れる為に口にしてしまった女性の名前。出会うべき一番の女、由美の名を告げてしまった。
たったひとつの予言が志々雄を捉えているのか。
「京都に……」
行ける訳がない。
即座に断りたいが、断ったらどうなるか読めず強い態度に出られない。
万一、断ったら殺せとでも言われていたら、宗次郎は躊躇わないだろう。
「……でも、実は私、体を壊しているので長旅に耐えられなくて……」
「安心してください、歩かせたりしませんよ。陸蒸気に乗って横浜へ、そこから船で大阪へ、京都までは馬車でお送りします。僕は忙しいので同行できませんが使いを出しますので」
「忙しいのですか……」
夢主は生唾を飲み込んだ。
宗次郎を拘束する用事、大久保卿暗殺。実行役の側近は下調べをしていた。
目の前の青年が内務卿を手にかけ国を揺るがす事態を起こす。
澱みのない笑顔を前に、夢主はとても信じられなかった。
「えぇ失敗できない仕事がありましてね。どうです、京都は貴女にとっても懐かしい地なのでしょう」
夢主は志々雄の存在を確信した。
京都に縁があるのを知る者、幕末に京で出会った人間。宗次郎のそばにいるのは志々雄真実しかいない。
「僕も貴女とゆっくりお話してみたいんです。ね、賑やかですよ、面白い人ばかりで」
「でも、急には……」
行けない。
足手纏いにならぬよう控えるのがこれからの自分に課せられた使命。しかも京のアジトは焼け落ちる。
危急の際、地下迷宮を一人で逃げ出すのは不可能。ついて行けば先に見えるのは死だ。
「まぁ返事は急ぎませんよ、来週またお伺いしますから良い返事を期待していますね」
「待って宗次郎!」
来週とは、訊き返そうとした時には消えていた。
……どうしよう、また宗次郎が会いに来る……
次現れるのは暗殺を遂げた後に間違いない。
内務卿暗殺の下手人と首謀者のアジトへ向かう。無理な話だ。
「私どうしたら……」
警察へ保護を依頼する。一番全うな対応を取れば、自分も警官達も殺されてしまうだろう。
約束を反故にされた怒り。一般の警官が何人いようが宗次郎の敵ではない。
宗次郎が何かに興味を抱くことは稀だ。
その奇跡のような興味に気付かず、夢主は唯一頼れる存在を求め家路を急いだ。
「私を、……どなたですか」
「会えばわかりますよ。そう言ってました」
自分を京都へ誘う人物。
志々雄真実……
京都で宗次郎に通じる人物は他にいない。
「なんせ貴女は予期に長けているからと」
「っ、予期……」
不安は的中した。
昔、志々雄の手から逃れる為に口にしてしまった女性の名前。出会うべき一番の女、由美の名を告げてしまった。
たったひとつの予言が志々雄を捉えているのか。
「京都に……」
行ける訳がない。
即座に断りたいが、断ったらどうなるか読めず強い態度に出られない。
万一、断ったら殺せとでも言われていたら、宗次郎は躊躇わないだろう。
「……でも、実は私、体を壊しているので長旅に耐えられなくて……」
「安心してください、歩かせたりしませんよ。陸蒸気に乗って横浜へ、そこから船で大阪へ、京都までは馬車でお送りします。僕は忙しいので同行できませんが使いを出しますので」
「忙しいのですか……」
夢主は生唾を飲み込んだ。
宗次郎を拘束する用事、大久保卿暗殺。実行役の側近は下調べをしていた。
目の前の青年が内務卿を手にかけ国を揺るがす事態を起こす。
澱みのない笑顔を前に、夢主はとても信じられなかった。
「えぇ失敗できない仕事がありましてね。どうです、京都は貴女にとっても懐かしい地なのでしょう」
夢主は志々雄の存在を確信した。
京都に縁があるのを知る者、幕末に京で出会った人間。宗次郎のそばにいるのは志々雄真実しかいない。
「僕も貴女とゆっくりお話してみたいんです。ね、賑やかですよ、面白い人ばかりで」
「でも、急には……」
行けない。
足手纏いにならぬよう控えるのがこれからの自分に課せられた使命。しかも京のアジトは焼け落ちる。
危急の際、地下迷宮を一人で逃げ出すのは不可能。ついて行けば先に見えるのは死だ。
「まぁ返事は急ぎませんよ、来週またお伺いしますから良い返事を期待していますね」
「待って宗次郎!」
来週とは、訊き返そうとした時には消えていた。
……どうしよう、また宗次郎が会いに来る……
次現れるのは暗殺を遂げた後に間違いない。
内務卿暗殺の下手人と首謀者のアジトへ向かう。無理な話だ。
「私どうしたら……」
警察へ保護を依頼する。一番全うな対応を取れば、自分も警官達も殺されてしまうだろう。
約束を反故にされた怒り。一般の警官が何人いようが宗次郎の敵ではない。
宗次郎が何かに興味を抱くことは稀だ。
その奇跡のような興味に気付かず、夢主は唯一頼れる存在を求め家路を急いだ。