57.宿すもの、宿る者
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町の警察署では斎藤が浦村署長と面談していた。
夜が明けてようやく観柳邸での騒動が終息、剣心達が駆け付け邸内を抑えたと聞かされた。
ガトリング砲所持の報告には驚くしかない。
武器の入手経路は警察が捜査するが斎藤の部下も共に動くよう指示が伝えられた。
「緋村さんが仰るには御庭番衆御頭、四乃森蒼紫が配下四人の首を持って逃走した。藤田君も覚えておいてくれ」
「四乃森蒼紫」
「塀の上に立っていた、あの顔は……全てを失った男、失望の中で何をしでかすか」
「……」
「いや、すまない。藤田君はこれまで通り自分の任務に当たってくれ」
「分かりました、署長」
署長とて動乱の時代を生き抜いてきた男だ。ちょっとやそっとで動揺しまい。それだけ蒼紫の最後の姿が衝撃的だったのだろう。
恐ろしいものを見た、そんな青白い顔で署長は話を終えた。
「四乃森……蒼紫か」
京都にいた頃、何度か屯所に侵入した男だ。
何の気まぐれか夢主を幾度か守っている。
ありがたく思えども動機が見えず素直に歓迎も出来ない。
署長の話では抜刀斎と闘い、負けた。
観柳邸を出てどこへ向かったのか、力をつけて再び挑むのは当然として、どこへ。
「俺には関係ない、今はどうでもいい」
……だが、本当に関係ないのか……
署長室を出て一人になった斎藤は煙草を探りながら考えた。
「無関係とも言い切れん」
あの若御頭は夢主に執着して見えた。
いちいち藤の花を残していたのも執着故だろう。俺達への伝言だけではないはず。
署長の話から察するに奴の心は切れている。
自暴自棄になったならば、夢主を守りながら沖田一人で対応するのは厳しいかもしれない。
斎藤は煙草を取るのをやめ、自宅へ急いだ。
すっかり日は高く昇っている。
乾いた空気の中を駆け抜け、斎藤が通った道には薄っすら砂埃が舞っていた。
ここ数日、夢主は沖田の屋敷で世話になっている。
既に我が家へ戻っているか未だそのままか分からぬが、斎藤はどうせ通りすがりだと沖田屋敷内を探し回った。
「夢主、いるか」
「おや、斎藤さんじゃありませんか」
敷地に入るなり応じた屋敷の主。
気掛かりがある時、すぐに顔を出してくれるのがありがたい。斎藤は沖田を一瞥して、また辺りを見回した。
「沖田君、夢主は」
「着替えに戻っていますよ。これから一緒に出掛けるので」
「そうか」
無事なら構わん、考え過ぎだったようだ。肩の力が抜ける。
仕事を抜けてきた斎藤は妻の顔を見ず戻ろうとするが、夫の存在を感じたのか夢主が急ぎ足で戻ってきた。
姿を見るなり顔を合わせるのが捨て置いたあの夜以来だと思い出す。バツが悪いが夢主は気にそぶりもなく、顔色は回復していた。
「はっ、一さん!」
「そんなに驚くことはないだろう、具合はどうだ」
「心配してくれるんですか、う……嬉しいです」
「阿呆、当然だろう。だが元気そうだな、安心した」
斎藤は夢主の頭にそっと手を置き、視線を全身に動かし無事を確かめた。顔色も良ければ怪我をしている様子もない。
しかし目を合わせた沖田が何か言いたげだ。心配は的中だったのか。
夜が明けてようやく観柳邸での騒動が終息、剣心達が駆け付け邸内を抑えたと聞かされた。
ガトリング砲所持の報告には驚くしかない。
武器の入手経路は警察が捜査するが斎藤の部下も共に動くよう指示が伝えられた。
「緋村さんが仰るには御庭番衆御頭、四乃森蒼紫が配下四人の首を持って逃走した。藤田君も覚えておいてくれ」
「四乃森蒼紫」
「塀の上に立っていた、あの顔は……全てを失った男、失望の中で何をしでかすか」
「……」
「いや、すまない。藤田君はこれまで通り自分の任務に当たってくれ」
「分かりました、署長」
署長とて動乱の時代を生き抜いてきた男だ。ちょっとやそっとで動揺しまい。それだけ蒼紫の最後の姿が衝撃的だったのだろう。
恐ろしいものを見た、そんな青白い顔で署長は話を終えた。
「四乃森……蒼紫か」
京都にいた頃、何度か屯所に侵入した男だ。
何の気まぐれか夢主を幾度か守っている。
ありがたく思えども動機が見えず素直に歓迎も出来ない。
署長の話では抜刀斎と闘い、負けた。
観柳邸を出てどこへ向かったのか、力をつけて再び挑むのは当然として、どこへ。
「俺には関係ない、今はどうでもいい」
……だが、本当に関係ないのか……
署長室を出て一人になった斎藤は煙草を探りながら考えた。
「無関係とも言い切れん」
あの若御頭は夢主に執着して見えた。
いちいち藤の花を残していたのも執着故だろう。俺達への伝言だけではないはず。
署長の話から察するに奴の心は切れている。
自暴自棄になったならば、夢主を守りながら沖田一人で対応するのは厳しいかもしれない。
斎藤は煙草を取るのをやめ、自宅へ急いだ。
すっかり日は高く昇っている。
乾いた空気の中を駆け抜け、斎藤が通った道には薄っすら砂埃が舞っていた。
ここ数日、夢主は沖田の屋敷で世話になっている。
既に我が家へ戻っているか未だそのままか分からぬが、斎藤はどうせ通りすがりだと沖田屋敷内を探し回った。
「夢主、いるか」
「おや、斎藤さんじゃありませんか」
敷地に入るなり応じた屋敷の主。
気掛かりがある時、すぐに顔を出してくれるのがありがたい。斎藤は沖田を一瞥して、また辺りを見回した。
「沖田君、夢主は」
「着替えに戻っていますよ。これから一緒に出掛けるので」
「そうか」
無事なら構わん、考え過ぎだったようだ。肩の力が抜ける。
仕事を抜けてきた斎藤は妻の顔を見ず戻ろうとするが、夫の存在を感じたのか夢主が急ぎ足で戻ってきた。
姿を見るなり顔を合わせるのが捨て置いたあの夜以来だと思い出す。バツが悪いが夢主は気にそぶりもなく、顔色は回復していた。
「はっ、一さん!」
「そんなに驚くことはないだろう、具合はどうだ」
「心配してくれるんですか、う……嬉しいです」
「阿呆、当然だろう。だが元気そうだな、安心した」
斎藤は夢主の頭にそっと手を置き、視線を全身に動かし無事を確かめた。顔色も良ければ怪我をしている様子もない。
しかし目を合わせた沖田が何か言いたげだ。心配は的中だったのか。