6.祝言の時
夢主名前設定
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「夢主殿、案ずるでない」
「容保様……はぃ……」
「それ程に気になるか」
青ざめた顔で従順に頷く夢主に、容保が小さく口元を緩めた。
「心配です……お二人が向かい合うといつも熱くなって、本気になっちゃうんです。二人共怪我をしないか不安で……」
「これはと思う時は私が歩み出よう。心配は要らぬ」
「はぃ……」
三人の観客の前で、斎藤と沖田は久しぶりの対峙に昂ぶっている。
どこかでずっと望んでいた手合わせに顔が緩むのを抑えきれない、発する気からそんな高揚が感じられた。
「夢主殿、そなた良い男に出会うたな」
「はっ……はい!でも……申し訳ございません、その……私のせいで容保様や……会津の皆様にとって大切な人を、一さんを東京に引き戻してしまって……」
「ははははっ、そうか!そう思うておるのか!!ふっ」
容保は滅多に人には聞かせぬ大きな笑い声を響かせた。
そして笑いを堪えると夢主の顔を改めて見つめた。小声でも耳に届くように、僅かに体を近付ける。
「気にするでない、あれはそばに置いておくには怖いからの」
「えっ……」
「怖いであろう、あの男」
「ふふっ」
夢主が気を咎めないよう囁いた冗談に、青ざめていた夢主はいつしか赤らんだ顔で笑っていた。
「ふふふっ、お怖いですか」
「あぁ、怖いな」
密偵としてずば抜けた能力を持つ男、それは確かだ。
だがその男が選んだ女と幸せになるこれからを、容保も望んでいた。
容保に、会津に、日本の行く末に。全てを捧げてくれた男が自らの為に唯一選んだもの、それが夢主だ。
「あやつは敵の傍にいてこそ力を発揮する。私の傍や不毛の地に縛り付けるよりも、新しい明治政府とやらに近い立場で動くほうが余程この国の為になる」
「容保様……」
「その男をどうか支えてやって欲しい。どんな男にも心の拠り所は必要だ。斎藤の為にも、この国の為にも、幸せになれ」
「はっ……はぃっ……」
「お主らは誠に似合いの者達だな」
誰にも届かぬ声で呟いた容保は、間合いを計る二人の男に目を移した。次にその二人を見守る夢主の姿を横目に見て、一人微笑んだ。
この者なら間違いなくあの男を受け入れて支えるであろう、優しい女子だ。斎藤の選んだ道は正しかったのだ。
自らに言い聞かせた容保は、膠着する二人に目を戻した。
互いに正眼、いかにも道場での立会いと言った構えを見せている。
木刀の先に相手の顔を重ね睨み合っている。双方の間合いの一歩外、そこから最初の一手を狙っているのだ。
不安げに見つめる夢主の隣で、容保は二人にきっかけを与えるべく声を発した。
「双方、互角であるな」
その声を受け、二人は同時に飛び込んだ。
「互角であるなどと!」
「認めませんっ!!」
元主君の言葉を否定して同時に地面を蹴った二人。
甲高い音を鳴らしてぶつかった二つの木刀は、そのまま相手を押し切ろうと震えている。
「いつもと同じだな」
「っく、新郎だからって花を持たせたりはしませんよっ!」
懐かしい試衛館や新選組の道場での稽古の時、二人が対峙して力押しの勝負になると、体格に劣る沖田はいつも腕を震わせて耐えていた。
それを指摘されて頭に血が上った沖田は斎藤の力を受け流し、体をぶつけて距離を取った。
改めて木刀を構え直す。
この程度でよろめきはしないとその場に立つ斎藤は、丁寧にも沖田の構えが整うのを待った。
「沖田君、君は確かに新選組最強かもしれない。潜った修羅場も数多い。だがそれは、あくまでも動乱の京での事。夢主を託した身としては申し訳ないがな、悪いが戊辰を生き抜いた俺は……比べ物にならんぞ」
斎藤はおもむろに左一本で木刀を握り、ゆらりとその先を沖田に向けた。
「あの構え……」
見守る夢主はハッっと息を詰めた。
