62.誘い (イザナイ)
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「今夜はもう動きが無い。署には戻らんよ。久しぶりだな、お前と布団に入るのは」
「はぃ、嬉しいです……一人より温かい」
「俺は温石か」
「いいえ、一さんです。ふふっ、でも温かいです」
風呂に入った直後なのか触れてみると肌はしっとりとして温かい。
一緒に眠れるのが久しぶりなら、無条件に穏やかな斎藤も久しぶりだ。
先程感じた隔たりも今は感じられない。隣で自分を見つめてくれる。棘のある視線も言葉もなく、ただ温かい。
全て順調なのだろう。それが良いか悪いか分からないが、この一時は素直に嬉しい。夢主は斎藤に寄りすがった。
「確かに、今夜は久しぶりに冷えるな」
愛らしく甘えてくる妻に斎藤も満足だ。
自ずと手を回し抱き寄せていた。
頭を抱くように撫で、心地よい感触を楽しんで髪に触れている。
やがて髪に口づけをした。夢主を慈しみながら何か想い馳せているようにも見える。
何を考えているんですか……、斎藤の胸に顔を埋めたまま、夢主は心で呟いた。
訊ねなくても答えは分かる。
目前に迫る対決とその先にある志々雄一派討伐。穏やかさとはかけ離れた目的に想い馳せている。
動乱を防ぐ為に動くのだから何も咎められない。
自身の命を危険に晒し、どれだけ血が流れるか分からない場へ向かう。斎藤が一番大切にしている信念の為に。
「一さんの念願が叶うんですね……」
「念願か、確かに待ち望んださ。お前はお見通しだな」
「そう言う訳でも……」
「お前が大人しく控えてくれて助かる」
「そうですか、喜んでいいのかな……ちょっと複雑です。だって本当は気になりますもん……」
「これからも頼むぞ、神谷道場には」
「近づきません、約束します。こればかりは……一さんの気が済むようにしてください。それがみんなの為になるんです」
「そいつはどうも」
とことん信念を貫き、想いを十分に果たせるように。
貴方の妨げになりたくはない。
夢主はもっと撫でてくださいとばかりに顔を擦り付けた。
「……本当はちょっぴり怖いんですよ、何が起きるか分からないですもん」
「まあな」と相槌のように髪への口づけが繰り返された。
「一さん心から楽しみにしてるけど大丈夫かなって……怪我しないかなって心配はもちろん、どこかへ行ってしまわないかなって……怖くて淋しいんです」
「正直だな。俺が何処へいくと言うんだ」
「わかりません、でも……どこか遠くへ行っちゃいそうで……心がですよ」
「確かに正気を失うかもしれんが」
「一さん……」
「お前が待ってくれる限り、帰る場所は見失わん」
「はぃ……」
絶対ですよ……
夢主は顔を隠したまま囁いた。
「はぃ、嬉しいです……一人より温かい」
「俺は温石か」
「いいえ、一さんです。ふふっ、でも温かいです」
風呂に入った直後なのか触れてみると肌はしっとりとして温かい。
一緒に眠れるのが久しぶりなら、無条件に穏やかな斎藤も久しぶりだ。
先程感じた隔たりも今は感じられない。隣で自分を見つめてくれる。棘のある視線も言葉もなく、ただ温かい。
全て順調なのだろう。それが良いか悪いか分からないが、この一時は素直に嬉しい。夢主は斎藤に寄りすがった。
「確かに、今夜は久しぶりに冷えるな」
愛らしく甘えてくる妻に斎藤も満足だ。
自ずと手を回し抱き寄せていた。
頭を抱くように撫で、心地よい感触を楽しんで髪に触れている。
やがて髪に口づけをした。夢主を慈しみながら何か想い馳せているようにも見える。
何を考えているんですか……、斎藤の胸に顔を埋めたまま、夢主は心で呟いた。
訊ねなくても答えは分かる。
目前に迫る対決とその先にある志々雄一派討伐。穏やかさとはかけ離れた目的に想い馳せている。
動乱を防ぐ為に動くのだから何も咎められない。
自身の命を危険に晒し、どれだけ血が流れるか分からない場へ向かう。斎藤が一番大切にしている信念の為に。
「一さんの念願が叶うんですね……」
「念願か、確かに待ち望んださ。お前はお見通しだな」
「そう言う訳でも……」
「お前が大人しく控えてくれて助かる」
「そうですか、喜んでいいのかな……ちょっと複雑です。だって本当は気になりますもん……」
「これからも頼むぞ、神谷道場には」
「近づきません、約束します。こればかりは……一さんの気が済むようにしてください。それがみんなの為になるんです」
「そいつはどうも」
とことん信念を貫き、想いを十分に果たせるように。
貴方の妨げになりたくはない。
夢主はもっと撫でてくださいとばかりに顔を擦り付けた。
「……本当はちょっぴり怖いんですよ、何が起きるか分からないですもん」
「まあな」と相槌のように髪への口づけが繰り返された。
「一さん心から楽しみにしてるけど大丈夫かなって……怪我しないかなって心配はもちろん、どこかへ行ってしまわないかなって……怖くて淋しいんです」
「正直だな。俺が何処へいくと言うんだ」
「わかりません、でも……どこか遠くへ行っちゃいそうで……心がですよ」
「確かに正気を失うかもしれんが」
「一さん……」
「お前が待ってくれる限り、帰る場所は見失わん」
「はぃ……」
絶対ですよ……
夢主は顔を隠したまま囁いた。