59.炸裂間際

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主人公の女の子

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主人公の女の子

皆がお酒を楽しむ輪の中で一緒に食べる料理は格別の美味しさだ。
気になる臭いもなく楽しんでいた夢主だが、調子に乗って食べ過ぎたのか、危惧した事態が訪れた。胸の奥がもやもやと気持ち悪い。

「ちょっと……外の空気を吸ってきます」

「大丈夫か」

場の空気を壊してしまわないよう笑顔で立ち上がると、すかさず左之助も立ち上がった。
付き添われて静かな縁側へ腰を下ろし、夢主は外の空気を思いっきり吸い込んだ。

「よぉ、大丈夫か。なぁ……無理して来たのかよ」

道場内でほとんど会話をしていなかった二人。
左之助は一瞬目を合わせるが、気まずいのか視線を天に向けてしまった。足が落ち着かずに揺れている。

「いえ、そんな事は……久しぶりにみんなに会えるの楽しみにしてたんです」

「そうか、だったらいいけどよ」

短い会話の後の沈黙。
空は満天の星空だ。
この星空ももうすぐ爆炎で霞んでしまうのか。左之助はちらと夢主を視界に入れた。

夢主は嘔気を堪え体よ落ち着けと必死なのだが、それが分からぬ左之助は夢主の沈黙の意味を考えていた。
苦しそうな顔が心を突く。

「……この前の話」

「へっ……」

「だから、前は怒鳴って悪かったよ。待つって言っただろ、だから今は忘れてやるよ。気にしねぇからそんな顔するな」

俺の存在が夢主の顔を曇らせているのか、勘繰るが夢主にそこまでの余裕はなく、単に体の調子が悪く気分が優れないだけ。
すれ違う想いがおかしな空気を生み出した。

「あ……すみません、実はまだ体が万全じゃなくて吐き気が……」

「大丈夫かよ!やっぱお前帰れよ、見るからに辛そうだぜ」

胸の奥のものを飲み込もうと大きな呼吸を繰り返して肩が大きく揺れている。
息苦しく見えるのだ。

「でも少し休めば……」

「気使ってんだろう、いいぜ別に。俺は気にしちゃいねぇ、一緒にいたくないなら帰っていいぜ」

「そんなんじゃ、私はずっと気にしてます、左之助さんのこと……」

「俺のことは放っておいてくれ、大丈夫だ」

「でも……」

ごめんなさい……
呟いて目尻を拭う夢主の姿に、左之助が仰け反った。

「……っだあぁっ、メソメソすんな!悪かった、確かに今のは嫌味だったぜ!送ってやるから家で休め、いいな」

反射的に涙が滲むような冷たい言葉、どうして自分はひねくれているのか。
言ったそばから後悔して左之助は頭を抱えた。
素直に気遣って労わってやればいいのに、余計なことを口にしてしまう。拗ねてるのは俺じゃねぇかと自分が情けなかった。


左之助が皆に「送って行く」と告げて宴会を抜け出して、二人は無言のまま夜道を進んだ。
足取りが異様に遅いのは夢主が早く歩けないから。
左之助には弱った女の姿に見えてしまう。

……こんなに辛そうなのに俺は責める事しか出来ねぇのか、正直にお前が心配だって言ってやればいいんだぜ、相楽左之助よ……

卑下する左之助の気持ちを知らぬ夢主は、沖田の屋敷に着くと正直な気持ちで付き添ってくれた礼を告げた。
内臓を揺すられるような気持ち悪さのまま歩いたせいか、顔色が悪い。
晴れない顔を心配した左之助が今にもよろめきそうな夢主を支えた。

左之助は面倒見はいいが決して甘い男では無い。
すっきりしない想いのまま接する相手に無条件で慈悲は与えない。
それでも夢主を放っておけなかった。

両手でしっかり支えると、薄い小袖を通して夢主の熱が伝わる。
赤い鉢巻きの下で、煮え切らない瞳がハッと大きく開かれた。

「……熱っぽいぜ、お前熱あるんじゃねぇか」

「大丈夫です、微熱ですから」

「あるのかよ!もう少し自重しろよな、布団、布団敷いてやるから案内しろ!」

「でも……」

「いいから案内しろ!」

戸惑いながらも布団がある座敷へ導くと、左之助は躊躇することなく部屋に上がり布団を広げ始めた。
雑な扱いだがそれでも気を使っているのか、角を何度か引っ張って整えている。
斎藤でも沖田でもない、他の男に床を整えられるのは不思議な感覚だ。
夢主は気まずい思いで作業を見つめた。
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