58.微熱な心地
夢主名前設定
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夢主は体がすっかり落ち着くと、道場までの帰り道、仕事を終えた弥彦に付き添ってもらった。
「げげっ!夢主じゃねぇか!なんでいるんだよ!」
「何でって……一応赤べこで働く仲間ですから、ふふっ」
最初は嫌がった弥彦だが、神谷道場の皆にも既にバレているだけあり、あっさり諦めたようだ。
体は小さいが心は成人剣士と変わらない。
さり気ない気遣いを見せ、体を壊していると思い道中夢主を労わっている。
傍から見れば姉弟だろうか。さすがに親子には見えまい。
「調子が悪いんならよ、無理して来なくていいんだぜ。妙だって言ってただろ」
「へへっ、迷惑かけちゃいましたよね、ごめんなさい」
「迷惑じゃねぇけどよ……歩いた分だけ足は強くなるしな。でも何で無理したんだ」
「みんなの顔が見たくて……」
淋しそうに言葉尻を濁す夢主を弥彦は心配そうに見ている。
相手に気まずい思いをさせないよう横目でちらり、とても子供とは思えない。
「……旦那さんがなかなか帰らねぇんだってな、嫁が体壊してんのによ」
「病気じゃないんです、ちょっと疲れが溜まっちゃっただけで……旦那様には仕事を優先して欲しいんです」
「ふぅん」
会いたいに決まっている。
でも今は大切な時期、人々の穏やかな暮らしの為にも任務に専念して欲しい。
それが産まれてくる子の為にもなる。
無理して微笑む夢主が弥彦には不思議だった。
自分の周囲の大人達を思い浮かべてみる。やはり心と裏腹な言葉を口にする時がある。
「そんなもんなのか、分かんねぇな大人はよ」
本音じゃねぇんだろう、他人事ながら弥彦は大きな溜め息を吐いた。
腹に手を添える姿を横目に見て、コイツ腹でも痛いのか、そんなことを考えながら。
「今度、神谷道場に遊びに来いよ」
「でも今日みたいになっちゃうかもしれないし……」
お腹の子のことを話せないのだから、突然悪祖に襲われ吐きでもしたら必要以上に周囲を心配させてしまう。
もう少し体が落ち着いてからがいい。今後の事も考えると今すぐ行こうと思えない。
「左之助にでも迎えに来させるさ」
「左之助さんに」
「あいつなら何かあってもお前を抱えられるだろ、剣心でもいいけど薫がやきもち妬くからな」
「ふふっ、弥彦君て優しいんですね」
「馬鹿野郎、アイツがうるさいだけだよ。お前も淋しがってないで遊びに来いよな」
「うん、ありがとう」
左之助さん……
弥彦が左之助と夢主の気まずさを知る由もない。思いやりの心から彼の名を口にしたのだ。
恵を救出に向かうあの日に顔を見て以来、左之助には会っていない。
会ったならば今までと変わらない爽やかな笑顔を見せてくれるのだろうか。
井上道場の門が見えると同時に、沖田が迎えに出てくるのが見えた。
話し声を聞きつけやって来たのだ。
「おや、君が送ってくれたんですね、ありがとうございます」
「ありがとうじゃねぇよ、てめェがしっかり面倒見ろよな!」
「あぁっ、私が一人でいいって言ったから、総司さんは何も悪くなくて」
具合が悪くなったのを知らぬ沖田が首を傾げる間に慌てて庇う。
弥彦の好いところは誰にでも正直に思いを伝えられるところ。悪いところは、何でも素直に口にしてしまうところ……だろうか。
「今度からは断られてもついて来いよ!分かったな!」
「あははっ、これは参りました。しかと承りました」
「ちっ、馬鹿にしやがって。じゃあな、夢主は暫く赤べこには来なくていいからな!」
沖田のやけに丁寧な応答に舌打ちをした弥彦、夢主が頭を下げると照れ臭そうに口を尖らせて立ち去った。
