57.宿すもの、宿る者
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「今朝方この屋敷を訪れた者はなかったか」
「ここに……」
本題を急ぐ斎藤から目を逸らして、今度は夢主は沖田と目を合わせた。
突然の訪問者がいた。目的は分からないが生気の無い目をして立っていた。
「来たんだな、四乃森蒼紫か」
「どうしてそれを……」
頭から斎藤の手が離れ、寂しさを感じた夢主は大きな目をしゅんと細めた。
斎藤も夢主を抱き寄せたいが沖田の手前気を使う。頭からは任務が離れない。斎藤は話を進めようとした。
「観柳邸から脱走したと報告があった。奴に何もされていないか、何か言っていたか」
「何か……蒼紫様はただ……会いに来ただけみたいでした。とても悲しそうで、辛そうで……御庭番衆の皆さんの首を持っていました」
「見たのか。ちっ、あの野郎」
「大丈夫です、知っていたので……朝日があの人の背にあってはっきり見えませんでしたし」
こいつの目に映したくないものを見せやがって……
苛立った斎藤は眉根を寄せた。
仕事を増やしたくないが奴を放置できないらしい。短く溜め息が漏れた。
「蒼紫様はきっと山に籠って修行なさるんです。緋村さんを斃す為に、幕末最強に拘っているんです、だから」
「幕末最強か」
珍しく斎藤の表情が変化に富んでいる。眉間に出来ていた深い皺がフッと消えた。
蒼紫の中で幕末最強は抜刀斎らしい。
同じ幕府方として新選組を忘れられるのはいささか残念だが、抜刀斎を獲物に捕らえた蒼紫の目は間違っていない。
斎藤自身にも抜刀斎は一番愉しい獲物だ。
「奴はお前に敵意は向けていないんだな」
「はい、大丈夫です」
最初は少し怖かったが、真実を知っていたとは言え夢主を恨んでも意味が無いと考えたのか、蒼紫は抜刀斎からの勝利だけを目的として去って行った。
もう敵意を向けられはしまい。
「ならばいい。奴の存在は後回しだな」
「えっ?」
「何でもないさ、お前はこれから出掛けるんだろう、俺ももう行くぞ」
「あっ、はい!心配してくださってありがとうございます、一さんもお気を付けて……」
斎藤は「言われずとも」そんな顔を見せ、そっと口づけをした。
沖田には背中しか見えぬよう上手く体を使う斎藤だが、そばで見守る沖田は丸分かりとばかりに苦笑いした。
「じゃあな」
斎藤はフンと鼻をならし自信溢れる背中を見せて屋敷を出て行った。
四乃森蒼紫は放っておいても抜刀斎の周りに現れるだろう。
その時に接触すれば良い、そんな事を考えながら警察署への道を急いだ。
「ここに……」
本題を急ぐ斎藤から目を逸らして、今度は夢主は沖田と目を合わせた。
突然の訪問者がいた。目的は分からないが生気の無い目をして立っていた。
「来たんだな、四乃森蒼紫か」
「どうしてそれを……」
頭から斎藤の手が離れ、寂しさを感じた夢主は大きな目をしゅんと細めた。
斎藤も夢主を抱き寄せたいが沖田の手前気を使う。頭からは任務が離れない。斎藤は話を進めようとした。
「観柳邸から脱走したと報告があった。奴に何もされていないか、何か言っていたか」
「何か……蒼紫様はただ……会いに来ただけみたいでした。とても悲しそうで、辛そうで……御庭番衆の皆さんの首を持っていました」
「見たのか。ちっ、あの野郎」
「大丈夫です、知っていたので……朝日があの人の背にあってはっきり見えませんでしたし」
こいつの目に映したくないものを見せやがって……
苛立った斎藤は眉根を寄せた。
仕事を増やしたくないが奴を放置できないらしい。短く溜め息が漏れた。
「蒼紫様はきっと山に籠って修行なさるんです。緋村さんを斃す為に、幕末最強に拘っているんです、だから」
「幕末最強か」
珍しく斎藤の表情が変化に富んでいる。眉間に出来ていた深い皺がフッと消えた。
蒼紫の中で幕末最強は抜刀斎らしい。
同じ幕府方として新選組を忘れられるのはいささか残念だが、抜刀斎を獲物に捕らえた蒼紫の目は間違っていない。
斎藤自身にも抜刀斎は一番愉しい獲物だ。
「奴はお前に敵意は向けていないんだな」
「はい、大丈夫です」
最初は少し怖かったが、真実を知っていたとは言え夢主を恨んでも意味が無いと考えたのか、蒼紫は抜刀斎からの勝利だけを目的として去って行った。
もう敵意を向けられはしまい。
「ならばいい。奴の存在は後回しだな」
「えっ?」
「何でもないさ、お前はこれから出掛けるんだろう、俺ももう行くぞ」
「あっ、はい!心配してくださってありがとうございます、一さんもお気を付けて……」
斎藤は「言われずとも」そんな顔を見せ、そっと口づけをした。
沖田には背中しか見えぬよう上手く体を使う斎藤だが、そばで見守る沖田は丸分かりとばかりに苦笑いした。
「じゃあな」
斎藤はフンと鼻をならし自信溢れる背中を見せて屋敷を出て行った。
四乃森蒼紫は放っておいても抜刀斎の周りに現れるだろう。
その時に接触すれば良い、そんな事を考えながら警察署への道を急いだ。