60.帽子支度
夢主名前設定
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歩き出した操は興味津々に夢主のお腹を見ている。
御庭番衆の中に育ち、身重の女性が珍しいのかもしれない。
「ねぇ、おなかの赤ちゃんってどんな感じなの」
「それがわからなくて。懐妊してもう三月になるんですけど、さすがにまだ。時々体の調子が悪い時はありますけど、大丈夫ですよ」
「ふぅん、そうなんだ。じゃあさ、旦那さんどんな人なの」
「えっ、そうですね……旦那様は真面目で優しくて、他の人から見たらちょっと怖いかもしれません」
「へぇ、なんかあたしが探してる人に似てるかも」
「探し人……ですか」
嬉しそうに頷く操、脳裏に蒼紫が浮かんでいるのは間違いない。
ほんのり頬を染めて微笑んだ後、追い続けても見つからない不安からか大きな溜め息が出た。
その姿に夢主の顔にも翳りが差す。
「蒼紫様、どこにいるんだろう……」
俯く操を励ましたいが、先日蒼紫に出会った自分に何が言えるのだろうか。
あの闇に飲み込まれそうな瞳を操に伝えられはしない。
夢主は慰める言葉を失った。
……私は操ちゃんにも秘密を持つんだ……ごめんね、操ちゃん……
暁の中、生首を持つ蒼紫が立っていた。
あの光景はとても話せやしない。
ましてや、御庭番衆の身の上に起きたことも、これから操に降りかかる苦しみも。
下を向く夢主の隣で操は顔を上げた。
切り替えの早さは操の長所。明るい声で自らを鼓舞した。
「ねぇ!旦那様の話、もっと聞かせてよ!どこで出会ったの?どんな人?気になるなぁ」
「えぇと……出会いは京都で」
「京都、京都にいたんだ!偶然、あたしも京都から来たのよ!あぁ~京都での出会いかぁ~!」
まさに恋する乙女、憧れの目で夢主の話に耳を傾けている。
その目の輝きに魅せられ、夢主は斎藤の話を続けた。差しさわりのないよう気を付けながら。
しかし話が進むにつれ、操の瞳の輝きが徐々に落ち着いていく。いつしか真顔で聞いていた。
「幕末の京都は混乱していたでしょう、だから東京で落ち合おうって約束して別れて、それから無事に再会を……」
「東京で……約束してたの」
「はい。戊辰戦争に身を投じた人だから本当に心配だったんですけど、無事に再会できました」
「凄い……戦ったんだ。じゃあきっと強いのね」
「そうですね、私が言うのもなんですけどそれなりには……部下の皆さんを率いる姿が素敵で」
「何だかますます似てるなぁ。ね、見た目は、どんな感じなの」
「見た目は背が高くて黒い髪が印象的で……前髪が顔にかかってて」
「えっちょっと待って、寡黙で背が高くて強くて京都で別れて東京に……なんだか嫌な予感がしてきたんだけど、まさか……その人の名前って?!誰?何て言うの!」
「名前はちょっと……その、特殊な仕事をされているので伏せているんです。……あの」
言ってしまって良いものか、新月村で出会う斎藤と操。
瞬時に判断できず、夢主は言葉を濁してしまった。
その一瞬で操が地面に突っ伏すようにしゃがみこんでしまった。
今までの元気が嘘のように弱々しい声で、今にも泣きだしそうだ。
御庭番衆の中に育ち、身重の女性が珍しいのかもしれない。
「ねぇ、おなかの赤ちゃんってどんな感じなの」
「それがわからなくて。懐妊してもう三月になるんですけど、さすがにまだ。時々体の調子が悪い時はありますけど、大丈夫ですよ」
「ふぅん、そうなんだ。じゃあさ、旦那さんどんな人なの」
「えっ、そうですね……旦那様は真面目で優しくて、他の人から見たらちょっと怖いかもしれません」
「へぇ、なんかあたしが探してる人に似てるかも」
「探し人……ですか」
嬉しそうに頷く操、脳裏に蒼紫が浮かんでいるのは間違いない。
ほんのり頬を染めて微笑んだ後、追い続けても見つからない不安からか大きな溜め息が出た。
その姿に夢主の顔にも翳りが差す。
「蒼紫様、どこにいるんだろう……」
俯く操を励ましたいが、先日蒼紫に出会った自分に何が言えるのだろうか。
あの闇に飲み込まれそうな瞳を操に伝えられはしない。
夢主は慰める言葉を失った。
……私は操ちゃんにも秘密を持つんだ……ごめんね、操ちゃん……
暁の中、生首を持つ蒼紫が立っていた。
あの光景はとても話せやしない。
ましてや、御庭番衆の身の上に起きたことも、これから操に降りかかる苦しみも。
下を向く夢主の隣で操は顔を上げた。
切り替えの早さは操の長所。明るい声で自らを鼓舞した。
「ねぇ!旦那様の話、もっと聞かせてよ!どこで出会ったの?どんな人?気になるなぁ」
「えぇと……出会いは京都で」
「京都、京都にいたんだ!偶然、あたしも京都から来たのよ!あぁ~京都での出会いかぁ~!」
まさに恋する乙女、憧れの目で夢主の話に耳を傾けている。
その目の輝きに魅せられ、夢主は斎藤の話を続けた。差しさわりのないよう気を付けながら。
しかし話が進むにつれ、操の瞳の輝きが徐々に落ち着いていく。いつしか真顔で聞いていた。
「幕末の京都は混乱していたでしょう、だから東京で落ち合おうって約束して別れて、それから無事に再会を……」
「東京で……約束してたの」
「はい。戊辰戦争に身を投じた人だから本当に心配だったんですけど、無事に再会できました」
「凄い……戦ったんだ。じゃあきっと強いのね」
「そうですね、私が言うのもなんですけどそれなりには……部下の皆さんを率いる姿が素敵で」
「何だかますます似てるなぁ。ね、見た目は、どんな感じなの」
「見た目は背が高くて黒い髪が印象的で……前髪が顔にかかってて」
「えっちょっと待って、寡黙で背が高くて強くて京都で別れて東京に……なんだか嫌な予感がしてきたんだけど、まさか……その人の名前って?!誰?何て言うの!」
「名前はちょっと……その、特殊な仕事をされているので伏せているんです。……あの」
言ってしまって良いものか、新月村で出会う斎藤と操。
瞬時に判断できず、夢主は言葉を濁してしまった。
その一瞬で操が地面に突っ伏すようにしゃがみこんでしまった。
今までの元気が嘘のように弱々しい声で、今にも泣きだしそうだ。