元気な足音を立ててあっという間に遠ざかる。これからの成長を期待させる後ろ姿だった。
「げげっ!夢主じゃねぇか!なんでいるんだよ!」
「何でって……一応赤べこで働く仲間ですから、ふふっ」
最初は嫌がった弥彦だが、神谷道場の皆にも既にバレているだけあり、あっさり諦めたようだ。
体は小さいが心は成人剣士と変わらない。
さり気ない気遣いを見せ、体を壊していると思い道中夢主を労わっている。
傍から見れば姉弟だろうか。さすがに親子には見えまい。
「調子が悪いんならよ、無理して来なくていいんだぜ。妙だって言ってただろ」
「へへっ、迷惑かけちゃいましたよね、ごめんなさい」
「迷惑じゃねぇけどよ……歩いた分だけ足は強くなるしな。でも何で無理したんだ」
「みんなの顔が見たくて……」
淋しそうに言葉尻を濁す夢主を弥彦は心配そうに見ている。
相手に気まずい思いをさせないよう横目でちらり、とても子供とは思えない。
「……旦那さんがなかなか帰らねぇんだってな、嫁が体壊してんのによ」
「病気じゃないんです、ちょっと疲れが溜まっちゃっただけで……旦那様には仕事を優先して欲しいんです」
「ふぅん」
会いたいに決まっている。
でも今は大切な時期、人々の穏やかな暮らしの為にも任務に専念して欲しい。
それが産まれてくる子の為にもなる。
無理して微笑む夢主が弥彦には不思議だった。
自分の周囲の大人達を思い浮かべてみる。やはり心と裏腹な言葉を口にする時がある。
「そんなもんなのか、分かんねぇな大人はよ」
本音じゃねぇんだろう、他人事ながら弥彦は大きな溜め息を吐いた。
腹に手を添える姿を横目に見て、コイツ腹でも痛いのか、そんなことを考えながら。
「今度、神谷道場に遊びに来いよ」
「でも今日みたいになっちゃうかもしれないし……」
お腹の子のことを話せないのだから、突然悪祖に襲われ吐きでもしたら必要以上に周囲を心配させてしまう。
もう少し体が落ち着いてからがいい。今後の事も考えると今すぐ行こうと思えない。
「左之助にでも迎えに来させるさ」
「左之助さんに」
「あいつなら何かあってもお前を抱えられるだろ、剣心でもいいけど薫がやきもち妬くからな」
「ふふっ、弥彦君て優しいんですね」
「馬鹿野郎、アイツがうるさいだけだよ。お前も淋しがってないで遊びに来いよな」
「うん、ありがとう」
左之助さん……
弥彦が左之助と夢主の気まずさを知る由もない。思いやりの心から彼の名を口にしたのだ。
恵を救出に向かうあの日に顔を見て以来、左之助には会っていない。
会ったならば今までと変わらない爽やかな笑顔を見せてくれるのだろうか。
井上道場の門が見えると同時に、沖田が迎えに出てくるのが見えた。
話し声を聞きつけやって来たのだ。
「おや、君が送ってくれたんですね、ありがとうございます」
「ありがとうじゃねぇよ、てめェがしっかり面倒見ろよな!」
「あぁっ、私が一人でいいって言ったから、総司さんは何も悪くなくて」
具合が悪くなったのを知らぬ沖田が首を傾げる間に慌てて庇う。
弥彦の好いところは誰にでも正直に思いを伝えられるところ。悪いところは、何でも素直に口にしてしまうところ……だろうか。
「今度からは断られてもついて来いよ!分かったな!」
「あははっ、これは参りました。しかと承りました」
「ちっ、馬鹿にしやがって。じゃあな、夢主は暫く赤べこには来なくていいからな!」
沖田のやけに丁寧な応答に舌打ちをした弥彦、夢主が頭を下げると照れ臭そうに口を尖らせて立ち去った。
元気な足音を立ててあっという間に遠ざかる。これからの成長を期待させる後ろ姿だった。