60.帽子支度
夢主名前設定
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「あぁぁ……嘘だぁ……嘘だよぉ蒼紫様ぁ……」
……もしかして、勘違い?一さんと蒼紫様を?……
言葉とは難しい。
似ても似つかぬ二人だが、外見を表す言葉はどちらにも通じる言葉が多い。
剣術体術に長け、人を率いることが出来るのも同じだ。幕末は幕府の力となり戊辰を乗り越えた。
一つ違うとすれば、御庭番衆は直接戦いに身を投じてはいないと思うのだが。
「あの大丈夫……ですか、名前は言えないけど貴女の探し人とは違うと思いますよ。旦那様は幕末、幕府の元で……」
「幕府の!あぁっ!!もう聞きたくないぃいいっ!」
「違うのよ、えぇっと……そう、旦那様はお喋りな方です!案外口達者でよく喋るんですよ、人を揶揄うのが大好きで私をいつも苛めるんです」
「本当っ?!」
「はい、それにちょっと厭らしいんですよ、助平……って言ったら怒られちゃうかな」
「あははっ、助平!だったら蒼紫様じゃないわ!あぁ良かったぁ驚いたじゃない!!」
「ははっ……誤解が解けました、貴女はその蒼紫様って方を探しているんですね」
「そうなの。東京に来て暫く経つのよ。もう少し探して見つからなかったら京都に戻るしかないわね」
京都。
その地の名が胸の奥に深く突き刺さる。細い針で挿されるような小さな痛みだが、ちくちく繰り返す、小さくとも鋭い痛み。
京都に帰った操を待つ運命の過酷さを思わずにいられない。乗り越えると信じていても、無ければ無いに越したことはない辛い定め。
「ねぇ元気ないけど大丈夫、やっぱり体ぶつけてお腹に来てるんじゃ……心配だよ」
「ありがとう、大丈夫なの。ただ……私、旦那様のことも含めて秘密ばっかりで、何だか皆に嘘を吐く毎日が……たまに苦しいんです」
「秘密……そんな塞いでたらお腹の赤ちゃんに響いちゃうよ。秘密なんて誰でもあるもんでしょう、私だってあるわよ!なんたって御庭番衆のくノ一なんだから。山ほど秘密抱えてるわよ!」
思わぬ告白にも操節は消えない。蒼紫の話で落ち込む姿とは正反対、活気に満ちている。
周りの者を明るくする、夢主も皆に言われた言葉だが、本当は操のような娘の為にある言葉だと思える。
「ふふっ、ありがとう。何だか元気出て来ちゃった」
「そうよそうよ、秘密は女の魅力を高めるって爺やが言ってたんだから」
「爺や?女の魅力……」
「京都の爺や!爺やは蒼紫様と違って色惚けしてるのよね。まぁ頼りにはなるけど。そう言えば名乗ってなかったわね、あたしは巻町操。貴女は」
「私は……夢主です」
「夢主さん。もし京都に来ることがあれば葵屋って料亭を訪ねてちょうだい、あたしの家なの」
「葵屋、聞いたことあります」
「本当?葵屋って言ったらちょっとした料亭だものねぇ~嬉しいなぁ、夢主さん知っててくれたんだ」
「はい、名前を聞いた事があります」
少しだけ本当の話を。夢主はにこりと首を傾げた。
葵屋を良く知っている。記憶にもあるし、若き蒼紫様や翁にも会っている。
翁になら事情を打ち明けられるかもしれない。
でも操ちゃんには……
「絶対に蒼紫様を見つけて、一緒に京都で待ってるから!」
「わかりました、必ず遊びに行きますね。蒼紫様、見つかるといいですね」
「うんっ!」
東京の町で出会ったのは何の悪戯か。
胸は傷むが操の笑顔に出会えたのは夢主には幸運だ。
……操ちゃんごめんね、ありがとう……
蒼紫の話を出来ない事情を謝り、元気付けてくれた操に心の中で礼を告げた。