「潜り抜けた修羅場の数が違うんだよ」
「僕だって、あの頃のままだと思わないください!!」
「容保様……はぃ……」
「それ程に気になるか」
青ざめた顔で従順に頷く夢主に、容保が小さく口元を緩めた。
「心配です……お二人が向かい合うといつも熱くなって、本気になっちゃうんです。二人共怪我をしないか不安で……」
「これはと思う時は私が歩み出よう。心配は要らぬ」
「はぃ……」
三人の観客の前で、斎藤と沖田は久しぶりの対峙に昂ぶっている。
どこかでずっと望んでいた手合わせに顔が緩むのを抑えきれない、発する気からそんな高揚が感じられた。
「夢主殿、そなた良い男に出会うたな」
「はっ……はい!でも……申し訳ございません、その……私のせいで容保様や……会津の皆様にとって大切な人を、一さんを東京に引き戻してしまって……」
「ははははっ、そうか!そう思うておるのか!!ふっ」
容保は滅多に人には聞かせぬ大きな笑い声を響かせた。
そして笑いを堪えると夢主の顔を改めて見つめた。小声でも耳に届くように、僅かに体を近付ける。
「気にするでない、あれはそばに置いておくには怖いからの」
「えっ……」
「怖いであろう、あの男」
「ふふっ」
夢主が気を咎めないよう囁いた冗談に、青ざめていた夢主はいつしか赤らんだ顔で笑っていた。
「ふふふっ、お怖いですか」
「あぁ、怖いな」
密偵としてずば抜けた能力を持つ男、それは確かだ。
だがその男が選んだ女と幸せになるこれからを、容保も望んでいた。
容保に、会津に、日本の行く末に。全てを捧げてくれた男が自らの為に唯一選んだもの、それが夢主だ。
「あやつは敵の傍にいてこそ力を発揮する。私の傍や不毛の地に縛り付けるよりも、新しい明治政府とやらに近い立場で動くほうが余程この国の為になる」
「容保様……」
「その男をどうか支えてやって欲しい。どんな男にも心の拠り所は必要だ。斎藤の為にも、この国の為にも、幸せになれ」
「はっ……はぃっ……」
「お主らは誠に似合いの者達だな」
誰にも届かぬ声で呟いた容保は、間合いを計る二人の男に目を移した。次にその二人を見守る夢主の姿を横目に見て、一人微笑んだ。
この者なら間違いなくあの男を受け入れて支えるであろう、優しい女子だ。斎藤の選んだ道は正しかったのだ。
自らに言い聞かせた容保は、膠着する二人に目を戻した。
互いに正眼、いかにも道場での立会いと言った構えを見せている。
木刀の先に相手の顔を重ね睨み合っている。双方の間合いの一歩外、そこから最初の一手を狙っているのだ。
不安げに見つめる夢主の隣で、容保は二人にきっかけを与えるべく声を発した。
「双方、互角であるな」
その声を受け、二人は同時に飛び込んだ。
「互角であるなどと!」
「認めませんっ!!」
元主君の言葉を否定して同時に地面を蹴った二人。
甲高い音を鳴らしてぶつかった二つの木刀は、そのまま相手を押し切ろうと震えている。
「いつもと同じだな」
「っく、新郎だからって花を持たせたりはしませんよっ!」
懐かしい試衛館や新選組の道場での稽古の時、二人が対峙して力押しの勝負になると、体格に劣る沖田はいつも腕を震わせて耐えていた。
それを指摘されて頭に血が上った沖田は斎藤の力を受け流し、体をぶつけて距離を取った。
改めて木刀を構え直す。
この程度でよろめきはしないとその場に立つ斎藤は、丁寧にも沖田の構えが整うのを待った。
「沖田君、君は確かに新選組最強かもしれない。潜った修羅場も数多い。だがそれは、あくまでも動乱の京での事。夢主を託した身としては申し訳ないがな、悪いが戊辰を生き抜いた俺は……比べ物にならんぞ」
斎藤はおもむろに左一本で木刀を握り、ゆらりとその先を沖田に向けた。
「あの構え……」
見守る夢主はハッっと息を詰めた。
「潜り抜けた修羅場の数が違うんだよ」
「僕だって、あの頃のままだと思わないください!!」