54.伝言
夢主名前設定
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指先の怪我は大したことないが血が滲む。
妙に見つかった夢主は手当てを受けて赤べこをあとにした。
細い指先に目立つ包帯。
「少し大袈裟に見えちゃうな」
手を掲げてのろのろ歩く危なっかしい夢主を一人の男が受け止めた。
「危ねぇな、ちゃんと前見て歩けよ」
「左之助さん!今日は」
剣心と一緒に賭場へ行ったんじゃ……
言いかけた口が途中で止まった。
賭場、左之助が弟分として可愛がっている男達も集まる場。そのうちの一人がどうなるかを記憶していた。
「どうしたよ。怪我か……痛むのか」
「いえ、怪我は大したこと……左之助さんはどうしてここに」
「最近ちょっくら目のいい奴と知り合ってな。嬢ちゃんも知ってるんじゃねえか、剣心って赤い髪の男だ」
「知ってます……薫さんと赤べこに来てくださったことがあります」
幕末に出会いました……それも伝えた方が良いだろうか。
隠す必要はない。薫も知っているのだから。
だが話す隙無く会話は進んだ。
「だけどよ~クソ真面目なんだよな、今日も賭場誘ったのに断られちまった。頼み込んで最後に一回付き合ってくれるって話だがぁ、最後の一回だぜ、その時はたんと稼がねぇとな」
「賭場……賭け事もほどほどになさってくださいね。そういう場所って怖くないんですか、変なものを売りに来る人とか……」
「あぁっ?怖かねぇよ。ほとんど知った顔だしな、ムカツク奴もたまにはいるがそんな奴ぁぶっとばす。ほとんど身内さ」
「そう……なんですね。怖い場所じゃないんですね……」
「あぁ怖かねぇって!おぅ、今なら金持ってるぜ、奢ってやるよ」
奢ってやるよが口癖ですねと笑いたくなる。世話焼きな性格を表した言葉だ。
奢ってくれと迫る印象が強いだけに、会うたび真逆の言葉が繰り返されるのは面白かった。
「ふふっ、大丈夫です。お金は大事になさってください……って、それなら赤べこのツケを少しでも払ってくださいよ」
「んだぁ?あそこのツケはほら、なんつーか顔馴染みだしよ、顔に免じてっつーか」
「無くなりませんよ!」
「ちぇっ、ケチ臭ぇな」
「えっ」
「あぁっ!おっお前の事じゃねぇからな!妙だよ妙!稼いでんだから少しぐれぇいいじゃねぇか、な?」
「良くありません……ちゃんとしないと駄目ですよ……」
「分かった分かった、ちゃんとする!するから一杯付き合えよ!」
「左之助さん……」
夢主は呆れを通り越して尊敬の眼差しを向けた。
面倒見が良くて優しいのだろう。
お前をケチ扱いしたんじゃねぇぞと必死に弁解するのも優しさからだ。
こんな男の大切な仲間を守れるならば、一言の助言程度は許されるだろうか。
「……一杯だけですよ」
「おぅよ!」
斎藤が帰るか帰らないか分からない夜。
ほんの一杯だけと付き合い、古びた飲み処へ連れ立った。
妙に見つかった夢主は手当てを受けて赤べこをあとにした。
細い指先に目立つ包帯。
「少し大袈裟に見えちゃうな」
手を掲げてのろのろ歩く危なっかしい夢主を一人の男が受け止めた。
「危ねぇな、ちゃんと前見て歩けよ」
「左之助さん!今日は」
剣心と一緒に賭場へ行ったんじゃ……
言いかけた口が途中で止まった。
賭場、左之助が弟分として可愛がっている男達も集まる場。そのうちの一人がどうなるかを記憶していた。
「どうしたよ。怪我か……痛むのか」
「いえ、怪我は大したこと……左之助さんはどうしてここに」
「最近ちょっくら目のいい奴と知り合ってな。嬢ちゃんも知ってるんじゃねえか、剣心って赤い髪の男だ」
「知ってます……薫さんと赤べこに来てくださったことがあります」
幕末に出会いました……それも伝えた方が良いだろうか。
隠す必要はない。薫も知っているのだから。
だが話す隙無く会話は進んだ。
「だけどよ~クソ真面目なんだよな、今日も賭場誘ったのに断られちまった。頼み込んで最後に一回付き合ってくれるって話だがぁ、最後の一回だぜ、その時はたんと稼がねぇとな」
「賭場……賭け事もほどほどになさってくださいね。そういう場所って怖くないんですか、変なものを売りに来る人とか……」
「あぁっ?怖かねぇよ。ほとんど知った顔だしな、ムカツク奴もたまにはいるがそんな奴ぁぶっとばす。ほとんど身内さ」
「そう……なんですね。怖い場所じゃないんですね……」
「あぁ怖かねぇって!おぅ、今なら金持ってるぜ、奢ってやるよ」
奢ってやるよが口癖ですねと笑いたくなる。世話焼きな性格を表した言葉だ。
奢ってくれと迫る印象が強いだけに、会うたび真逆の言葉が繰り返されるのは面白かった。
「ふふっ、大丈夫です。お金は大事になさってください……って、それなら赤べこのツケを少しでも払ってくださいよ」
「んだぁ?あそこのツケはほら、なんつーか顔馴染みだしよ、顔に免じてっつーか」
「無くなりませんよ!」
「ちぇっ、ケチ臭ぇな」
「えっ」
「あぁっ!おっお前の事じゃねぇからな!妙だよ妙!稼いでんだから少しぐれぇいいじゃねぇか、な?」
「良くありません……ちゃんとしないと駄目ですよ……」
「分かった分かった、ちゃんとする!するから一杯付き合えよ!」
「左之助さん……」
夢主は呆れを通り越して尊敬の眼差しを向けた。
面倒見が良くて優しいのだろう。
お前をケチ扱いしたんじゃねぇぞと必死に弁解するのも優しさからだ。
こんな男の大切な仲間を守れるならば、一言の助言程度は許されるだろうか。
「……一杯だけですよ」
「おぅよ!」
斎藤が帰るか帰らないか分からない夜。
ほんの一杯だけと付き合い、古びた飲み処へ連れ立った。