60.帽子支度
夢主名前設定
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背中が見えなくなっても夢主は門を見つめていた。
ここから先、少しも踏み込めない世界が待っている。夢主が関われば斎藤には厄介でしかない。
成すべきことを成す斎藤の為、自覚しなければ。
「一さん……大変な任務の中にいるんです。さすがに心配です、いくら一さんでも……」
これからの道筋が見えている夢主を沖田は理解し見守っている。
神谷道場へ行くなと言うのだ。斎藤が奇襲をかける以外理由が無い。
政府が探していた抜刀斎、警察や政治家達の耳にも存在が届き、いよいよ待っていられなくなったのだ。
力づくでも表に出て来てもらおうと言う魂胆だ。
「緋村さんと、か。少し羨ましいですね」
「えっ」
「いいえ、何でもありません。心配要りませんよ斎藤さんは。僕も腕が落ちないように稽古に励みませんと」
「総司さん……」
一人稽古を始めた沖田の邪魔にならぬよう夢主は静かに場を去った。
考え事をするにも丁度良い。買い出しついでに散歩でもしよう。
暖かい初夏の道をとぼとぼ歩いて行った。
斎藤が神谷道場で左之助と剣心に出会えば、次は夢主が抱える秘密を打ち明ける番がやって来る。
果たして受け入れてもらえるだろうか。
笑って許してくれる者、驚きのあまり拒絶する者、何を言われても受け止めなければならない。
「はぁ……」
考えすぎては体に障る。
今は成り行きに任せようと考えを振り払った。
空は一面晴れ渡っている。こんな日に下ばかり向いていては勿体ない。
空を見上げて立ち止まった瞬間、角から一人の娘が飛び出してきた。
「うわぁああっ、ちょっと、危ないじゃないの!!」
「えっ、ご、ごめんなさい」
夢主と娘はぶつかってしまったが、娘の驚くべき身体能力で衝突は最小限の衝撃に抑えられた。
しかし飛び出してきた娘は悪びれる様子もなく、ぶつかった原因を完全に人に押しつけている。
……え、この子……
白い外套に身を包む人一倍元気な娘、外套から覗き見える顔と蒼い装束。
間違いない、巻町操だ。
喧嘩腰だった操が、夢主が無意識に腹をかばっているのを見て顔色を変えた。
食って掛かると言い返すのが人情、いつもの調子で相手が怒鳴ると身構えたが、静かに腹を摩る姿に我を取り戻したのだ。
「大丈夫?そんなに激しくぶつかったつもりないんだけど」
「大丈夫です、ちょっと驚いちゃただけで」
「でもお腹……痛いの」
「違うんですよ、赤ちゃんがいるから」
「えぇっ、身重なの!ぶつかってちゃ駄目じゃない!」
「そう……ですよね、気を付けますね」
……操ちゃんたら、自分からぶつかって来たのにな、操ちゃんらしい……ふふっ……
心配して慌てる正直な反応と、自分は悪くないと突き通す矛盾も何故か魅力に思えてしまう。
夢主はまじまじと操を見つめた。
「ねぇ本当に大丈夫?元気ないわね。医者に診てもらった方がいいんじゃない?」
「いえ、痛みもありませんし落ち着いてますので大丈夫ですよ、買い物がてら少しお散歩をしてただけなので、あの……私はこれで」
「だったらあたしも一緒に行くよ!私も町を歩きたいから調度いいわ」
「でも……」
「駄目よ、身重の体で何かあったら大変だもん!ね!」
まさかの遭遇だがこれ以上関わらない方が良い。
身を引こうとするが操も譲らない。操の頑固な性格を思い出した夢主は諦めた。
「そうですね、じゃあ……一緒にお願いします」
「そう来なくっちゃ!」
よっしゃあ!と高く跳び上がる姿はまさに忍。
夢主は生彩を放つ操に目を奪われた。
……あんなによちよち歩いてたのにこんなに、凄い……
猪突猛進、勝気で真っ直ぐな性格は思い描いた通り、京で見かけた幼い姿が嘘のような身のこなし。
様々な思いが渦巻いて夢主を笑顔にさせた。
「ふふっ」
「何なにっ、なに笑ってんのよぉ」
「ごめんなさい、貴女の元気が羨ましいなと思って。お腹の子も元気に育って欲しいなって思ったんです」
「そう、そうよね、元気が一番よね!大丈夫よ、あたしが保証してあげる!」
「ありがとう」
