60.帽子支度
夢主名前設定
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斎藤は家を出ると足早に沖田屋敷へ立ち入り、家の主を見つけて声を交わす間もなく詰め寄った。
他人が見れば何事かと立ち尽くしてしまう勢いで、大きな音を立てて縁側に手をつく。
迫られた沖田も理由が分からず、異様な迫力にたじろいだ。
「沖田君」
「はっ、はぃっ」
怒られるような事をしただろうか。
沖田が不可解な緊張から逃れようと生唾を飲み込む音が鳴った。
「夢主を頼んだぞ」
「斎藤さん、どうしたんですか急に」
「フン、神谷道場に行かせるな。行ったそうだな」
「あぁ気晴らしに宴会へ。大丈夫ですよ、ちゃんと送迎していただきましたしお酒は駄目とあちらさんにも伝えましたから。って、そう言うんじゃ……なさそうですね」
「あぁ。あそこはキナ臭い」
宴会だと、斎藤の眉がピクリと反応した。
しかし今はそこに腹を立てている暇はない。
「聞けば何度も襲撃を受けているそうですからね、斎藤さんの心配も分かりますが」
「問答無用だ、近寄らせるな。頼んだぞ」
「わ、分かりました。斎藤さんが言うのでしたら意味があるのでしょう」
「大有りだ」
うろちょろされては任務に支障が出る。
これからは今まで以上に距離を取らせる必要がある。
斎藤が沖田に念を押していると、裏口から別れたばかりの夢主が走ってきた。
「一さんっ!」
「夢主ちゃん、走っちゃ駄目ですよ!」
「これぐらい平気です、一さんに行ってらっしゃいするの忘れちゃって」
「っぷ……」
緊張感のない可愛らしい一言に沖田が吹き出した。
斎藤はやれやれと額に手を添える。いい陽気に似合いの夢主の声だが、場の緊張感を一気に失わせた。
「何だ、そんなこと」
「そんな事じゃありません、大事です!行ってらっしゃいませ、一さん」
無邪気な笑顔に斎藤からは溜め息が、沖田からは笑い声が漏れた。
「あ……呼び止めちゃってすみません、大事なお話をされてましたか……」
いつものように手短ながら穏やかな表情で「あぁ行ってくる」と返されると思ったら溜め息だった。
夢主が場違いな自分に気付くと、斎藤にもようやく緩んだ顔が戻ってきた。
「構わんさ、何故かは分からんが沖田君が過剰にお前を気に掛けているからな、無茶して困らせるなよ」
「あっ、はい!分かりました」
斎藤は沖田が過剰に夢主に反応していると気付いている。
身重の体を気遣ってまでとは気付いていないだろうが、緊張が走った。
夢主がドキドキして沖田と目を合わせると、その隙に斎藤は歩き出した。
「一さんっ、お気をつけて!」
「あぁ」
斎藤は背を向けたまま小さく手を上げた。
他人が見れば何事かと立ち尽くしてしまう勢いで、大きな音を立てて縁側に手をつく。
迫られた沖田も理由が分からず、異様な迫力にたじろいだ。
「沖田君」
「はっ、はぃっ」
怒られるような事をしただろうか。
沖田が不可解な緊張から逃れようと生唾を飲み込む音が鳴った。
「夢主を頼んだぞ」
「斎藤さん、どうしたんですか急に」
「フン、神谷道場に行かせるな。行ったそうだな」
「あぁ気晴らしに宴会へ。大丈夫ですよ、ちゃんと送迎していただきましたしお酒は駄目とあちらさんにも伝えましたから。って、そう言うんじゃ……なさそうですね」
「あぁ。あそこはキナ臭い」
宴会だと、斎藤の眉がピクリと反応した。
しかし今はそこに腹を立てている暇はない。
「聞けば何度も襲撃を受けているそうですからね、斎藤さんの心配も分かりますが」
「問答無用だ、近寄らせるな。頼んだぞ」
「わ、分かりました。斎藤さんが言うのでしたら意味があるのでしょう」
「大有りだ」
うろちょろされては任務に支障が出る。
これからは今まで以上に距離を取らせる必要がある。
斎藤が沖田に念を押していると、裏口から別れたばかりの夢主が走ってきた。
「一さんっ!」
「夢主ちゃん、走っちゃ駄目ですよ!」
「これぐらい平気です、一さんに行ってらっしゃいするの忘れちゃって」
「っぷ……」
緊張感のない可愛らしい一言に沖田が吹き出した。
斎藤はやれやれと額に手を添える。いい陽気に似合いの夢主の声だが、場の緊張感を一気に失わせた。
「何だ、そんなこと」
「そんな事じゃありません、大事です!行ってらっしゃいませ、一さん」
無邪気な笑顔に斎藤からは溜め息が、沖田からは笑い声が漏れた。
「あ……呼び止めちゃってすみません、大事なお話をされてましたか……」
いつものように手短ながら穏やかな表情で「あぁ行ってくる」と返されると思ったら溜め息だった。
夢主が場違いな自分に気付くと、斎藤にもようやく緩んだ顔が戻ってきた。
「構わんさ、何故かは分からんが沖田君が過剰にお前を気に掛けているからな、無茶して困らせるなよ」
「あっ、はい!分かりました」
斎藤は沖田が過剰に夢主に反応していると気付いている。
身重の体を気遣ってまでとは気付いていないだろうが、緊張が走った。
夢主がドキドキして沖田と目を合わせると、その隙に斎藤は歩き出した。
「一さんっ、お気をつけて!」
「あぁ」
斎藤は背を向けたまま小さく手を上げた。