京都に行けるのはいつの日か、訪れることがあれば必ず葵屋を訪れようと心に決めた。
……もしかして、勘違い?一さんと蒼紫様を?……
言葉とは難しい。
似ても似つかぬ二人だが、外見を表す言葉はどちらにも通じる言葉が多い。
剣術体術に長け、人を率いることが出来るのも同じだ。幕末は幕府の力となり戊辰を乗り越えた。
一つ違うとすれば、御庭番衆は直接戦いに身を投じてはいないと思うのだが。
「あの大丈夫……ですか、名前は言えないけど貴女の探し人とは違うと思いますよ。旦那様は幕末、幕府の元で……」
「幕府の!あぁっ!!もう聞きたくないぃいいっ!」
「違うのよ、えぇっと……そう、旦那様はお喋りな方です!案外口達者でよく喋るんですよ、人を揶揄うのが大好きで私をいつも苛めるんです」
「本当っ?!」
「はい、それにちょっと厭らしいんですよ、助平……って言ったら怒られちゃうかな」
「あははっ、助平!だったら蒼紫様じゃないわ!あぁ良かったぁ驚いたじゃない!!」
「ははっ……誤解が解けました、貴女はその蒼紫様って方を探しているんですね」
「そうなの。東京に来て暫く経つのよ。もう少し探して見つからなかったら京都に戻るしかないわね」
京都。
その地の名が胸の奥に深く突き刺さる。細い針で挿されるような小さな痛みだが、ちくちく繰り返す、小さくとも鋭い痛み。
京都に帰った操を待つ運命の過酷さを思わずにいられない。乗り越えると信じていても、無ければ無いに越したことはない辛い定め。
「ねぇ元気ないけど大丈夫、やっぱり体ぶつけてお腹に来てるんじゃ……心配だよ」
「ありがとう、大丈夫なの。ただ……私、旦那様のことも含めて秘密ばっかりで、何だか皆に嘘を吐く毎日が……たまに苦しいんです」
「秘密……そんな塞いでたらお腹の赤ちゃんに響いちゃうよ。秘密なんて誰でもあるもんでしょう、私だってあるわよ!なんたって御庭番衆のくノ一なんだから。山ほど秘密抱えてるわよ!」
思わぬ告白にも操節は消えない。蒼紫の話で落ち込む姿とは正反対、活気に満ちている。
周りの者を明るくする、夢主も皆に言われた言葉だが、本当は操のような娘の為にある言葉だと思える。
「ふふっ、ありがとう。何だか元気出て来ちゃった」
「そうよそうよ、秘密は女の魅力を高めるって爺やが言ってたんだから」
「爺や?女の魅力……」
「京都の爺や!爺やは蒼紫様と違って色惚けしてるのよね。まぁ頼りにはなるけど。そう言えば名乗ってなかったわね、あたしは巻町操。貴女は」
「私は……夢主です」
「夢主さん。もし京都に来ることがあれば葵屋って料亭を訪ねてちょうだい、あたしの家なの」
「葵屋、聞いたことあります」
「本当?葵屋って言ったらちょっとした料亭だものねぇ~嬉しいなぁ、夢主さん知っててくれたんだ」
「はい、名前を聞いた事があります」
少しだけ本当の話を。夢主はにこりと首を傾げた。
葵屋を良く知っている。記憶にもあるし、若き蒼紫様や翁にも会っている。
翁になら事情を打ち明けられるかもしれない。
でも操ちゃんには……
「絶対に蒼紫様を見つけて、一緒に京都で待ってるから!」
「わかりました、必ず遊びに行きますね。蒼紫様、見つかるといいですね」
「うんっ!」
東京の町で出会ったのは何の悪戯か。
胸は傷むが操の笑顔に出会えたのは夢主には幸運だ。
……操ちゃんごめんね、ありがとう……
蒼紫の話を出来ない事情を謝り、元気付けてくれた操に心の中で礼を告げた。
京都に行けるのはいつの日か、訪れることがあれば必ず葵屋を訪れようと心に決めた。