どこから来る自信なのか、操の振る舞いは気持ちがそのまま言葉に表れている。まさに天真爛漫だ。
ここから先、少しも踏み込めない世界が待っている。夢主が関われば斎藤には厄介でしかない。
成すべきことを成す斎藤の為、自覚しなければ。
「一さん……大変な任務の中にいるんです。さすがに心配です、いくら一さんでも……」
これからの道筋が見えている夢主を沖田は理解し見守っている。
神谷道場へ行くなと言うのだ。斎藤が奇襲をかける以外理由が無い。
政府が探していた抜刀斎、警察や政治家達の耳にも存在が届き、いよいよ待っていられなくなったのだ。
力づくでも表に出て来てもらおうと言う魂胆だ。
「緋村さんと、か。少し羨ましいですね」
「えっ」
「いいえ、何でもありません。心配要りませんよ斎藤さんは。僕も腕が落ちないように稽古に励みませんと」
「総司さん……」
一人稽古を始めた沖田の邪魔にならぬよう夢主は静かに場を去った。
考え事をするにも丁度良い。買い出しついでに散歩でもしよう。
暖かい初夏の道をとぼとぼ歩いて行った。
斎藤が神谷道場で左之助と剣心に出会えば、次は夢主が抱える秘密を打ち明ける番がやって来る。
果たして受け入れてもらえるだろうか。
笑って許してくれる者、驚きのあまり拒絶する者、何を言われても受け止めなければならない。
「はぁ……」
考えすぎては体に障る。
今は成り行きに任せようと考えを振り払った。
空は一面晴れ渡っている。こんな日に下ばかり向いていては勿体ない。
空を見上げて立ち止まった瞬間、角から一人の娘が飛び出してきた。
「うわぁああっ、ちょっと、危ないじゃないの!!」
「えっ、ご、ごめんなさい」
夢主と娘はぶつかってしまったが、娘の驚くべき身体能力で衝突は最小限の衝撃に抑えられた。
しかし飛び出してきた娘は悪びれる様子もなく、ぶつかった原因を完全に人に押しつけている。
……え、この子……
白い外套に身を包む人一倍元気な娘、外套から覗き見える顔と蒼い装束。
間違いない、巻町操だ。
喧嘩腰だった操が、夢主が無意識に腹をかばっているのを見て顔色を変えた。
食って掛かると言い返すのが人情、いつもの調子で相手が怒鳴ると身構えたが、静かに腹を摩る姿に我を取り戻したのだ。
「大丈夫?そんなに激しくぶつかったつもりないんだけど」
「大丈夫です、ちょっと驚いちゃただけで」
「でもお腹……痛いの」
「違うんですよ、赤ちゃんがいるから」
「えぇっ、身重なの!ぶつかってちゃ駄目じゃない!」
「そう……ですよね、気を付けますね」
……操ちゃんたら、自分からぶつかって来たのにな、操ちゃんらしい……ふふっ……
心配して慌てる正直な反応と、自分は悪くないと突き通す矛盾も何故か魅力に思えてしまう。
夢主はまじまじと操を見つめた。
「ねぇ本当に大丈夫?元気ないわね。医者に診てもらった方がいいんじゃない?」
「いえ、痛みもありませんし落ち着いてますので大丈夫ですよ、買い物がてら少しお散歩をしてただけなので、あの……私はこれで」
「だったらあたしも一緒に行くよ!私も町を歩きたいから調度いいわ」
「でも……」
「駄目よ、身重の体で何かあったら大変だもん!ね!」
まさかの遭遇だがこれ以上関わらない方が良い。
身を引こうとするが操も譲らない。操の頑固な性格を思い出した夢主は諦めた。
「そうですね、じゃあ……一緒にお願いします」
「そう来なくっちゃ!」
よっしゃあ!と高く跳び上がる姿はまさに忍。
夢主は生彩を放つ操に目を奪われた。
……あんなによちよち歩いてたのにこんなに、凄い……
猪突猛進、勝気で真っ直ぐな性格は思い描いた通り、京で見かけた幼い姿が嘘のような身のこなし。
様々な思いが渦巻いて夢主を笑顔にさせた。
「ふふっ」
「何なにっ、なに笑ってんのよぉ」
「ごめんなさい、貴女の元気が羨ましいなと思って。お腹の子も元気に育って欲しいなって思ったんです」
「そう、そうよね、元気が一番よね!大丈夫よ、あたしが保証してあげる!」
「ありがとう」
どこから来る自信なのか、操の振る舞いは気持ちがそのまま言葉に表れている。まさに天真爛漫だ。